テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#山中柔太朗
Freesia
5,703
1,915
夢中になりすぎて結構長めに書いちゃった笑😉
あれから一週間。
山中柔太朗という「超絶美形の世間知らず」を抱えた、曽野舜太の日常は文字通りひっくり返っていた。
アイドル活動のプレッシャーで悩んでいたことなんて、
柔太朗が掃除機の音に驚いて「新種の魔獣か!?」と背中に飛びついてくるたびに、綺麗さっぱり吹き飛んでしまう。
そんなある日の夕方。
「柔太朗、俺、今からちょっと事務所のダンスレッスン行ってくるわ」
「えっ、舜太行っちゃうの……? 俺、一人でお留守番?」
濡れた仔犬のような目で見つめられ、舜太の心臓がまたドキンと跳ね上がる。
自覚はあった。
もう完全に、この顔面国宝の王子様にハートを掴まれている。
「すぐ戻るから! あ、でも、今日の晩ご飯の材料がちょっと足りひんねんな……」
「それなら、僕が買ってくる。いつも舜太に頼りっぱなしじゃ、王子の名が廃るからね」
「えっ、柔太朗が一人で買い物!? いやいや、絶対無理やろ!」
「大丈夫。この一週間、舜太の戦い(※家事)を見て学んだから。僕を信じて?」
すっと細い指先で舜太の顎をクイッと上げ、トーン低めのイケボで囁く柔太朗。
無駄に少女漫画のようなポーズをキメられ、舜太は耳を真っ赤にしながら、メモと一万円札を押し付けた。
「これは『お金』っていう、この世界の等価交換の紙やからな! 絶対になくさんといてや!」
「うん、心得たよ」
ふにゃっとした100点満点の笑顔で見送られ、舜太は後ろ髪を引かれまくりながら家を出た。
「……さて。ここが、シュ・ウ・パ・ア……マーケット、だね」
近所のスーパーの前に立つ柔太朗。
お城の白い衣装は目立つので、今は舜太から借りたオーバーサイズのパーカーを着ている。
それがまた儚い美貌を引き立てていて、すれ違う買い物客が「モデルさん!?」と二度見していく。
柔太朗は、舜太から渡された「聖遺物(※メモ帳)」を開いた。
『にんじん、たまねぎ、おにく』
「にんじん……確か、オレンジ色の尖った大地の恵みだ」
野菜コーナーへ進むと、お目当てのものを発見する。
しかし、柔太朗の前に「タイムセール! 人参詰め放題!」という悪魔の罠が立ちはだかった。
周りの主婦たちが、ものすごい熱気でビニール袋に人参を詰め込んでいる。
「な、なんだこの、一歩も引かない戦場のような空気は……! これが、この世界のギルドの掟なのか……!?」
圧倒される柔太朗。
しかし、大好きな舜太に美味しいカレーを作ってもらうためには退くわけにいかない。
「僕だって……一国の王子だ……!」
覚悟を決めた柔太朗は、すっと長い腕を伸ばし、主婦たちの隙間から綺麗な所作で人参を袋に収めていく。
その動きがあまりにも優雅で美しすぎたため、気づけば周りの主婦たちが「あら、イケメン……」「どうぞ、ここ空いてるわよ」と、なぜか道を譲り始める。
「ありがとう、優しき民たちよ」
ふにゃっと微笑む柔太朗に、主婦たちの胸が撃ち抜かれる音が店内に響いた(※気がした)。
なんとか人参と玉ねぎを確保し、次はお肉のコーナーへ。
「ぶたばら、ぶたばら……」と呪文のように呟きながら歩いていると、目の前にパックに入った肉が現れる。
「あった……! でも、待てよ。これは本当に『豚』なのだろうか」
「僕の国では、肉の種類を間違えると、時折『麻痺の呪い』がかかる料理が完成したけれど……」
大真面目に肉のパックを凝視し、ぶつぶつと推理を始めるイケメン。
顔が良すぎるので、ただの「深く思考する美しい青年」に見えてしまうのが柔太朗の恐ろしいところだった。
「よし、これをレジという名の『儀式の祭壇』へ持っていこう」
「ただいま、柔太朗! 留守番大丈夫やった!?」
ダンスレッスンをマッハで終わらせ、息を切らして帰宅した舜太。
ドアを開けると、リビングのソファで、柔太朗がぐったりと燃え尽きたように横たわっていた。
「……おかえり、舜太。僕は、やり遂げたよ……」
「柔太朗! 大丈夫か!? 傷は!? 呪いは!?」
慌てて駆け寄る舜太の目に、テーブルの上の買い物袋が映る。
「ちゃんと買ってこれたみたいやな……って、えええええ!?」
袋の中を見た舜太は、今日一番のハイトーンボイスで絶叫した。
「何これ!? 人参が、異次元レベルで大量に入ってるんやけど!?」
「詰め放題という試練があってね。民たちが僕を認めて、場所を譲ってくれたんだ」
「お前、顔パスで人参勝ち取ってきたんか!? ほんで、このお肉……これ豚バラちゃう! 最高級の『A5ランク黒毛和牛』やんけ!!」
「えっ? だって、そのお肉、すごく輝いて見えたから……。舜太に、一番良いものを食べてほしくて」
「一万円札、一瞬で溶けたわ!!! カレーにするつもりやったのに、財政破綻するわ!」
頭を抱えてツッコミを入れる舜太。
しかし、柔太朗はソファから起き上がると、少し申し訳なさそうに、でも愛おしそうに舜太の服の裾をキュッと掴んだ。
「ダメ、だったかな……? 舜太を喜ばせたかったんだけど、僕、また間違えちゃったね」
少し寂しそうに眉を下げて見つめてくる、その破壊力1000%の顔面。
心臓がバックバクに暴れ出し、舜太は「くっそ、ずるすぎるやろ……!」と心の中で叫んだ。
「……もー! しゃあないなぁ! 今日はカレーやめて、この最高級のお肉で、肉じゃがにしたるわ!」
「本当!? やったぁ、舜太の料理、世界で一番大好きなんだ」
嬉しそうにパァァァと顔を輝かせ、舜太の首に抱きついてくる柔太朗。
その温もりに包まれながら、舜太は呆れつつも、心の底から幸せな笑みをこぼしていた。
「……あーあ、完全に胃袋掴まれてんのは俺の方やな」
異世界から来た世間知らずな王子様と、彼に振り回されっぱなしのお人好しアイドル。
二人の、ツッコミとときめきが止まらない毎日は、まだまだ始まったばかり。
fin
コメント
1件
もうアアアアア柔太朗くんかわいすぎる!!!😭💕💕 詰め放題を「試練」って本気で捉えてるところとか、主婦陣営に顔パスで人参勝ち取ったところとか、原型留めてない買い物結果に爆笑したww でも「舜太に一番良いものを食べてほしくて」って最高級和牛選んじゃうの、愛が重くて尊すぎる……! 家政力皆無なのに愛情だけは無限大の王子様、マジでズルいわこの破壊力。そして最後に抱きつかれてデレる舜太、完全にデレデレやん!🥺❤️ この二人の温度差がエモすぎて、続きが待ちきれないよ〜!!!