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「 レウ 」
そう呼ばれた赤髪の背中が歩みを止める。
中性的な容姿に、低めで落ち着く声。
人々を心酔させる、聖母のような存在。
【 女神は失踪した 】
独特な文化や人々が集まる、日本でも有名なあの場所。
そこに、一つの噂があった。
「 全てを赦し、癒やしをくれる女神がいる 」
と。
汚れた者は立ち直り、その慈愛の深さで救われた者は、数百人に上ると言われている。
( そんなんじゃないけどな… )
流れてきた記事をスワイプしながら、レウはむず痒いような気分になる。
女神と言われる者の正体は、彼だった。
( 性別も違うし )
救いを求める者には手を差し伸べ、愛を求めるものには惜しみなく与える。
“ 女神 ” 。
いつしか、そう呼ばれるようになっていた。
はぁ、と短く息を吐き、スマホをポケットに入れる。
またその場所に向かいながら、空を見上げた。
くすんだ色の雲が、澄んだ青を覆い隠す。
太陽の気配も感じない。
だけど。
( …晴れそう )
なんとなく、そう思った。
「 ん゙… 」
ホテルの部屋電が鳴る音で目が覚める。
ゆっくりと体を起こし、あくびを一つ。
まだ重く感じる体を、引き摺るようにしてベッドから立ち上がった。
( どーせ時間とかだろうな )
そんな事を考えながら、鳴り響く電話を取った。
レウの予想は当たり、延長するか聞かれる。
「 あー… 」
まだベッドで眠っている男に視線を移し、少し悩んでから答えた。
「 1時間延長お願いします 」
男とホテルの前で別れ、その足でまたあの場所へ向かった。
指先がほんのりと染まる秋の朝方。
誰もいない歩道橋の上で、一人静かに息を吐いた。
( 雲一つ無いや )