テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
翌朝。私はいつもと違いすんなりと起きることができた。しかもまだアラームの鳴る前。自分でも驚いている。5:30だった。私は用意されていた朝ごはんを食べ、髪をセットし、制服に着替え、学校への準備を終えると学校へ向かった。辺りまだ少し暗かった。黄色のようなオレンジのような色だった。
私はトコトコと歩道を歩く。いつものように走っているのではなく。
数分歩くといつもの薄汚い茶色の壁色をした校舎が見えてきた。私は校舎一階の昇降口でスニーカーから上履きに履き替え部室へと向かった。
コンコン
私は部室のドアを二回ほどノックし、中へと入った。中には堀川さんがいた。でも寝ているのか中央にある丸テーブルの上に自分の腕を乗せその上に顔を乗せて「くぅ…くぅ…」と寝息をかいて眠っていた。彼の前には横にしておいてある黒いスマートフォンがあった。きっと堀川さんのものだろう。
「今日、朝日大我さんを乗用車で重症を負わせた疑いのある……」
スマホからはそんな音声が流れていた。私は気になり堀川さんのスマホの画面を覗いた。そこにはニュース映像が流れていた。私は近くでそれを見ることにした。
「今日、朝日大我さんを乗用車で重症を負わせた疑いのある角尾一子(つのおいちこ(60代)容疑者が逮捕されました。今現在捜査中ということですが現時点では過失運転致傷罪の疑いがかけられています。角尾容疑者は容疑を否認しているということです」
その画面には顔中にシワのある老けた白髪交じりの髪をした女性が映っていた。
「ふぁ〜…ああ日高さん。おはようございます」
私がスマホの画面を見ているとそばで寝ていた堀川さんが目を覚ました。
「すいません。昨日徹夜してたので眠気が…」
起きたもののまだ眠そうだった。
「いえいえ。そういえばこのニュースって…」
私は話題を変え堀川さんにそのニュースのことについて質問した。
「大我のあれね。容疑者はどうやら前科持ちらしい。この記事に書いてあった」
堀川さんはそういい自分のスマホを手渡した。それに映っていたのはとあるインタビュー記事だった。
「これって?」
「角尾のインタビュー記事。見てみるといいよ俺の貸すから」
「ありがとうございます」
私は堀川さんから借りたスマホでその記事を読むことにした。
ーーーーーー<記事>ーーーーーー
Q.なぜそのような犯行にいたったのか
角尾「私は傷害罪で逮捕されました。でも悔やんでいません。これは生きるために必要なことだったんです」
Q.必要の意味とは?
角尾「私が怪我を負わせた浜口さんは私を恨んでいました。仕事関係で。私は脚本家をしています。それで彼は突然、「角尾さんが俺の脚本をパクった!」と告発したのです。私は意味がわからない。きっと虚言癖。私はそれで彼をボコボコにしました」
Q.浜口さんとはどのような関係?
角尾「ただの仕事仲間です。去年までは付き合ってました。仲が良くて。でももう違います」
Q.元夫とは今どのような関係?
角尾「もう縁は切りました。浜口と付き合って私は清々しました」
Q.息子さんとは?
角尾「知りませんよ。もう死んだんじゃないですか(笑)?」
〜〜〜〜省略〜〜〜〜
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「ひどいですよね〜もう縁のない息子に対してそんな事言うかな?」
私が記事を読み終えたタイミングで堀川さんはそう言った。
「どんな脳してるのか…」
「うん…」
辺りからは生徒たちの騒がしい声が聞こえてきた。私と堀川さんは解散し、それぞれの教室へと向かった。校舎内はいつものように騒がしい。とくに男子。廊下を駆けたり怒られていたり…まあそれも日常だ。
キーンコーンカーンコーン
そうチャイムが鳴った頃には私はすでに教室の自分の席に座っていた。前の席にいるはずの鳥島の姿はなかった。
ガラガラガラ
そう教室の前のドアが開いた。その時点で鳥島ではないことをなんとなく私は分かっていた。
「おはよう。みんな」
強面で有名な担任の加藤先生が教室に入ってきてそう挨拶した。その途端騒々しかった教室はたちまち静かになった。
「ったく…鳥島はまだのようだな」
教卓に手を付けそう言い放つ。するとえんじ色のジャージを着た加藤先生は私の方にやって来た。
「日高はだいじょぶそうだな。謹慎はなしだな。お前らは一限目の準備をして黙ってろ!」
加藤先生はいつもの口の悪さでそう生徒たちを指示する。
「日高。このあと職員室へ来てくれ」
いかつい顔で私の名前を言う。その頼みに私は「はい」そう答えた。
その後何事もなく一限目を終えた。そして今朝加藤先生から言われた職員室へと足を運んだ。
コンコン
「失礼します。一年C組日高歌蓮です。加藤先生に呼ばれて来ました」
職員室のドア前でそう言うとすぐにえんじ色のジャージを着た加藤先生がやって来た。
「すまない。休み時間を奪ってしまって」
加藤先生らしくない話し方で私をとあるところへと案内する。
それらしきところへと到着する。そこは加藤先生のデスクだった。
「あ〜今朝、鳥島から連絡があってな。日高と電話をしたいと。まあとくに悪いことではない。今回は許可した。だからお前を呼んだんだ。まあ学校には来るはずだったんだが…その後親御さんと思われる方から連絡があったから欠席になった。まあともかく電話してくれ」
「ははあ」
私は言われるがまま加藤先生のデスクの上においてある受話器で鳥島に電話をかけた。
電話をかけると2秒もせずに彼は電話に出た。
「もしもし!」
その声は元気そうな活気のある感じがした。
「あの〜私だけど日高歌蓮」
「ありがとうございます!許可出たんですね。てっきりないかと思ってました」
「それで?」
私は電話を早く終わらせたいため関係ない話は無視した。
「あ〜そうだった。そうだった。放課後、星空公園に来れます?ちょっと話したいことがあるんです」
「いいけど…」
「じゃあお願いします!五時頃を目安に来てください!じゃあ失礼します」
そう言い鳥島は電話を切った。
星空公園とは私の家の近くにある小さな公園である。子供用の小さなすべり台と砂場、パンダの形をしたスプリング遊具があるくらいだ。ペンチもそこまで多くはない。木や屋根などがないため夏なんて地獄。どれも老朽化が進んで最近はどれも使用中止となっている。
そんな公園に鳥島は私に何のようだろうか。告白なんて言うほど親しくもなってないし両想いでもない。まあ向こうは片想いなのかも知れないが。私は加藤先生に「終わりました」そう告げ教室へと戻った。
コメント
2件
いいね!