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🍠×🐱
長編
成立済み
メリバ寄り
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🐱side
ケビンくんは俺より少し歩くのが遅い。
理由は知らないし聞いたこともない。
ただそういう癖だ。
kvn「ゆうま、先行っていいよ」
後ろから聞こえる声はいつもと同じ柔らかさで。
俺は立ち止まって振り返る。
ym「だめ。ケビンくんすぐ置いてかれるじゃん」
そう言うとケビンくんは少しだけ困った顔をして笑う。
kvn「……うん。じゃあ一緒に行こ」
その笑い方が好きで。
言い方も、間も、全部が好きで。
俺たちは恋人だった。
メンバーに公にしてるわけじゃないけど 隠すほど慎重でもなくて。
夜に二人で帰るし、オフが被れば自然に一緒にいる。
特別なことなんて何もない関係。
でも、それが一番幸せだった。
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その日も練習終わりだった。
スタジオの床に座り込んで、
ケビンくんが俺のペットボトルを勝手に飲む。
ym「ちょ、それ俺の」
kvn「同じの買ったでしょ」
ym「でも俺の」
kvn「……味、同じだよ?」
そう言いながら悪びれもせずに返してくる。
口つけたまま。
ym「ほんとにさ、そういうとこ」
kvn「なに?」
ym「好き」
俺がそう言うとケビンくんは一瞬だけ目を瞬かせてから いつものように笑った。
kvn「……急だね」
ym「いいじゃん」
kvn「うん。僕も好きだよ」
軽い。
でもちゃんと届いてる言い方。
俺はそれで十分だった。
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違和感はほんとうに些細だった。
帰り道、コンビニに寄って いつものようにコーヒーを二本買う。
ブラックと甘いやつ。
当たり前みたいに差し出したら ケビンくんが一瞬、手を止めた。
kvn「……どっちだっけ」
ym「え?」
kvn「僕、どっち飲んでたっけ」
冗談だと思って笑いかけたけど ケビンくんの表情は本気だった。
ym「あ、甘いほう。ほら、前も言ってたじゃん」
kvn「……ああ、そっか」
そう言って受け取る。
でもどこか腑に落ちてない顔。
俺はそのとき 何も言わなかった。
人って疲れてたら忘れることもある。
それだけだって思ったから。
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家に着いて、靴を脱いで、
ケビンくんが俺の背中に凭れる。
kvn「今日さ」
ym「うん」
kvn「……楽しかった?」
ym「なにそれ。急に」
kvn「いや、なんとなく」
俺は振り返ってケビンくんの頬に触れた。
ym「楽しかったよ。ケビンくんと一緒なら」
そう言うと ケビンくんは少し遅れて頷いた。
kvn「……そっか」
その一拍が 胸の奥に静かに引っかかった。
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このときはまだ知らなかった。
これが 最初の欠け方だったことを。
俺はまだ 全部が続くと思ってた。