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…背中が痛い。
重い瞼を開け、頭を上げると
視界に飛び込んでくる沢山の机と椅子。
奇抜な色をした壁が眩しい。
どうやら俺は教室で居眠りしてしまっていたらしい。
とはいえ、こんな教室に見覚えはない。
とにかく、状況を把握しようと
座っていた席から立ち上がる。
朦朧としていた意識も立ったことで
随分とはっきりしてきたようで、
目も冴えてきた。
あたりをきょろきょろと見まわすが、
どれだけ記憶の奥底を探ってみても、
やはりこの教室には見覚えがなかった。
それに、この教室は何かがおかしい。
まず一番に目に入るのは、
金属板が固く打ち付けられた窓らしきもの。
それは窓かどうかも危うい程で、
勿論外の様子なんて見えやしない。
そして次に気になるのは
教室の四隅に取り付けられた
不審者対策というには少し多すぎる数の監視カメラ。
現在も動いているようで、赤い光が小さく光る。
…本当になんなんだ、この教室は。
ああ、教室のことで頭がいっぱいで
自己紹介をすかっり忘れていた。
俺の名前は≪東音答也≫。
一応【超高校級の小説家】だ。
超高校級の才能があること以外は特に何の特徴もない、
そこら辺にいるごく普通の男子高校生だ。
さて、自己紹介も終わったことだし、
とりあえず外に出てみようか。
ツヤツヤとした真新しい扉をスライドさせると、
音もなくスムーズに開く。
教室もそうだが、この学校…?は
備品がまだ新しいため、まだ新築のようだ。
廊下に出てあたりを見回すが、
やはり窓には相も変わらず金属板が打ち付けられており、
明かりは無駄に高い天井に設置された蛍光灯のみだ。
成程、やはり外の様子は見られないようだ。
もしかすると、俺はこの学校に
閉じ込められてしまったのかもしれない。
もしそうだとしても
自分が閉じ込められる理由も、
なぜこんな所にいるのかも分からない。
小説家である自分の豊かな想像力が
悪い方向に進んでしまっている。
気を取り直して、
この不自然すぎる状況を把握するため、
人気のない静かで少し不気味な廊下を歩きだす。
俺以外に人はいないのだろうか。
少量の期待を胸に、
無駄に広い廊下を速足でどんどん進んで行く。
ある程度歩いていたら階段にたどり着いた。
階段の表示を見る限り今俺がいるのは5階、最上階らしい。
5階建ての学校…学校にしては階数が多い気がしなくもないが、
出てきた教室に‟3年A組”の室名札があったため、
学校で間違いないと思われる。
階段の隣には親切にもエレベーターが設置されており、
説明書きを見る限り使用は自由らしい。
新築だからだろうか、設備が整っていてとても好感が持てる。
まあもし本当に閉じ込められているのなら
設備なんて気にしている余裕はないが。
エレベーターを使うのはなんとなく気が引けたため、
階段を使って4階へ行く。
ぱっと見た感じ、室名札の表示が2年生になったこと以外は
5階と特に変わったところはない。
一番近くの教室をのぞいてみるも、
室内も上とさほど変わりはない。
この調子でサクサク探索を進めていこう。
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