テラーノベル
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「……みんな、だれ……?」
「おにいちゃんは?」
「俺は太智」
「……だいち……」
「……だいち、ここ……どこ……?」
その声も、幼い。
「楽屋。俺らの」
太智が優しく答えると、仁人は少し安心したように息を吐いた。
そこからは、自己紹介をしていった
「俺は舜太。お兄ちゃんやで」
「……しゅんた……」
「俺は勇斗って言うんだよぉ〜💕」
「……はぁと……」
「ぐっ、かわいっ」
「俺は柔太朗だよ」
「…じゅーたろ、げーむのひと?」
「そうだよぉ〜」
勇斗が距離を取りつつ変顔をして笑わせて、
柔太朗がゲーム機を差し出して、
舜太が床に座って目線を合わせて話しかける。
しばらくすると、仁人はみんなに慣れて、笑うようになった。
ゲームで負けて拗ねたり、勇斗に抱きついたり、舜太に褒められて照れたり。
それを少し離れたところで見ながら、太智は気づいてしまう。
「……」
自分だけ、あまり呼ばれない。
さっきまであんなに泣いて縋ってきたのに。
少し、胸がもやっとした。
その瞬間。
ゲームで負けた仁人が、突然顔を真っ赤にして叫んだ。
「もぉぉぉ!!なんでまけるとよぉ!!」
「方言出てる〜かわいい〜💕」
次の瞬間、仁人はぐずっと鼻を鳴らし、また泣きそうになって――
「だいちぃ……」
太智のところへ戻ってきた。
太智は何も言わず、そっと抱き寄せる。
「はいはい。よしよし」
数時間後。
ふっと意識が途切れるように、仁人は元の姿に戻った。
「……え?」
状況を理解する前に、四方から浴びせられる視線。
「元に戻っちゃったかぁ〜」
「よっしーおかえり」
「じんちゃん、高い高い拒否って大泣きしてたよ〜かわいかったなぁ〜」
「……は?」
幼児化した際の話を聞き終えた仁人は、耳まで真っ赤になった。
「……忘れて。全部」
仁人は顔を覆って、うなだれた。
「……ぅぅ、、今回のこと今後一生話題にするなよ!」
楽屋に、いつもの笑い声が戻る。
それが、少しだけ特別だった午後の話。
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