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「癒良‼‼」
「西空さん‼下がってください‼」
過呼吸で苦しそうな癒良に手を伸ばす。
届きそうで届かなかった。
そのまま病室の外に出された。
10分が経ってもざわざわと騒がしい。
病室の前に沢山の人が集まってきた。
ざわざわとしていたはずの病室の中の音がピタリと止んだ。
思わず立ってドアのすぐ前に移動した。
ゆっくりとドアが開いてお医者さんが顔を覗かせた。
お医者さんは小さく横に首を振った。
息を呑んだ。
「癒良ぁ!!!」
癒良の手はひんやりとしていた。
返事はしてくれない。
「うぅうぅぅ…癒良ぁあぁ…‼」
その後のことは覚えてない。
気がついたら家にいて、ベッドの上で座っていた。
目が乾燥している気がした。
泣いてたんだ。
俺はベッドから立ち上がった。
そして机の上に置いてある写真立てを手に取った。
幼稚園の頃の写真。
このときはまだ好奇心旺盛だった。
俺と癒良は浴衣で線香花火をしている。
──コンコン
「虹ちゃん…」
母親が心配そうに部屋に入ってきた。
「夜ご飯、なに食べたい…?」
そんな親切も放り投げて「いらない」と言った。
「でも……お昼も食べてないじゃない…」
それでも「いらない」と言った。
食欲は全くない。
お腹も空いていない。
癒良がいない世界は、全くの別物だった。
真っ暗で光もない。
いや、癒良が光だったんだ。
俺に居場所をくれた光は癒良だったんだ。