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その時。
ピコン。
スマホが鳴る。
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「……?」
画面を見る。
知らない番号。
でも。
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本文を見た瞬間、空気が変わった。
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『朝ごはん食べさせろ』
『偏食する』
『牛乳は温めろ』
『知らないやつには抱かせるな』
『夜は毛布ないと寝ない』
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「……は?」
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最後の一文。
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『あと泣いたらすぐ呼べ』
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「……」
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兄が吹き出した。
「誰?」
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僕は無言で画面を見せる。
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送信者。
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蒼真
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「ぶはっ!!」
兄が爆笑した。
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「なにこれ!」
「過保護すぎるだろ!!」
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僕も若干引いていた。
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するとまた通知。
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『あと』
『撫でる時は耳から』
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「……」
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『尻尾は寝る前だけ』
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「……」
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『嫌がったらすぐやめろ』
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「……お母さん?」
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兄が腹抱えて笑ってる。
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でも。
腕の中の赤ちゃんオオカミは——
スマホを見るなり、嬉しそうに尻尾を揺らした。
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「……にぃ」
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その顔が、
少しだけ嬉しそうで。
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「……会いたいの?」
聞いてみる。
すると、
赤ちゃんオオカミは少しだけ迷って——
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「……こわい」
小さく呟いた。
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「でも……すき……」
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(……あぁ)
複雑なんだ。
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好き。
でも怖い。
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きっと蒼真は愛情の向け方が下手なんだろう。
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そのとき。
また通知。
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『写真送れ』
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「……」
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『今』
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「圧がすごいな……」
コメント
1件
このエピソード、すごく好きです。“蒼真の過保護すぎる指示書”が笑いを誘いつつ、彼なりの不器用な愛情がじんわり伝わってきました。「撫でる時は耳から」「尻尾は寝る前だけ」——この細かさに設定の凝縮を感じます。赤ちゃんオオカミが「こわい、でもすき」と呟く場面で、複雑な感情の動きが一気に腑に落ちました。短文と余白の使い方が絶妙で、テンポよく読ませる手腕が光ってますね。