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にこにこ
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にこにこ
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再び隔離病室で過ごした一週間。
幸い熱は少しずつ下がり、発疹も薄くなっていった。
それでも、体力はほとんど残っていなかった。
少し起き上がるだけで息が切れる。
食事を食べ終える頃には、ぐったりと枕に沈み込んでしまう。
主治医は穏やかな口調で言った。
「熱は落ち着いてきました。」
「今日から一般病室へ戻りましょう。」
愁斗は静かに頷いた。
「……はい。」
嬉しい。
でも、それ以上に不安だった。
また無理をしてしまわないだろうか。
また迷惑をかけてしまわないだろうか。
そんな気持ちが胸の奥に残っていた。
午後。
病室のドアが開く。
一般病室へ戻ってきた愁斗は、久しぶりの窓から見える景色をぼんやり眺めていた。
しばらくすると、聞き慣れたノックの音が響く。
『失礼しまーす。』
その声だけで、思わず笑みがこぼれた。
「……いらっしゃい。」
『おかえり。』
「ただいま。」
二人とも、自然と笑っていた。
ひでは椅子に座ると、愁斗の顔をじっと見る。
『……まだ顔色悪いな。』
「会ってすぐそれ?」
『だって本当だもん。』
「ちゃんと元気になってるよ。」
『その”ちゃんと”も信用できない。』
「ひどいな。」
二人で笑う。
笑うだけで少し疲れてしまって、愁斗は小さく息をついた。
その様子を、ひでは見逃さなかった。
『疲れた?』
愁斗は反射的に、
「大丈——」
と言いかけて止まる。
約束を思い出した。
“苦しい時は苦しいって言う。”
“辛い時は辛いって言う。”
少し俯いて、小さく笑う。
「……ちょっと疲れた。」
その一言に、ひでもふっと笑った。
『言えたじゃん。』
愁斗は少し照れながら肩をすくめる。
「……約束したから。」
ひでは立ち上がると、ベッドのリクライニングを少し倒した。
『今日は無理して起きてなくていい。』
『横になって話そう。』
「でも……。」
『でも、じゃない。』
『疲れたって言ったんだから。』
愁斗は少し迷ってから、ゆっくり枕に頭を預けた。
「……こういうの。」
『ん?』
「誰かに頼るの、まだ慣れない。」
『だろうな。』
「迷惑じゃない?」
ひでは少し考えてから首を振った。
『迷惑だったら、毎日病院来てない。』
愁斗は思わず笑う。
「それもそうか。」
『それにさ。』
『頼られるって、案外嬉しいもんだぞ。』
その言葉に、愁斗は目を丸くした。
「……嬉しいの?」
『うん。』
『“俺でよかった”って思えるから。』
病室が静かになる。
愁斗は天井を見つめながら、小さく呟いた。
「……じゃあ。」
『うん?』
「また。」
「辛い時は言ってもいい?」
ひでは迷わず頷く。
『何回でも。』
『一回でも百回でも聞く。』
愁斗は安心したように目を閉じた。
「……ありがと。」
それは今までで一番自然な「ありがとう」だった。
窓の外では、夕日がゆっくりと街をオレンジ色に染めていた。
長かった入院生活も、少しずつ終わりが近づいている。
けれど。
それは「元通り」になるという意味ではない。
これから先も、体調には波があるだろう。
無理をすれば、また倒れるかもしれない。
それでも今の愁斗には、一つだけ前とは違うことがあった。
一人で抱え込まなくてもいい。
そう思える相手が、隣にいてくれた。
コメント
1件
うわあ、今回もすごく良かったです……。「ちょっと疲れた」って言えた愁斗くんの成長がじんわり沁みました。ひでくんの「頼られるって、案外嬉しいもんだぞ」という台詞、本当にその通りだなって思います。お互いが少しずつ距離を縮めていく感じが丁寧に描かれていて、読んでいて温かい気持ちになりました。次も楽しみにしてますね🌷