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週末が近づくにつれて、ネクストリンクのオフィスは徐々に活気を増していた。風滝涼は営業部のメンバーとともに顧客との打ち合わせに奔走し、山下葵もまた新しい機能開発に没頭していた。忙しさの中でも、二人の間には少しずつ距離が縮まる予感が漂っていた。
金曜日の午後、葵はふとしたことでプロジェクトの進捗報告書の締め切りを見落としていることに気づいた。焦りながらも作業に取りかかろうとしたその時、風滝がデスクにやってきた。
「山下さん、大丈夫?顔色が少し悪いけど。」
彼の優しい声に、葵は一瞬だけハッとした。
「ええ、大丈夫です。ただ、報告書の締め切りを忘れていて、急いで作らないと……」
「手伝おうか?」
その申し出に葵は戸惑った。普段は一人で黙々と仕事をするタイプの彼女にとって、誰かに頼ることは少し照れくさいことだった。
「ありがとう。でも、自分でなんとかします。」
風滝は軽くうなずき、離れかけたが、すぐに戻ってきてこう言った。
「無理しないで。何かあったら言って。」
その一言が、葵の胸にじんわりと染み込んだ。
夕方になり、葵は何とか報告書を完成させ、風滝にメールで送った。すると、すぐに彼から返信が届いた。
「よく頑張ったね。疲れたら、いつでも話を聞くから。」
その言葉に葵は思わず微笑んだ。
翌週の月曜日、二人は社内のエレベーターで偶然一緒になった。風滝がふと話しかける。
「週末はゆっくりできた?」
「ええ、あなたは?」
「少し家で読書をしたよ。落ち着いた時間も大事だね。」
二人の会話は自然と続き、仕事のことから趣味の話題へと広がった。風滝は穏やかで誠実な人柄を垣間見せ、葵も心を開き始めていた。
ある日の帰り道、葵はふと思った。
「風滝さんと、もっと話したい。」
その思いは日に日に強くなり、やがて小さな勇気となって胸の奥から湧き上がってきた。