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もし君が…だと知っても(完結済)

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もし君が…だと知っても(完結済)

10 - もう会えない光。真っ暗闇の中。

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2023年08月01日

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もう会えない光。真っ暗闇の中。

「癒良‼‼」

「西空さん‼下がってください‼」

過呼吸で苦しそうな癒良に手を伸ばす。

届きそうで届かなかった。

そのまま病室の外に出された。


10分が経ってもざわざわと騒がしい。

病室の前に沢山の人が集まってきた。

ざわざわとしていたはずの病室の中の音がピタリと止んだ。

思わず立ってドアのすぐ前に移動した。

ゆっくりとドアが開いてお医者さんが顔を覗かせた。

お医者さんは小さく横に首を振った。

息を呑んだ。


「癒良ぁ!!!」

癒良の手はひんやりとしていた。

返事はしてくれない。

「うぅうぅぅ…癒良ぁあぁ…‼」


その後のことは覚えてない。

気がついたら家にいて、ベッドの上で座っていた。

目が乾燥している気がした。

泣いてたんだ。

俺はベッドから立ち上がった。

そして机の上に置いてある写真立てを手に取った。

幼稚園の頃の写真。

このときはまだ好奇心旺盛だった。

俺と癒良は浴衣で線香花火をしている。


──コンコン

「虹ちゃん…」

母親が心配そうに部屋に入ってきた。

「夜ご飯、なに食べたい…?」

そんな親切も放り投げて「いらない」と言った。

「でも……お昼も食べてないじゃない…」

それでも「いらない」と言った。

食欲は全くない。

お腹も空いていない。


癒良がいない世界は、全くの別物だった。

真っ暗で光もない。


いや、癒良が光だったんだ。

俺に居場所をくれた光は癒良だったんだ。

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