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「ーーまた、次の配信でお会いしましょう!
さよなら〜」
…カチッ
配信の終了ボタンを押す音が静かに響く。
いつも通り、明るく終えた。
なのに、部屋の空気はどこか冷たかった。
なるせはPCの電源を落とし、モヤモヤとした気持ちのまま、らっだぁの部屋に向かった。
部屋に入ると、らっだぁは、特に目も合わせず、PCの前でマウスをカチカチ動かしている。
「……ら、らっだぁ。…なんかあった?」
問いかけても、返事はなくて。
しばらくしてから、ようやく出てきた言葉は思ってたのと違った。
「…別に。お前が気にすることじゃないから」
──なんでそんな言い方。
声も、目も、何もかもが冷たくて。
心が、じわりと痛んだ。
「……俺、なんか…した?」
反射的に出た言葉。
でも、返ってきたのはさらに冷たい一言だった。
「気づかないなら、別にいい。気にしないで」
その瞬間、
胸の奥がぎゅっと掴まれたように苦しくなった。
言い返そうとしても言葉が出てこなくて、
気づいたら、涙が一粒、落ちていた。
「……なんだよ、それ。
……そういうの、一番辛いって……わかってるくせに」
目を伏せても、涙は止まらなかった。
視界が滲んで、息もうまくできない。
すると、急にらっだぁの椅子がきぃっと鳴った。
気づけばすぐそばにいて、しゃがみ込むようにして目線を合わせてきた。
「──ごめん、なるせ」
いつもの、らっだぁの声だった。
あったかくて、やさしい声。
「お前が悪いんじゃない。
俺が勝手に、…ちょっと拗ねてただけ。お前が他の奴と楽しそうにしてたの見て、……バカみたいに焼いてた」
なるせは目を見開いたまま、泣き顔のまま、
固まった。
「ねぇ、なるせ……泣かせたかったわけじゃないの。
ほんとごめん。俺、バカだわ。なるせのこと好きすぎて、余裕なくなってた」
そのまま、らっだぁがなるせの頬に手を添えて、涙を指で拭った。
指先があったかくて、優しくて──
「お前のこと泣かせといて、…こんなこと言う資格ないの分かってるけどさ──
……俺、なるせのこと、大好きだし、大事にしたい。これからも。ずっと。」
なるせは泣きながら、小さく首を振った。
「…俺も好きだよ。
俺だって、らっだぁが他の子と話してんの、内心むかついてたし……笑」
笑いながら泣くなるせを、
らっだぁはそっと抱きしめた。
ぎゅうっと、壊れそうなほどに。
「じゃあもう、お互いなことだけ見とこ。な?
他の奴なんて、どうでもいい。」
胸の奥の棘が、
ゆっくり溶けて消えていく。