規則正しい寝息が静かな部屋に響いている。
華の頬はほんのり赤く、口元にはかすかな笑みさえ浮かんでいた。
律はその横顔を見つめ、胸の奥に言葉にならない感情が込み上げてくるのを感じた。
(……俺なんかに「好きになってよ」なんて……)
酔った勢いの言葉だと分かっている。
それでも、耳に残る声が消えない。背中に感じた温もりも。
「……桜坂さん」
小さく名前を呼んでみる。
返事はない。ただ、静かな寝息が返ってくるだけ。
律は苦笑し、視線を落とした。
(俺は……あの人に、何を期待してるんだ)
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