──────Hれいまり視点──────
目が覚めると森の中だった。どうやら、上手くこの世界に来ることが出来たらしい。目の前には、既に死んだ私の姿があった。この世界での、本来の私。東雲椎名という生を受けて、幸せを感じながら生きるはずだった子。その子は既に息を引き取り、下半身だけを残して死んでいた。おそらく、上からガブリと食べられたのだろう。残された下半身からは血がダラダラと垂れ流れていた。
入れ替わるため、私はその子に手を添える。───そうすれば私はその子になりかわる。どうやら男の子だったようで少しばかり服装に違和感が───と思ったが普段からズボンの私にはあまり気になることはなかった。
自身の体の違和感をなくすため、何度か手を握ったりひらいたり、飛び跳ねたり、少し走ってみたりする。
そうした行動のおかげですっかりこの体になれることが出来た。しかし、その間にひとつの疑問が生まれた。下半身だけを残して死ぬことなんてあるだろうか?おそらく噛み跡的に相当大きな魔獣に食われたことが分かる。靴を見てみるがあまり汚れていない。まるで抵抗せずに死んだみたいな。
───寒気がする。先程までの疑念が脳内で弾け、私による私のための会議が開かれた。
私は既に何回か死んで、もしかしたらこれはHルート何度目かの挑戦かもしれないこと。
もしかしたら、この死体は前の私のなのかもしれない。この世界の子はまさか入れ替わった私自身?
理屈は通る。何故ならば既に私が入れ替わったはずの死体はそこにないからだ。入れ替わった時の死体はそのまま処理される。バグが発生されたらその存在が消されるように、簡単に。
それを気づかせるために前の私はあえて抵抗せずにそのまま食われたのかもしれない。おそらく、自らそのものの口の中に突っ込んで。
私はすぐさま木の上に飛び乗る。身体能力は人間だが男の体なため、割と簡単に登ることが出来た。私は出来る限り息を殺し、なるべく自身の存在を消す。バレたら、前の私達の二の舞になるからだ。
しばらく身を潜めていると、私を食ったであろう魔獣が森を徘徊していた。私を食った、というのは口元に血が残っているからという視覚情報と、吐き気がするほど強い異臭を放つその匂いで確信する。
とりあえずその魔獣から逃げることには成功したが、ここからどうすればいいのだろうか。まだこの世界の記憶が曖昧であり、この世界における親の家が分からない。どうしたものか。そう考えているとふと、一人の男が木の下を通る。
緑髪のその髪はそれだけで誰であるか見抜くのは簡単であった。───そう、いえもんさんである。
そのことはわかるが、何故こんなにも危ない森に来ているのか分からなかった。ただ、ここで見殺しにするわけにはいかない。私は素早く木の上から飛び降り、いえもんさんの手をひく。記憶的にこの世界の私はまだいえもんさんに会ったことがないらしい。あくまで他人として振る舞う。
「あなた危ないですよ!!この森には魔獣が出るんですよ!逃げてください!」
私がそう注意喚起すると、いえもんさんはゆっくりと面をあげる。
「その魔獣を討伐しに来たんですよ。俺は。」
そう言って私の瞳を覗いたのは金色に光る美しい瞳だった。真実を白日の元に晒す光のように、太陽のように周りを照らす光のように。そのどの言葉を当てはめても代用が効かないほど美しい瞳に心を簡単に奪われてしまう。
催眠じみたその美しい瞳から目を逸らす。これ以上魅入ってしまうとなぜだか依存してしまいそうだったから。
それはそうと、私はいえもんさんを死なせるわけにはいかない。再度警告する。
「本当に危ないんですって!人間の私達じゃ勝てないんですよ!」
「安心してください。魔法が使えるので。」
そう言っていえもんさんは手に炎を宿す。小さな炎だったが確かな生命の光が宿り、ゆらゆらと不規則に動いた。
───たしかに、魔法があればあの魔獣を殺せるかもしれない。そう納得した私は止めないことにする。まあ、最悪死ねばやり直せるだろうし、と少しばかり投げやりに。
「わかりました。けど、気をつけてくださいね!あの魔獣、本当に強いので!」
「…。こんなに俺を心配してくれる人は初めてだよ。」
少しばかり驚いたように、そういう。その表情は微笑を浮かべていた。その笑い方が、在る日のいえもんさんに重なる。
ああ、そっか。似ているんだこの人は。懐かしさを感じ少しばかり涙が出かかるがすぐにひっこめる。今泣いたらただの変な人だ。泣くな。
そう自身に言い聞かせながら木の上にのぼり、じっくりとその戦闘を見させてもらうことにする。
ザッザッと土を踏み、地を叩く音が聞こえた。
魔獣である。狼のような見た目をしているがその色と大きさが魔獣であることを語る。ゆうに3メートルは超えたその巨体に、森に馴染まぬその青色に染っている体。森の中でもその存在は強く、異物感が否めない。
いえもんさんは先程の魔法ではなく剣で挑むようで刃渡り70cm程の剣を握る。月明かりに照らされたその剣は少しばかり光っており、神秘的であった。
彼は躊躇せずに思いっきり地を蹴飛ばす。そうすると、人間とは思えないほど早く、高く飛び上がる。彼が通った後には強風が立ちこめ、思わず木から落ちるところだった。彼はそのスピードのまま、上から剣を魔獣に突き刺す。その突き刺した勢いは魔獣の体を貫通するほどのものだった。
魔獣は放ちかけた攻撃があらぬ方向に飛んで行ったまま、そのまま絶命する。
その、最後の置き土産と言うべき攻撃は、いえもんさんに当たる訳もなく、だからといって私に無関係ではないらしく、私が登っていた木に直撃。その衝撃で簡単に切り倒され、身構えることも出来ずに私はそのまま木と命運を共にする。
ここで切ります〜!いや〜昨日投稿できなくて申し訳ない。熱はなかったんですけど頭痛が酷くてですね…。まともに文章が思い浮かんでこず書くのを断念させてもらいました。書けなかった一日分は時間がある時に書きたいと思ってます。
それでは!おつはる!
コメント
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運が悪いのか…これが運命なのか
結局タヒんじゃうのか