その後私は軽音部に入部した。
このまま何事もなく練習を、続けていたはずなのだが。
「ギターとベース、タイミングが違うぞ」
この通り、演奏はあれから上手くいっていない。
「今度はドラム、今のところ、一つ抜けてるぞ」うーん。
この歌は難しいのかな?
「ボーカル!」
「…はい!」
「歌詞間違えてるぞ、それは二番だ」
「は、はい…」
こんな感じで、練習中は何度もやり直し。
最後に通し練習をする時は止められないけど、やはりミスが目立つ。
「はぁ~、今日も練習終わった〜!」
「そうね!」
入部してから三週間。
私は後輩のトリッシュちゃんと仲良くなった。
今日は初めて一緒に帰る。
「そういえば前アリアンナ先生がさ~」
いつも通りの世間話。
「ふふ。なにその話。」
「あ、私こっちだからまたね!」
「また明日。」
…一人になると、いつも考えてしまう。
どうすれば…好かれるんだろう…
「…はぁ。」
電話で日本の友達に相談してみようかな。
「ただいま〜」
自分の部屋に駆け込む。
早速電話をかける。
「もしもし〜。徐倫?」
「久しぶり~!ヨハネ。」
空条徐倫。彼女は中学校から仲良くなった。
「あのさ〜。ちょっと相談があって」
「え〜なになに〜?」
快く乗ってくれたようだ。
「私、好きな人出来たんだよね。」
「あのヨハネに好きな人が!?えっ、なんて言う人!?写真送ってよ!?」
まあそれもそのはず、私は中学の頃は勉強と部活で忙しく、恋愛なんてどうでもいいと思っていた。
それにかなり私は男っぽい性格をしていた。
告られてももちろん、OKしたことなんてない。
「あ〜わかったわかった。今写真送るから」
「やった!」
写真アプリで前みんなで撮った写真を開く。
そして、加工画面で顔を囲む。
「この人。ナランチャって言うんだ。」
「へぇ〜、ナランチャ。変な服だけど可愛いじゃない」
「でしょ〜。でもさぁ、どうしたら私のこと恋愛的に好きになってもらえるかな〜?」
「え〜、私も別に恋愛経験豊富なわけでもなんでもないもん。」
「徐倫は彼氏いるでしょ〜?」
「まあ、そうだけど。」
「なんかあったりしない?好かれる方法」
「うーん?ちょっとスキンシップ増やしてみるとか?距離感狭めれば意識させられるかもよ?」
「す、すきん…しっぷ…が、頑張るね!」
「よ〜し、その意気だ!」
スキンシップ。
かなりレベル高いが、やってみる価値はある。
次の日。
「おはよー、ナランチャ!」
手始めに肩をトンと叩いてみる。
「おはよう!」
「…あっ!理科のプリント忘れた…」
「ぷくく、相変わらずヨハネはドジだな〜」
「うるさい。そういうナランチャはこの前の小テストどうだったの〜?」
これで赤点だったら…!
「へん!85点だぜェ〜?」
「…えぇ!?あのナランチャが!?」
「そうだぜ〜?すごいだろ」
「前回のテスト21点だったの、忘れてないよ〜?カンニングしたでしょ〜」
「…え、いや、し、してないし」
「え?」
冗談で言ったつもりだったのに。
明らかに嘘っぽい。
「いや…その…先生には秘密にしといて…」
「いいよ〜」
「よ、よかった…」
「ジュース一本で」
「はァ!?仕方ねぇなァ…金欠なんだよ俺…」
へへん。
カンニングする方が悪いもんね!
放課後。
「私メロンソーダでー」
「190円かよー、もっと安いの頼めよ。」
ナランチャがお金を入れて、メロンソーダのボタンを押す。
「あ〜美味しい〜!!ふふ、やっぱ人のお金で飲むジュースが一番美味しいわ〜」
「くっ…なんでこんなの言っちゃったんだよ…」
「一口いる?」
「…えっ」
口を手で抑える。
私…何言ってるんだろう。
ナランチャの顔が赤く染まる。
それって、関節…キスじゃん。
「う、うん!ありがたく頂くよ!」
もっと顔が赤くなる。
かなり強がっている言い方だ。
「あ、ちょっと!飲み過ぎ!」
「いいじゃん〜俺の金だし」
「はぁ〜?先生に言っちゃうよ〜!?」
「や、やめろやめろ!!」
「ぷぷ、じゃあ私、こっちだから。」
「またな!」
いつもの場所で別れた。
今日は。
…好きな人と、関節キスをしてしまった。
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