テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
わあ、第102話、めちゃくちゃハラハラしました…!ジェニが一人でエレベーターに閉じ込められて、しかも水が浸入してくるって、本当に怖い状況ですね。冷静さを保とうとしながらもパニックになりそうになる心理描写がすごくリアルで、読んでいて息が詰まりそうでした。最後に宗一郎さんに繋がったところで希望が見えたのに、充電切れでまた絶望…続きが気になりすぎます!星キラリさんの描く閉塞感と緊張感、とても引き込まれました。
latte
732
芙月みひろ
494
#溺愛
桜咲かな
592
#長編
結愛
319
定時の勤め人は、ほぼこの豪雨の中、帰宅しているため、ビルの中はシン・・・と静まり返り、少し薄気味悪かった
非常口はしっかり施錠され、外は降りしきる大雨の音と、時々雷がゴロゴロと、不吉な音を立てている、ジェニはこれでやっと家に帰れると思うとホッとした
スマホの降水情報を見て、浸水迂回路をチェックする、スマホのバッテリーが4%を切っていた
ジェニは車の中で充電すればいいかと思った、片方のパンプスの中の親指が痛むし、午後になってずっと座っていて、浮腫んだウエストに、スーツのタイトスカートのホックが食い込む
早くスーツを脱いで快適な部屋着でくつろぎたかった、そしておなかもペコペコだ、家の中の冷蔵庫の中身を思い出しながらジェニは、エレベーターに乗り込み、B1のボタンを押した、軋んだ音を響かせながら扉が閉まり、スゥッとエレベーターが下降する
―ガクンッッ―
「キャァッ!!」
エレベータの表示が1階を過ぎた時、突然ガクンッッと揺れて止まった、『バチバチッバチッブシュッッーー』と蛍光灯の部分から火花が散り、ジェニは悲鳴を上げた
キャーッ!「何っ何なのっ」
そしてエレベータの電気が消え、当たりは真っ暗闇になった・・・証明も・・・油圧式の機械が鳴る音も、何もかもが止まった
「えーーー!うそっっ」
ジェニは真っ暗闇に包まれ・・・ひたすら悲鳴を上げた、信じられない事に真っ暗闇の中、どこか近くで蛇口を捻ったようにザァーザァー水が流れている音がする
ハァハァ・・・「おっお落ち着いて・・・慌てたって何も良い事ないんだからっ、そ、そうよ、非常ボタンッ」
こういう所には必ず緊急連絡の電話か呼び出しボタンがあるはずだ、パニックを起こさないように、懸命に自分に言い聞かせ、カバンを肩にかけ、真っ暗な中、壁づたいに蜘蛛のように体を摺り寄せ、ボタンパネルまで手探りできた
ハァ・・・ハァ・・・「こここを押せば・・・すぐに誰か来てくれるんだからっっ」
あえて大声で言って、自分を勇気づけた
真っ暗なので何とか手探りで壁に埋まった非常ボタンをぐっと押した・・・だが何も起こらない
「ちょっとっ!!どういうこと??」
ジェニは何回も非常ボタンを押し、そしてもう全部のボタンを押した、何も反応がないボタンパネルを最後にはグーで殴った、閉所恐怖症ではないが、トラウマには十分なりそうだ
心臓のドキドキが耳まで聞こえる、さらに深呼吸をして、カバンの中を漁り、スマートフォンを取り出した、充電が3%だがすぐに画面の光でエレベーターを見回した、しかしその時、冷たい何かがつま先に当たった・・・それはすぐにジェニのパンプスに侵入してきた
ジェニは足もとをスマホで照らして、再び悲鳴をあげた、エレベータの中に水が浸入してきてた・・・水はあっという間にジェニのパンプスを呑みこみ、今ではくるぶしまで水に漬かっていた
スマホの明かりを懐中電灯のように周りを照らして良く見てみる・・・どこから水が浸入してきているかハッキリわかった、泥で濁った水が、扉の閉じられた隅間から噴き出ている
「ああっっ!!どうしようっ!!」
次にエレベーターパネルを照らし、何度も赤い非常ボタンを押す、その横のスピーカーから誰かの声が聞こえることを願って・・・何度も、何度も・・・
「誰かッーーー誰かッーーー応答してっ!!」
そして天井も照らしてみる、映画などではエレベーターの脱出口は上にある、ジェニは天井の白いパネルのようなものに向かってジャンプしてみた、でも到底届かないし、あたりを見渡してみても、踏み台になるようなものは何もない
こうしている間にも、ドアの隙間からドンドン水が浸入してきている、ジェニは考えた、ここに来てもう4時間以上経っている
―まさかその間に地下駐車場が全部浸水したってこと??―
最後に見た駐車場は、そりゃ・・・1センチぐらいは水たまりが出来ていたけど・・・そして私が無理やり地下ボタンを押したから、このエレベーターが水に浮ているってこと??
エレベータが水に浸かってしまったら電気経路はすべてショートするだろう・・・そして私がここにいるってことは斎藤さんしか知らない
ガタガタ・・・「さ・・・斎藤さんに・・・でんわ・・・でんわ」
すぐ上の階で、さっきまで楽しく話していた斎藤が、まだオフィスにいてくれますようにと会社の番号をリダイヤルでかける、心臓が不安な早鐘を打つ、代表番号が呼び出し音を三回鳴らす、四回目で会社の留守番電話サービスに切り替わった
希望が絶望に代わった・・・斎藤さんは帰ってしまった
「さきほどお伺いしていた、メビウス広告マーケティング部の神崎ジェニです! い・・今地下駐車場へ続くエレベーターの中に 一人で閉じ込められています! み・・水が中に入ってきているの! お願いだから私がここにいることを、早く誰かに知らせてくださいっっ!」
ジェニはそう留守番電話に向かって叫ぶ、しかしこの電話を誰かが、聞く頃には・・・自分は水死体になっているかもしれない、彼女の名刺をもらうか、携帯番号を聞いておけばよかった・・・なんたる失態
「け・・・警備会社って・・・何番? 」
パネルに表示してある電話番号を震える指で打ち込む、水はもうふくらはぎまで来ている、浸水する速度が速い、無駄な抵抗だと知りながら、なんとか片足ずつ立ってみる、警備会社はずっと呼び出し音が鳴っている、留守番サービスにも切り替わらない 、らちがあかないのでもう一度和菓子会社に電話して、留守番サービスにこのエレベーターに閉じ込められている旨を伝える
―お願い・・・誰かがこの メッセージを聞いてくれますように―
スマホの充電が切れる警告の赤いアイコンが灯っている・・・こうなったら今のうちに打てる手は打たないと! lineメッセージアプリを開くとエレベーターの中は圏外だった、チッとジェニは舌打ちし、混乱で視界がぼやけ二重になる中、水の音だけがあたりに響いている
「ひ・・・ひゃくとうばん?119?どっち?」
どちらともかけて見た
「・・・現在通話が集中して 非常にかかりにくくなっています・・・ 暫くしてから・・・ 」
「暫くってどのくらいよ!!」
この大雨なので、あちこちに災害が起きている、どこも出払っているのだろうか?ジェニは通話を切り、着信履歴を見た、誰か選んでいる暇がなかった、直近で自分がかけた一番上に表示されている番号にリダイアルする
プツッ・・・ 「浜田です・・・ 」
繋がった!! プププッと充電がいよいよ無くなっていることを知らせるビーブ音が鳴る、水が膝まで上がってくると、これ以上冷静なフリを続けることなどできなかった
「そ・・・・宗一郎さん!ジェニです!! 助けて!!助けてー!! 」
「どうした?」
やっと一人の世界から外界に繋がれた安心感から舌がもつれる
「い・・・ 今ビルのエレベーターの中にいるんだけど と・・閉じ込められたのっっ! 水が中に入って来てるのよ! さっきまで爪先が濡れる程度だったのだけど、今は膝まで水がきてて!私は一人で・・・ ドアは開かなくて、くっ暗くて・・・ 誰も来てくれなくてっっ―― 」
支離滅裂なジェニの説明に彼はたたみかけるように言った
「どこにいるんだ?」
「八幡中町のグランドセンチュリービルよ、新規のお客さんなの!宗一郎さん!!聞いてる?」
そこでまたジェニのスマホの充電が切れるビーブ音が鳴った、ジェニが悲鳴を上げた
ポンッ「もう一度住所を言え」
宗一郎のスマホの画面録音の合図の通知が鳴った
「八幡中町二丁目のグランドセンチュリービルのエレベータ―の中よ!!閉じ込められたの!地下駐車場が浸水してて、エレベータ―に水が入って来てて―― 」
ブツッと言う音と共に、あたりが真っ暗になった、ジェニはスマホをパシパシ叩いた
「キャァーーー!!! うそでしょ!!宗一郎さん!宗一郎さーーーーん! 」
沈黙と水が流れる音だけが広がる、充電が切れて死んだスマートフォンを握りしめて、ジェニはヒステリーを起こして叫んだ