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レクリエーションの最中、隣の席から声をかけられた。
「サークルとか、もう決めた?」
声の方を見ると、入学式でも隣の席だった悠治がこちらを見ていた。
少し気さくそうな笑顔で、椅子に肘をついている。
「まだかな。あんまり興味ありそうなのなくてさ」
そう答えると、悠治はすぐに身を乗り出した。
「えー、もったいない。サークル入って彼女つくるもんだろー」
悠治は、東京生まれ東京育ちだという。
歩夢が関西出身だと話したときも、やけに興味津々で食いついてきた。
「関西って、ほんとにノリ違うの?」
「たこ焼きって家で作るの?」
そんな他愛もない質問が続く。
歩夢も適当に答えながら、
こういう会話が、これからの「日常」になるのだと実感していた。
特別なことは、何もない。
ただ、知らない場所で、知らない人と話している。
気がつくと、教室の空気が少しざわつき始めていた。
「もう昼か」
誰かのそんな声をきっかけに、
レクリエーションは一旦区切られ、昼食の時間になった。
昼休みになり、歩夢と悠治は学食へ向かった。
「そういえばさ、Dシェアやってる?」
唐突な一言だったが、不思議と驚きはしなかった。
「うん、まぁ」
歩夢がそう答えると、悠治は少しだけ目を輝かせた。
「よかった。じゃあ、交換しよ」
交換、という言葉に一瞬引っかかりを覚えながらも、
歩夢はスマートフォンを取り出した。
画面を並べ、アカウントを検索する。
悠治のページには、短い夢の投稿がいくつも並んでいた。内容は軽く、どこか笑い話のようなものばかりだ。
「そうだ、今日さ。Dシェアのリリース記念らしいぜ」
歩夢は箸を止め、顔を上げた。
「記念?」
「うん。開発者が投稿してる。結構話題になってるっぽい」
そう言って、悠治は自分のスマートフォンを操作する。
「フォローしてるか?」
歩夢は、ゆっくりと首を振った。
「いや、してない」
「そっか。よくこんなの作ろうと思ったよなー」
悠治の画面には、見慣れないアカウントが表示されていた。
アイコンも、プロフィールも、やけに簡素だ。
投稿の内容までは、ここからは見えない。
歩夢は自分のスマートフォンに目を落とす。
検索欄に、何文字か打ちかけて、やめた。
開発者。
その言葉が、胸の奥に小さく引っかかる。
「あとで見てみるわ」
学食のざわめきが、二人の会話を包み込む。
周囲では、笑い声も、他愛のない話題も、変わらず流れていた。
橘靖竜