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ローザリンドとフィンは、酒場で得た情報を頼りに、町の中心にある冒険者ギルドに向かっていた。立派な石造りの建物に大きなギルドの紋章が掲げられ、その前には多くの冒険者たちが集まっている。
「これよ、フィン!私たちの冒険が本格的に始まるわ!」
ローザリンドは堂々と胸を張り、ギルドの扉を押し開けた。しかしその直後、フィンの顔色が曇った。
「…なあ、お嬢様、どうせ登録には料金がかかるんだろ?」
「そんな細かいこと気にしないで!払えばいいじゃない。」
フィンは大きなため息をつきながら、心の中で思った。
(いや、気にするだろ。これ、どうせやたら高額な登録料なんじゃないか?)
ギルドの受付には、冷たい表情の女性が座っていた。彼女は書類を机に並べ、淡々と説明を始める。
「冒険者ギルドの登録には、個人の場合登録料が1000ゴールド、パーティーの場合は3000ゴールドが必要です。また、登録後は毎月維持費として200ゴールドをお支払いいただきます。」
「えっ!?1000ゴールド!?そんなの払えるわけないでしょ!」フィンが驚きの声を上げる。
「ええと…これ、税金とかも含まれているんですか?」ローザリンドが恐る恐る尋ねると、受付の女性は冷たく頷いた。
「ええ、登録料には冒険者税15%が含まれています。また、維持費には危険地帯活動税とギルド運営維持税が含まれています。」
フィンは頭を抱えた。「税金だらけじゃねえか!金取るなら、何か特典でもあるのか?」
受付の女性は機械的に答えた。「特典として、討伐依頼資格、施設の利用権、そしてモンスター討伐報酬への優遇措置が受けられます。」
「…税金優遇措置って、何だよそれ!」フィンが絶叫すると、ローザリンドは大きな声で笑い出した。
「いいじゃない、フィン!このシステム、リアルな経済を反映してて面白いわ!」
「いや、全然面白くねえから!むしろリアルすぎて冒険が遠のくわ!」
フィンは財布の中を見ながら深刻そうな顔をしていた。二人合わせても、手持ちのゴールドは500しかない。
「どうするんだよ、お嬢様。登録料、全然足りねえぞ。」
「ふむ…こういう時こそ、私の貴族の知恵の出番ね!」ローザリンドはそう言うと、ギルドの掲示板に目を向けた。そこには小さな依頼がびっしりと貼られている。
「ほら、これなんてどうかしら?『道端の雑草を抜いてください:報酬30ゴールド』。」
「…お嬢様、それどんな小学生のバイトだよ。」
フィンが呆れていると、ローザリンドは別の依頼を見つけて目を輝かせた。
「じゃあこれ!『納税記録の整理を手伝ってください:報酬200ゴールド』!」
「なんで納税記録なんだよ!冒険らしい依頼はないのかよ!」フィンは声を荒げたが、ローザリンドは得意げに言い返した。
「冒険ってね、お金がないと始まらないのよ。それに、税金を理解するのも冒険者のたしなみ!」
二人が依頼主の税務官のもとを訪れると、そこには怪しい雰囲気が漂っていた。机の上には大量の金貨が積み上げられ、税務官は脂ぎった笑顔を浮かべている。
「君たち、納税記録の整理をしてくれるそうだね。報酬はたっぷり出すから、ついでにこの余分な収益も帳簿にうまく組み込んでくれないか?」
「…ちょっと待て。それって脱税じゃないか?」フィンが鋭く指摘すると、税務官はにやりと笑った。
「まあまあ、君たちも冒険者になれば分かるさ。税金をどう回避するかが一流の冒険者への第一歩なんだよ。」
ローザリンドは腕を組みながら言った。「なるほど…これはつまり、税金のダンジョンに挑むってことね!」
「いやいや、そんなゲーム的な解釈で納得するな!」
二人は税務官の帳簿を整理しつつ、不正を暴く証拠を集め始めた。ローザリンドはその過程で、ギルドの登録料が妙に高い理由が裏金の流用にあることを知る。
「フィン、見て!これが冒険の始まりよ!」
「いや、これもう冒険っていうより経済ドラマじゃねえか!」
最後には税務官の悪事を暴き、ギルドに提出することで登録料免除してもらうことに成功。フィンは疲れ果てながらつぶやいた。
「これが冒険者の第一歩なら、先が思いやられるな…」
「いいのよ!これで私たち、立派な冒険者よ!」ローザリンドは胸を張り、ギルドカードを掲げて笑った。