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私の足音で気づいたのか、あの子は「はやいね、くるの」って言った。
久しぶりに聞く声に私は泣きそうになった。だって久しぶりに、ようやく聞きたかった声があったから。
相槌だけうって私はあの子の前へ座る。座ってあの子の顔をみる。顔色は特に大丈夫そうで安心した。ただ少しだけ違和感があったのは気のせいだろうか。
数年ぶりにあうから気のせいだと思うけど、少しだけ気になった。
あの子の話を相槌打ちながら聞く。最近のこと、友人のこと、それから家族のこと。どれもこれも懐かしくて久しぶりで、高校時代に戻ってきた感覚があった。
あの子は変わらず私の目の前にいる。それだけでとても嬉しくて胸がいっぱいになる。ただ少しだけ気になることを除けば幸せだった。
数時間ぐらい経っただろうか。話してる時間が楽しくて、時間の流れが分からなかった。
たくさん話しを聞いたあとようやくあの子が落ち着いて深呼吸した。
「実は言わないといけないことがあるんだ」
少し声のトーンが落ちて緊張した声になる。どうしたんだろうか。少しだけ嫌な予感を感じた。
「俺、さ。目が見えなくなったんだよね」
カチャッ
手の力が抜けて持ってたスプーンを落とした。
どうして?だって前は目見えてたでしょなんでって声にならない言葉が口から漏れた 。他にも言いたいことがあったのに声がでない。出しても空気として出ていく。
目の前の人はへらへらと笑ってた。
「いやー、実はさ病気になっちまって。気がつけば終わりでね」
「だから連絡も取れなかったし、送ることもできなかった。けど会いたくなってさ。知人に頼んで連絡してもらったわけ」
すらすらと出てくる言葉は私の頭から抜けていった。放心状態で今落ち着いて、考えるほど今の私には出来なかった。
私が何も言えれない中、あの子は言葉を続ける。その視線の先は何もない窓。私を見てなかった。その事実だけで本当に見えないのだと感じた。