テラーノベル
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ーー病室。
午後の柔らかな光が差し込んでいた。
静かな部屋。
規則正しくモニターが音を刻んでいる。
ベッドの上。
永夢は窓の外を眺めていた。
ニット帽を被っている。
化学療法の影響だった。
顔色はまだ良い方だ。
だが。
頬は少し痩せている。
体力も落ちていた。
気軽に歩き回れる状態ではない。
それでも。
永夢は穏やかだった。
コンコン。
ノック音が病室に響く。
「どうぞ」
扉が開く。
入ってきたのは飛彩。
その後ろに貴利矢。
そして大我。
永夢の表情が少し明るくなる。
「飛彩さん」
「貴利矢さん」
「大我さん」
三人が揃っている。
それだけで何となく察した。
「何か分かったんですか?」
飛彩は答えない。
代わりに。
手に持っていたケースを机の上へ置く。
カチッ。
ロックが外れる。
永夢の視線が向く。
そこにあったのは――
ガシャットだった。
永夢の目が見開かれる。
「……それ」
貴利矢が笑う。
「完成した」
病室が静まり返る。
永夢は言葉を失った。
視線がガシャットへ釘付けになる。
そして、ぽつりと
「これは…」
飛彩が静かに続ける。
「レウコイド因子に対する抗体データ」
「治療プログラム」
「全て組み込んである」
大我も腕を組んだまま言う。
「使える状態だ」
永夢はしばらく動かなかった。
そして。
小さく息を吐く。
「……本当に」
信じられないような声。
「完成したんだ……」
三人は頷く。
「ありがとうございます…本当に」
短い沈黙。
だが。
永夢が最初に口にしたのは。
別の言葉だった。
「パラドは」
病室が静かになる。
やっぱり。
最初に聞くのはそこだった。
永夢は三人を見る。
「パラドは……どうなったんですか」
貴利矢が苦笑する。
飛彩は小さく息を吐いた。
大我は腕を組み直す。
そして。
「生きてるぞ」
短く答えた。
永夢の肩から力が抜ける。
目に見えて安心したのが分かった。
大我が続ける。
「ただし」
その一言で。
永夢の表情が再び引き締まる。
「無茶しやがった」
貴利矢が肩をすくめる。
「今は絶賛お休み中」
「1週間経っても起きねぇ」
その瞬間だった。
永夢の表情が変わる。
「……え」
小さな声。
そして。
布団を跳ね除けた。
「永夢?」
貴利矢が目を瞬かせる。
永夢は点滴を気にすることもなくベッドから降りようとする。
「おい」
大我の声。
だが止まらない。
「パラドのところに――」
足を床につける。
立ち上がろうとする。
しかし。
ふらり。
身体が大きく揺れた。
飛彩が即座に腕を掴む。
「動くな」
「でも!」
永夢は振り返る。
「起きてないんですよね!?」
「1週間も!」
飛彩の眉が寄る。
「その身体で…!」
「そんなこと――」
飛彩の手を振り払おうとする。
だが。
今度は反対側から腕を掴まれる。
大我だった。
「離してください!」
大我は何も返さない。
永夢がさらに前へ出ようとする。
しかし。
今の身体は思うように動かない。
抗がん剤。
長期入院。
体力低下。
このわずかな時間でも呼吸が乱れ始める。
それでも。
止まらない。
「パラドが――」
「永夢」
貴利矢が静かに呼ぶ。
その声に。
永夢の動きが止まった。
貴利矢は苦笑する。
「気持ちは分かる」
本当に分かっている顔だった。
「あいつが無茶したのも知ってる」
「だったら……!」
「だからこそ!」
貴利矢は続ける。
「今倒れられたら困るんだよ」
永夢が息を呑む。
飛彩も静かに言う。
「パラドはちゃんと生きてる」
「今はちょっと眠ってるだけだ」
大我が腕を離さないまま続ける。
「お前が今行っても出来ることはないぞ」
「……」
「それより」
低い声。
「自分の身体を見ろ」
永夢は言葉を失う。
呼吸が乱れている。
立っているだけで足が震えていた。
飛彩がゆっくりと言った。
「パラドが命懸けで作った」
机の上のガシャットへ視線を向ける。
「それを無駄にする気か」
病室が静まり返る。
永夢は拳を握る。
行きたい。
今すぐ顔を見たい。
無事か確かめたい。
それでも。
今の自分に出来ることはない。
やがて。
永夢はゆっくり目を閉じた。
そして。
小さく頷く。
「……分かりました」
その声は。
どこか悔しそうだった。
でも。
三人には分かっていた。
永夢がどれだけパラドを心配しているのかを。
その様子を見て。
飛彩が静かに言った。
「受け取れ」
視線がガシャットへ向く。
永夢はしばらく黙っていた。
やがて。
「はい……」
ゆっくりと頷く。
だが。
確かな決意が込められていた。
ベッドの上で。
永夢は完成したガシャットを見つめる。
その中には。
パラドの覚悟と。
三人の努力が詰まっている。
そして。
次はいよいよ――
永夢自身の戦いだった。
病室。
昼の光はカーテン越しに柔らかく差し込んでいる。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、部屋は静かだった。
ベッドの上。
永夢はゆっくりと呼吸を整えている。
その手の中には、白いガシャット。
「……これで、始まるんですね」
小さく呟く。
飛彩が頷く。
「起動しろ」
モニターが点灯している。
貴利矢が操作パネルを確認する。
「抗がん剤は既に投与済み」
大我が腕を組んだまま言う。
「あとはこいつ次第だな」
視線が、ガシャットに集まる。
永夢は一度だけ息を吸った。
そして。
ガシャットを握りしめる。
そしてガシャットのボタンを押す。
起動。
その瞬間。
白い光が弾けた。
病室の空気が揺れる。
モニターが一斉に反応した。
『抗体プログラム展開開始』
飛彩の目が細くなる。
「始まった」
永夢の身体の中に、熱のようなものが広がる。
それは痛みではない。
しかし、確かな“違和感”だった。
「っ……!」
永夢の指がシーツを握る。
体内で何かがぶつかっている。
レウコイド因子。
そして、抗体プログラム。
二つの情報が衝突していた。
貴利矢が画面を見て声を上げる。
「反応出てるな」
大我が低く言う。
「レウコイド側が抵抗してるのか」
だが。
次の瞬間。
モニターの数値が跳ね上がる。
飛彩の表情が変わる。
「……強すぎるのか」
永夢の呼吸が乱れる。
「……う、あ……!」
身体が震え始める。
白い光が一瞬、濁る。
貴利矢が焦る。
「このままだとバランス崩れるぞ!」
大我が短く言う。
「抗体が負けちまうぞ」
一瞬、空気が張り詰める。
永夢の意識が揺れる。
胸が苦しい。
でも――
その奥で。
声がした気がした。
『患者の笑顔を取り戻す』
自分の声。
そして。
あいつの声。
――パラド。
永夢は歯を食いしばる。
「……まだ……!」
白い光が強くなる。
揺れていた波形が、わずかに変わる。
飛彩がモニターを見つめる。
「……均衡が取れ始めている」
貴利矢が息を呑む。
「いけるか……?」
大我は目を細める。
体内では、最後の衝突が起きていた。
レウコイド因子が暴れ。
抗体が押し返す。
永夢の呼吸が浅くなる。
それでも。
手は離さない。
ガシャットを握り続けている。
飛彩が静かに言う。
「このまま維持できれば……」
数秒。
長い沈黙。
そして。
モニターの数値が、ゆっくりと落ち着いていく。
貴利矢の目が見開かれる。
「落ち着いてきた……!」
大我が小さく息を吐く。
「……やったか」
飛彩は画面を見つめたまま言う。
「成功だ」
その言葉が落ちた瞬間。
病室の空気が、ふっと軽くなる。
永夢の身体から力が抜けた。
「……はぁ……」
ゆっくりと息を吐く。
視界が少しぼやける。
それでも。
ガシャットはまだ手の中にあった。
貴利矢が永夢の肩に軽く手を置く。
そして小さく笑う。
「おつかれさん」
大我は腕を組み直す。
「まだ終わりじゃねぇけどな」
飛彩は静かに言った。
「治療は継続する」
「だが、第一段階は突破した」
永夢は天井を見上げる。
胸の奥に残る重さは、少しだけ軽くなっていた。
そして。
静かに目を閉じる。
小さく呟く。
「……パラド」
その名前だけが、静かに病室に落ちた。
緊張が解けたあとの、静かな時間。
モニターの音だけが規則正しく響いている。
飛彩が永夢の方へ視線を向けた。
「気分はどうだ」
永夢は少しだけ息を整えてから、ゆっくり答える。
「……なんか」
自分の手を見つめる。
「身体が、軽くなった気がします」
その言葉に、貴利矢が軽く眉を上げる。
大我は何も言わず、永夢の状態を見ていた。
飛彩は小さく頷く。
「そうか」
短い返事。
そして、視線をモニターへ戻す。
「抗体の反応が出始めている可能性がある」
永夢が顔を上げる。
飛彩は淡々と続けた。
「ただし、即時に結果が出るとは限らない」
「体内での反応には時間差がある」
一拍。
「だから、確定は三日後の検査で行う」
病室に静けさが戻る。
貴利矢が低く言う。
「それまで様子見ってことだな」
飛彩は短く答える。
「ああ」
そして、少しだけ間を置いてから。
「だが」
視線を永夢へ向ける。
「反応としては悪くないだろう」
その一言で、空気がわずかに変わった。
貴利矢が小さく息を吐く。
永夢はその言葉を静かに受け取った。
身体の軽さ。
まだ確信はない。
それでも――
何かが、確かに動き始めている気がした。
#仮面ライダーエグゼイド
つばさ
1,059
#オッキー
コメント
1件
めっちゃ刺さった……!😭💕 永夢が自分の治療よりも先にパラドのこと聞くところ、マジでグッときたよ…「生きてるぞ」の一言で肩の力抜ける描写、泣ける。 しかも「起きてないんですよね!?」って飛び出そうとするの、もう永夢くんの優しさが溢れてる🥺✨ 治療シーンの緊張感もすごくて、「まだ…!」って歯食いしばる姿にこっちまで熱くなった。 最後の「悪くないだろう」でちょっとほっとしたけど、まだ予断は許さない感じが続きを気にさせられる…!次話も楽しみにしてるよ、つばささん!🌸