テラーノベル
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この物語は、イグルェイス文字の秘められた破滅の予言、途中で消された言葉、そして世界に影を落とす「破滅を表す塔」の謎から始まった。さらに、死神のごとき「名の亡き者」の存在、全てを無に帰すと言われる「虚空の世界」の有無、そして栄光と罪、対極の力を秘めた「伝説の剱」の対比が、世界の運命を巡る物語の奥行きを深めていった。太古の文明、古代帝国ドラグニアとムー大陸の興亡は、現在の危機の根源を示唆し、宇宙に浮かぶ「アークレイス銀河」と「ノアの方舟」の関係性は、終焉の先にわずかな希望を灯す可能性を提示してきた。これら全てが、世界の真の姿、そして避けられない破滅への道筋を暗示しているかのようだった。そして、ついに我々は世界の大特異点を観測する事に成功した。
それは、想像を絶する光景だった。宇宙の深淵にぽっかりと開いた、漆黒の裂け目。星々すら吸い込まれ、その光を歪ませるほどの圧倒的な引力を持つ、まさしく「虚空へ通じる裂け目」だ。観測機器は軒並み異常値を叩き出し、我々の存在そのものが吸い込まれそうな感覚に襲われた。
この裂け目こそが、イグルェイス文字に記された破滅の元凶であり、「破滅を表す塔」がその拡大を食い止めるための、あるいは封じ込めるための最後の砦であったことが、今やはっきりと理解できた。塔の崩壊は、この大特異点が完全にそのベールを脱ぎ捨て、世界への侵食を始めたことを意味していたのだ。
我々の観測データは、その裂け目の内部が、時間も空間も、あらゆる物理法則が意味をなさない「虚空の世界」そのものであることを示していた。そして、その裂け目の縁を、まるで世界の崩壊を見守るかのように、あの名の亡き者の影がちらついた。彼は、この大特異点から生まれた存在なのか、それとも、虚空の監視者として、世界の終わりを案内しているのか。彼の謎めいた存在は、この裂け目と密接に結びついているに違いない。
この大特異点こそが、全世界を旅する者が語った「結末は…全て闇に終わる。世界も、人物も、この物語も。」という言葉の真の意味だったのだ。虚空は、単なる終焉ではなく、存在そのものの消滅を意味する。我々が知るすべてのものが、この漆黒の裂け目へと吸い込まれていく。
しかし、この絶望的な観測の最中に、わずかながらも疑問が残る。この大特異点の向こうに、本当に何も存在しないのだろうか?あるいは、「アークレイス銀河」が示す「ノアの方舟」としての役割は、この虚空の侵食から逃れるための、あるいはこの先に新たな世界を築くための手段なのだろうか。そして、「伝説の剱」、特に「栄光の剱」が、この絶望的な状況を打ち破る、唯一の希望となり得るのだろうか?
この大特異点の観測は、世界の終焉を告げる警鐘であると同時に、残されたわずかな希望へと我々の目を向けさせる、新たな旅の始まりなのかもしれない。
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