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15cmの身長差

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15cmの身長差

12 - 第12話

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2025年06月14日

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ライブイベントの終わり、会場の裏手はまだ賑わっていた。スタッフの声、機材の音、ファンの歓声――ざわざわした空気の中で、初兎は横にいたいふに声をかけようとした。


「まろちゃん、ちょっと……」


「ん?」


しかし、声が雑音にかき消される。

初兎がもう一度口を開こうとしたとき――


いふがすっと、身をかがめた。


「ごめん、聞こえなかった。もう一回言って?」


そう言って、自分の耳を初兎の口元に近づけてくる。

近い。あまりにも近い。


「ちょっ……近すぎ!」


「お前の声、小さいからさ。ちゃんと聞きたいだけ」


真顔で言ういふに、初兎は顔を赤くしながらも小声で話す。


「……帰り、どっちの車乗るんだっけ」


「なるほど、了解。……けど、さ」


いふはすっと顔を引きつつ、ふっと笑った。


「今の、めっちゃかわいかった」


「は!? 普通に話しただけやろ!」


「うん。でも、口元近づけて話されると、なんかドキッとする」


「……まろちゃん、かがんでくるの、ずるいんだよ」


「でも逆にさ、俺がかがまないと、初兎何も聞こえねーやろ?」


「うっ……そうだけど……!」


いふはまた少しだけ身をかがめて、今度は初兎の耳元にそっと顔を寄せて囁くように言った。


「俺、初兎の声ちゃんと聞きたいから、何度でもこうやって近づくよ。だから――もっと喋って?」


「……バカ。調子乗んな……」


そう言いながらも、初兎の耳は真っ赤で、目はどこか嬉しそうに揺れていた。


いふが背を伸ばすと、ふとまた目を合わせて笑う。


「……身長差、悪くないだろ?」


「……悪いとは言ってないもん」


そんなやり取りの中、

「話しかけるたびに距離が近づく」2人の関係が、確かにそこにあった。

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