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千葉県 西部
父が車を走らせていると、西部の街で国民保護アラートが鳴り響く。とても不気味で音響の低い音が街中に響き渡る。
修也「なんだよ…この音…」
父「国民保護アラートだ…本当なら、戦争とかそういう時に鳴るもんなんだが…それほど緊急事態なんだろう…」
琴音「ねぇ…どうするの…?これから…」
琴音は暗そうな表情を浮かべながら尋ねる。
父「その氷塊雲ってやつをしのげれる場所を探さないとな…」
父「修也。他にニュースで情報はないか?」
修也「えっ…えっと…」
修也はスマホを起動しネット記事に目を通す。
修也「巨大な氷塊雲が千葉沖から上陸…政府は国民全員に緊急避難指示を発令…だって…」
父「…今から緊急避難指示を出しても遅いだろうに…!」
その時、向かい車線に紺緑色のトラックが何台も通過していく。
修也「なんだ…」
琴音「緑のトラックがいっぱい…」
父「自衛隊だな…俺たちとは真逆の方向に行っている。」
初めはガラガラだった逆車線は、徐々に車の量が増していた。皆、千葉県の西部に向かっているのだ。
修也「ねぇ!あっちは氷塊雲が迫ってきてる方だよ!?危なくね!?」
父「彼ら(自衛隊)には…身を危険に晒しても…国民に真実と情報を伝える義務があるんだ…」
修也は父の言葉に、胸が痛む。窓から通り過ぎて見える自衛隊のトラックは自ら危険を晒してまで国民の期待に答えようとしているのだから。
父「今から高速に乗って青森方面に向かうぞ。」
父は高速道路の入口に向かう。他の車も、修也たちの車に続いて高速道路の入口を通過する。高速道路にはゴミが散乱し、荒れていた。
日本国官邸
国土交通大臣「総理!氷塊雲の速度が落ちました!」
総理「速度が落ちただと…?いったいどうして…」
国土交通大臣「気象庁によりますと…季節風がちょうど東側に吹き始め、氷塊雲の速度を落としていると考えられます!」
総理は肩の力が抜け、ソファーに腰をかける。
総理「そうか…」
国土交通大臣「しかし、総理。我々が航空機を使って日本列島から離れるまでの時間はありません。我々は官邸の地下シェルターに避難しましょう。」
総理「分かった…。くれぐれも、アメリカとの連携は閉ざさぬように…」
国土交通大臣「分かっております…!総理…!」
国土交通大臣は総理に向かって頷き、部屋を後にする。
青森方面 都内高速道路
修也たちの車は、青森に向かって走行していた。高速道路には、多くの車が現れていた。
琴音「みんな…青森に向かってるの…?」
父「あぁ、そうらしいな。青森県には、港がある。みんな…そこから日本を出て、ロシアに向かおうとしているんだろう。」
その時、車外が白く染まっていく。雪が降り出したのだ。
修也「…雪…?」
琴音「いま…6月よね…?」
父「世界が狂い始めた証拠か…」
車の外には雪景色が広がっていた。修也は自分のリュックからコーラを取り出す。修也がペットボトルのギャップをひねると、炭酸がもれる。
プシュ!
そして修也はペットボトルの口に口を付ける。
修也「冷てぇ!さっきまでぬるかったのに…!」
琴音「そうね…確かにちょっと寒くなってきたわね…」
琴音は腕を手でさする。
母「ねぇ…ちょっと暖房入れない? 」
父「あぁ…そうだな。少し寒くなってきた…」
父はエアコンのダイヤルをパチンと捻り、スイッチを入れる。
修也「エアコンの風ぬるくね?」
琴音「そうね…」
父「外の空気が冷たいんだ…エアコンも間に合わないんだろ…。少しの辛抱だ。頑張ってくれ。」
琴音はスカートのポケットからスマホを取り出し起動する。
修也「何してんの?」
修也は琴音に近ずく。
琴音「クラスメイトとLINE…って言っても…ほとんどの子と連絡が取れないんだけどね…」
修也「き、きっと!みんな今頃避難してるんだよ!」
琴音「そうよね…みんな…大丈夫よね…」
琴音はグッとスマホを握りしめる。
その時、父が急にブレーキを踏む。修也は前方座席に肩を打つ。
修也「親父!何してんだよ!」
父「ごめんごめん…いや…前に警察が…」
修也が前のフロントガラスから前を見ると、雪の中に誘導灯を持った警察官が複数人立っていた。警察官は車に近ずき運転席の窓を開けるように言う。父は窓を少し開ける。外からは冷たくひんやりした空気が車内に入ってくる。
警察官「どうも…!」
父「どうかされましたか…?」
警察官「この先の道は完全に凍結しています!我々が今から無償でタイヤにチェーンを装着いたしますので!少しお待ちください!」
父「分かりました!親切にありがとうございます!」
警察官は頷き、他の警察官達と作業を始める。
母「お巡りさんはなんて…?」
父「この先の道は完全に凍結しているらしい。だから無償でタイヤにチェーンを装着して下さるそうだ。」
母「そ、そうなのね…!」
やがて警察官は作業を終え、運転席の窓から顔を覗かせる。
警察官「チェーンの装着が完了しました!出発してください!」
父「分かりました!ありがとうございました!」
警察官は頷く。父は窓を閉めて車のアクセルを踏む。遠ざかっていく修也たちの車を、警察官は遠目で見ていた。
警察官「どうか…ご無事で…」
警察官はソッと敬礼し、修也たちの車を見送るのであった。