日曜日の昼下がり。公園で散歩していると、ふと急に足を取られた初兎がつまずいて転びそうになった。
「うわっ!」
慌てて手を伸ばすいふ。初兎を支えようとするが、足元が滑って少し焦る。
「大丈夫か?」
「うん、でもちょっと足捻った……」
「それなら、おんぶしてやる」
「え?!」
「うん、初兎、足痛いやろ? そのまま歩くのは無理だろ」
初兎は少し戸惑いながらも、いふが後ろに回って両手を広げると、しっかりと抱きかかえる準備をしていた。
「でも、おんぶなんて……」
「何言ってんだ。お前、小さいし軽いから、楽勝だよ」
言いながら、いふは背中を向けてしゃがんだ。
初兎はほんの少しだけためらったが、いふの言葉に背中を押されるようにして、軽く手を伸ばした。
「じゃあ、お願いするけど……恥ずかしいから、ちょっとだけ……」
いふはにやりと笑い、初兎の腰をしっかり支えて背負った。
「しっかりしろよ、初兎。俺の背中に乗ったら、どこにでも連れて行けるからな」
背中に乗せた初兎は、顔を赤くして必死にしがみつく。
「うわっ、目線高っ……!こんなに密着するなんて、想像してなかった」
「俺も初兎とこんなに密着するとは思わなかったけど、正直……嬉しい」
初兎が少し恥ずかしそうに顔を隠すと、いふは軽やかな足取りで歩き出す。
「おんぶするの、意外と楽しいな。お前も楽しんでくれよ」
いふの背中にしがみついて、初兎は少し恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
しかし、いふの肩の温もりと、彼の背中にぴったりと寄り添うことで、次第に安心感を覚えてきた。
「まろちゃん、こんなにおんぶされるの、初めてや……」
初兎は、いふの背中に顔を埋めながら小さくつぶやいた。
その声にいふはふっと笑う。
「初兎は軽いから全然平気だよ。でも、こうやってお前を支えてると、なんか幸せだな」
「……恥ずかしいこと言わないで、急に」
「恥ずかしがるなよ。俺、初兎のこと大切に思ってるんやし」
少し照れくさい言葉に、初兎は耳まで真っ赤になりながら、また顔をうずめる。
「……でも、さ、こうやっておんぶされるのって、なんだか甘えてるみたいで、ちょっと恥ずかしいんよな」
「甘えられるの、嬉しいだろ?」
「うっ……なんか、そんなに言われると……」
いふは歩きながら、ふと初兎を見上げる。
「何か恥ずかしがってるけどさ、俺に甘えてくれたほうが、嬉しいんだよ。初兎が俺に頼ってくれるってことが、すごく大事だなって思う」
その言葉に、初兎は一瞬黙った。
少しだけ心が温かくなる感覚がした。
「……うん、ありがとう、まろちゃん。もうちょっとだけ、甘えてもいい?」
「もちろん、甘えろよ」
それから、初兎は少しだけ気持ちを落ち着けてから、いふの背中にギュッとしがみついた。
そのまま、少しの間、二人だけの時間が流れる。
「おんぶされてると、すごく安心する。まろちゃん、頼りになるね」
「頼りになりたいからな、いつでも初兎を支える」
その言葉に、初兎はふっと笑いながら、少しだけいふの耳元に顔を寄せた。
「……それじゃ、もう一個お願い。今日は、最後までおんぶしてくれる?」
「当たり前だろ。どこまでもお前を支えるよ」
二人はゆっくりと歩き続け、いふの背中にしがみついたまま、少しずつ心地よい温もりを感じながら歩みを進めていった。
途中、周囲の景色が流れる中で、初兎はしばらく目を閉じて、いふの存在に包まれるような安心感を感じていた。
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