【桜子】と言う名前は父が付けた。
桜の花ように好かれる人間になって欲しい…
そんな願いが込められた名前。
でも、残念な事に願いは叶わず
私は嫌われ者だった。
【日比野楓】…彼が現れるまでは。
日比野は変わった人間だ。
私が困っていると必ず助けてくれる。
それなのに、素っ気無かったり、
興味が無いような顔をしたり、
かと思ったら急に優しくなったり、
話の流れで私の許嫁になったり…。
いや、許嫁はさすがに断るでしょう?
何を考えているのか、さっぱり分からない!
でも…
困った事に私は、
日比野と許嫁になれて嬉しいのである。
何でこんな不思議人間を
好きになってしまったのか…
前途多難だが、
日比野の気が変わらないうちに
私は…
【プロポーズ】する事に決めた。
流れで許嫁になった私達は、
このままでは本物の恋人になれない…!
私からハッキリと気持ちを告げてやる!!
放課後…日比野のクラスは
ホームルームが長引いていた。
プロポーズに意気込んでいた私は、
肩透かしを喰らう。
仕方なく、廊下で日比野を待つ私の頬を
少し冷たい風が撫でて、
ふわりと金木犀の香りがした。
「もう、そんな季節か…」
〝今年の文化祭は日比野と回りたい〟
そんな台詞が脳内を巡り、頭を横に振る。
日比野って…
「文化祭とか面倒くさい」って言いそう…。
いや、絶対に言う…絶対に…100%言う。
私の口から溜息が出ると同時に
ホームルームが終わったらしく、
賑やかになる廊下。
何気なく教室を覗き込み…
「は?」
思わず声が出た。
日比野が…あの日比野が…
何やら可愛い女の子と談笑している。
え?
は?
日比野が…微笑んで…る?
「日比野君!文化祭を楽しもうね!」
女の子から聞き捨てならない台詞が飛ぶ
「…うん、よろしく」
それに対して日比野も返事を…はぁ?
なにそれ、なにそれ、なにそれ!!
私と言う許嫁がありながら、
他の子と文化祭を回る気!?
睨むような視線に気付いたのか、
日比野が私に目を向けて…
「柏木さん…すごい…」
いつもの無表情で続けて言う。
「正に〝鬼の形相〟って顔してる」
日比野…あなた本当に、
人を怒らせるのが上手いわ。
コメント
7件
柏木さんプロポーズするんですね!!かっこいいです✨✨ 日比野くんは人を怒らせる名人ですね😂 続き楽しみにしてます👀
まさか!こんな形で続きが読めるなんて!続編、楽しみにしています!!