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「…さて、と…いい加減依頼書見ますかねぇ…。あーやだやだ。」
そう愚痴を零しながら私は、机に置かれた裏返しになっている1枚の紙をめくる。
「…ん?これは…。」
途端、思わず口からそう声が零れた。
紙に書いてあったのは、ただ『護衛』の二文字。場所も無ければ、依頼主も書いていない。
(護衛なんて、うちやってたっけな〜…。)
机に置いてあった紙…もとい依頼書はたったこれだけだった。
厄介そうな依頼主ながらも、今回は特に難しい事は言われていない。そう思いながらも、今回はこれだけだという事に安堵していた私は、確かにここに居た。
嫌な予感はすると言われたらするけれど…まぁ私なら大丈夫だよね。
と、そう自負していた私が、そこに。
◇ ◆ ◇
「ただいま帰りました〜…って、桜閣様が仕事をちゃんとやってる!?」
「ちょっと、流石にそれは酷くない?」
「事実ですから。」
「えぇ…(引)」
そうだ、と机に置いた依頼書をめくって桔音に見せると、桔音はその紙をじーっと見つめる。
「ありゃー…これは…中々に癖のある内容ですね。」
「癖がある、で済まない気がするのは私だけだろうか…。」
「私はもう慣れたので…多分桜閣様が正常ですよ。」
「なるほど〜。…って待って内容確認して無かったの!?」
びっくりしてそう声を上げると、不意をつかれたかの様に不思議そうな声を上げる。
「え?あぁ、たまにはこういうのも良いかと思いまして。」
その言葉の裏に焦りが隠れているのを、私は確かに見逃さなかった。
けれど、何か事情があるのだろうと何も言わない事にした。