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幸輝が居なくなってからは本当に苦しくて息ができなくなるような日々が続いた。
夜も眠れないことが多くなり精神的にも身体的にも弱っていた。
仕事でもミスが増えた。
メンバーはおれと幸輝のことを知っていたので、怒るどころか心配されることの方が多かった。
おれはそんな環境に甘えていた。
1ヶ月ほどが経った時、それは起こった。
振り入れで何度も同じミスをする俺にしびれを切らして玲は言った。
「幸輝のことで辛いのはわかるよ。
でももういい加減にしな、みんなに迷惑かけてるの気づいてるでしょ。」
「正直、いまの直弥は俺たちの足を引っ張ってるだけだよ。」
今となってはこれが玲なりの優しさなのだと気づける。
それでもあの頃のおれはそんなことを考える余裕などない。
おれは何も返すことが出来ずに逃げるようにその場をあとにした。
どれくらい経っただろうか。
色んなところをただひたすら歩いた。
スマホを見るとメンバーから心配する連絡が届いていた。
1ヶ月。
みんなからしたら “もう1ヶ月”
それでもおれからしたら “まだ1ヶ月”
あいつと過した4年はそんなちょっとじゃ過去のこととは思えなかった。
家に帰ると、玄関前に誰か座り込んでいるのが見えた。
おれの足音を聞いてか、そいつは顔を上げた。
「おかえり」
それはさっきまで一緒にいたメンバー。
「なんでこんなとこいんの。」
「ごめん急に。どうしてもなおくんが心配で。」
「なにそれ笑」
「ちょっとはなそうよ。」
「うん。なか、はいる?」
「今日ごめん。颯斗にも迷惑かけた。」
「大丈夫だよ。みんな怒ってないよ。
玲くんだって心配してた。」
「ごめん。ありがとう。」
年下に心配されて家にまで来てくれて。
情けない。こんな自分が嫌になる。
辛い。苦しい。限界だ。
そんな弱いおれは年下に助けを求めた。
「颯斗、たすけて。」