テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第17話 〚増えた輪の中で〛(澪視点)
昼休みの教室は、
いつもより少しだけ、にぎやかだった。
えまとしおりが机をくっつけて話していて、
みさとは窓際で外を見ながら笑っている。
りあは、
その輪に自然に混ざっていた。
(……当たり前みたい)
少し前まで、
考えられなかった光景。
「澪、これ見て」
えまがノートを差し出してくる。
「ここ、意味分かんなくない?」
「……あ、ここはね」
説明しながら、
自分でも気づく。
私は今、
何も警戒していない。
未来も見ていない。
心臓も、静か。
ただ、
ここにいる。
「白石は?」
しおりがふと聞いた。
「今日は、先に図書室行くって」
みさとが答える。
「一人でも大丈夫そうだね」
その言葉に、
私は小さく頷いた。
湊は、
もう“守られる存在”じゃない。
自分で距離を選べる。
「ねえ澪」
りあが、少しだけ遠慮がちに声をかける。
「なんかさ……」
言葉を探してから、
続けた。
「今のクラス、前より安心しない?」
その一言で、
胸の奥がじんわりした。
「……うん」
本当は、
もっと前から気づいていた。
えま。
しおり。
みさと。
りあ。
湊。
そして——
少し離れた場所にいる、海翔。
誰も、
私を引っ張らない。
誰も、
決めつけない。
それぞれが、
自分の距離で、ここにいる。
(仲間が、増えた)
それは、
数の問題じゃない。
理解してくれる人が、
一人じゃなくなったということ。
教室の後ろで、
海翔がこちらを見ているのに気づく。
目が合うと、
何も言わずに視線を逸らした。
近づかない。
でも、離れない。
(……ありがとう)
心の中で、
そう思った。
心臓は、
相変わらず何も見せない。
でも、
不安じゃない。
未来が分からなくても、
一人じゃない。
それだけで、
今日をちゃんと歩ける。
私は、
仲間の輪の中で、
静かに息を整えた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!