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〜70日目〜


 体育座りで、スケッチブックを太腿に置いて、絵を描く私。そんな私の肩にもたれ掛かって、私の作業をただ見るまふゆ。この距離にも慣れてきた自分がいる。

 しかし暇なのか、私の左手で遊んでいるが。


「そういえば絵名っていい匂いするよね。何だろう、落ち着く匂い?」

「そう」

「……ちょっと、退かすね」

「え?」


 私のスケッチブックを取り上げて、地面に置いたまふゆ。それから私の膝を伸ばして、その上に乗った。


「ちょっと、今集中してたんだけど」

「…………」


 まふゆは無言のまま、そのまま倒れ込んできて、私の背中に手を回した。


「ちょ、ちょっと、まふゆ!?」

「うん、落ち着く。」

「は、ちょ、何、」

「私、絵名の匂い好きだよ。落ち着くから。寝るときも、一人でも安心できる」

「…………」


 こいつは、何を、言っているんだ。

 一つ一つの言葉が頭を通り抜けていく。意味が理解出来なくて、何とか考えるけど、恥ずかしくなって思考を放棄してしまう。

 何故、私は抱き着かれている。そして、何故、匂いを嗅がれている。

 ああそうか、落ち着く、だったか。そんな理由で。私は余らせた手を回すことも出来ず、ただ宙に浮かせている。


「絵名?」


 問い掛けるようなまふゆの視線。見つめ返すことは出来るが、それ以上は出来ない。少し遅れて、そういえばあのカーディガンはその様な使われ方をしていたな、と恥ずかしく思う。


「私のカーディガンも、すっかり絵名の匂いになっちゃったね」

「う、ん……」


 身体が一気に熱くなった。

 何だろうか。言い回しのせいかめちゃくちゃ恥ずかしい。別にただ普通のことを言っているだけなのに。

 まふゆは私のカーディガンのボタンを一つ一つ外していた。そして半分ほど開けきったところで、その隙間に手を入れて、私のワイシャツに直接触れて抱きしめた。それから流れるように顔を埋める。


「ま、まふゆ?」

「なに?」

「なに、じゃなくて……」


 まふゆはまだ飽きてないのか、隙間に入れていた手を出して、私の髪へと手を伸ばした。


「……っ」


 それから髪の毛の匂いを嗅いで、首元へ。疲れる体制だったのか、またカーディガンとシャツの隙間に手を入れて私を抱きしめた。


「まふゆ……?」

「寝てもいい?」

「……まあ、好きにすれば」


 私はそこで漸くまふゆを抱きしめ返した。

 それからそっと、頭を撫でてあげていると規則的な寝息が聞こえてきたので、私も目を閉じた。

100日後に付き合うまふえな

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