⚠️ご注意下さい⚠️
本編には問題のある表現はありませんが、
最後のおまけで書いている、
雫騎の雑談コーナーにてぶっちゃけすぎた結果、
あまりよろしくない表現が多少含まれています。
深瀬視点
バンドメンバー、
マネージャーと共に車に乗り、
星崎くんを自宅まで送り届けることになった。
「知らない人が家に来ても、
不用心にいきなり玄関開けたらダメだよ!」
「その相手が視線の張本人⋯監視してる人かもしれないからですか?」
俺は怯えながら答える星崎くんのその言葉に、
深く頷いて返すとそれに対して、
彼がルームチェーンを使うと言って、
警戒してくれたために少しホッとした。
そうは言ってもご飯の約束をしたのは明日だ。
本当ならもっと楽しく食事をする予定だったのに、
その前にこんなことが起きてしまうとはおもわず、
嫌な気分になって少し苛立つ。
彼が住んでいるアパートは、
一般人も住んでいるような、
セキュリティ上の問題が気になるような自宅だった。
日本ではまだ無名でも、
アメリカでは事前告知なしで全米を回る路上ライブを敢行して、
毎回その度に警察が出動する騒ぎになるほど知名度が高い。
それだけの有名人がどうして?とは気になったが、
あまりにも個人的なことで、
流石にそこまでは踏み込めなかった。
「じゃあ明日楽しみにしてるね」
「はい⋯お疲れ様です」
俺は翌朝になってすぐ彼に連絡をした。
例の人物の状況を知りたかったからだ。
アパート周辺ではまだ視線を感じていないらしい。
それを聞いて安心したが、
相手を特定できていないため、
まだ油断はできない。
彼を一人にはできない今、
アパートに直接迎えに行くことことにした。
「はい?
あ⋯ふーさん。
ちょっと待ってください」
話し合った通りルームチェーン越しに少し会話をすると、
すぐにドアを閉めてチェーンの外れる音がして、
彼が出てきた。
あまり不安で眠れなかったのか、
うっすらと目にクマが出来ていた。
どうにかして早く安心させたいものだ。
俺は彼を連れ出して店に向かう。
車内では音楽だけではなく、
いつか飼ってみたいペットなど、
他愛のない話をして過ごした。
近くの駐車場に停めて店まで二人で歩く。
「なんか⋯久々にゆっくりするな〜」
「そうなんだ。
俺も仕事が詰まってたから同じだよ」
そんな話をしていると店が見えてきた。
ん?
そこには既に誰かいた。
そう言えば友人も来ると言っていたなと思い出す。
店先に佇む人物の顔が見える距離まで来て、
その相手に俺は驚いた。
「えっ⋯もしかして優里くん!?」
「馬鹿!
声がでかい」
よく見ると一般人の通行人から何事かという、
不審そうな視線を向けられた。
そう言えば確かに顔を近づけないと、
優里くんだとは分からないほど、
完璧に身バレ対策した変装だった。
俺の声で優里くんが危うく、
身バレしそうになったことを謝ろうとした時、
俺よりも先に声を出した人がいた。
「⋯⋯⋯なんで」
そちらに目を向けると、
驚きながらもショックを受けたような表情をする大森くんたちがいた。
そしてその視線は俺ではなく、
星崎くんに向けられていた。
「今日話がしたいって誘ったら予定あるって言うから、
てっきり仕事だと思ってたのに⋯⋯」
「ぁっ⋯⋯⋯」
え?
どうやら俺たちは三人とも、
彼に会う約束を今日していたのかと、
状況を理解した。
正直かなり気まずい。
その空気を優里くんが一変させるように、
敢えて明るく弾んだ声で言う。
「ならこのメンツでメシ食えば良くね?」
「俺は構わないけど⋯⋯」
彼はどうする気なのだろうかと、
様子を伺うと少し考え込む素振りをして、
やや困惑気味に一言だけ返答した。
「優里さんがいいなら」
あれ⋯なんだろう?
この意味深な含みのある言い方はーーーー
もしかして彼は優里さんに好意があるのだろうか。
そもそもこの二人は一体どんな関係なのだろうか。
などと勘繰ってしまう。
いつまでも店先で屯しているわけにはいかず、
とりあえず中に入った。
「いらっしゃいませ!
あの⋯いま座敷席の一つしか空いてませんが、
そちらでもよろしいですか?」
活気のあるよく通る声が響いたかと思えば、
申し訳なさそうな小声で、
愛想のいい接客をする店員が空き状況を説明した。
「大丈夫です」
優里くんがしれっとそう答えて、
俺たちはすぐに通された。
8人は余裕で座れそうな広々としたところで、
小上がりの座席は畳張り、
机の下はポッカリと穴が空いた掘り炬燵だった。
ごゆっくりという声がかかり、
店員が去っていく。
「い草だ。
畳の匂いって落ち着くな⋯」
「お前は匂いフェチか」
やっぱり二人は距離が近かった。
物理的な距離だけではない。
気安く軽口を叩ける親密な距離感が、
二人の間の空気に流れていた。
「あ⋯こういうのって、
確か上座とか下座とかあるんだっけ。
僕はどこに座ればいいですか?」
「古臭っ!
固いこと言わずに座りたいとこでいいんだよ」
そうだ。
彼は妙なところで気を使うところがあった。
そういう時にする発言は、
年齢以上に大人っぽいどころか、
世代が違うのでは?と思うくらい古い言い回しをすることがあった。
結局右奥から俺が座り、
その隣に星崎くん、
優里くんが座り、
さらにテーブルを挟んで左奥から若井くん、
藤澤くん、
大森くんという順番で座ることになった。
早速メニュー表を広げる面々。
肉料理、
魚料理、
野菜や果物を使ったメニューなど豊富なラインナップが並ぶ。
チラッと隣を見ると、
彼もどれにするのか悩んでいるのか、
うんうんと思案顔で唸っていた。
「よし⋯⋯⋯決めたっ!」
しばらく悩んでようやく全員のメニューが決まった。
俺がベルで店員を呼ぶと、
優里くんがきちんと記憶していたのか、
全員分の料理と取り皿をスマートに注文した。
こういう細かい気使いが、
意識せずとも何気げなくできるところが、
優里くんはモテそうだなと思った。
「お待たせしました」
俺が頼んだのは、
ヒレカツとロースカツの2種類が乗ったカツ丼だ。
一口齧るとサクサクに揚がった衣、
ジュワッと溢れる少し甘めの肉汁、
飲み込まずにずっと頬張っていたくなる美味しさが口内に広がった。
(うまい。
この店アタリだな)
星崎くんの好みに合わせた店だったが、
この美味しさが味わえるなら、
個人的にも通いたいくらいだ。
隣からの視線が気になってそちらを見ると、
まだ注文した料理が届いていない、
彼が羨ましそうに俺を見ていた。
「食べる?」
俺は優里くんが頼んでくれた取り皿で、
てっきり丼から一切分を取るものだと思っていた。
しかしーーー
「いいんですか?
いただきますっ!」
星崎くんは俺が今齧ったカツを頬張った。
え?
お箸で持っていたはずのカツが消えた?
これ⋯⋯⋯間接キスじゃ!
突然のことで狼狽える俺に対して、
彼は満足気に言う。
「うまっ!
サクサクですね〜」
こういうことに抵抗がないのだろうか?
気になって聞いてみる。
「抵抗ないの?」
「海外だとバルで一つのジョッキを回し飲みしながら、
お酒を嗜むのが普通なので、
文化の違いですから抵抗ないです」
そうだった。
血筋上の彼は日本人でありながら、
日本国籍を放棄してマレーシア国籍を取得したため、
今法的にはマレーシア人なのだ。
そのため日本人が抵抗あることは、
彼には頓着するほどではないことだった。
なんだか海外に染まったなと実感した。
そして意識しているのも、
また自分だけなのだと思い知った。
(好きな人に自分を好きになってもらうって難しいな)
雫騎の雑談コーナー
いますよね。
こういうの?
人からの悪意には人一倍敏感なのに、
人からの好意には異常に鈍感な人。
俺もTASUKUも同じタイプなんですよね。
まあ元ブラック企業並みの事業所勤務経験がありますから。
この人は自分にとって害にならない人かどうかで、
付き合い方を変えるくらいには、
人間関係において慎重です。
誰だって嫌な思いはしたくないですから。
なんなら仕事仲間としてしか関わっていなかった後輩に、
いきなり一目惚れだなんだと言い寄られて、
正直いって自分のタイプじゃないから断ったんです。
そしたらソイツが振られた腹いせか何か知らないけど、
ストーカーと化したんですよ。
「マジかよ!?」
人怖えぇっ!ってドン引きでした。
正に俺は恋愛に向かないなと思った瞬間です。
コメント
2件
初コメ失礼します! このお話すごい好きです…星崎くんを奪い合ってる大森さん、深瀬さん(優里さんもかな?)の姿が最高ですし、鈍感なのか敏感なのか分からない星崎くんの性格も凄いリアルで本当に読むのが楽しいです! 続き楽しみにしてます! 長文&語彙力無な文失礼しました🙇🏻♀️