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Pside
「…まず、」
試しに買った缶ビールは、口に合わないらしい、「いつものにしとけばよかった、」そう後悔しても口は苦い儘で、何処か背徳感がある、
時計はもう11時、彼は帰ってこないまま、
明るい声も、優しい温かさも、もう触れられないかもしれない、恐怖の欠片を抱えていると鍵の音が鳴った、
「ッぁ、あっきぃ…、」
玄関へ向かうと下を向いたあっきぃが居た、
「…どいて、」
「ぁ…、ごめん、」
低い声、そりゃそうだ、こんなに疲れた様子なんだもの、
通り過ぎた息の様子から、走って帰ってきたんだと分かる、
「喉乾いた、なんか出して、」
「分かった、」
まだ満ちている缶ビールを流しに置いて、冷蔵庫から炭酸飲料を取り出した、
「まだ、?」
「…ちょっと待って、」
飽和した冷気が流れ出て、頬を撫でてくるのが気持ちよくて、暫く呆けていた、
「はい、ど~ぞ、」
「ありがと、ぁ、お風呂沸いてる、?」
「…さっき沸いた、」
「じゃぁ、あとで入る、」
「ん、わかった、」
少し目尻が熱くなる、
こっちを向いてくれない、俺は必死に見つめてるのに、
しんどい、少し胸が痛い、配信でもしとけばよかったな、
「仕事、何したの、?」
「別に、お風呂入ってくる、」
「…わかった、」
服を強く握りしめて、ばれないように、ため息を吐く、
「いかないで」
なんて止めたら、きっと迷惑だ、
俺は呼吸の早さで、瞬きを繰り返した、
「…ぷ~のすけ、なんで泣いてんの、」
「ぇ…、?」
「だから、泣いてる、」
「ぁ…ぇ…、」
パジャマとバスタオルを抱え、洗面所に入る直前のあっきぃに言われ、頬に触れると、確かに雫が指先に零れた、
「やっ…ぅ…、(涙溢」
がんばって止めようと、色んなことを考えたけど、頭の中にはいつもあっきぃがいる、
愛情残量の少なさ、触れた温かさ、体を重ねた時の感覚、
全部が遠のいていて、怖くて、俺は今泣いているんだ、はっきり分かる、
嗚呼、止まらない、
「ごめ…、なんでもない…、(目抑」
「なんでもなく無いでしょ、」
「…ぁ、あっきぃ、?」
バスタオル、パジャマが落ちたと思うと、俺は抱き寄せられた、
「ごめんね、俺、いっぱい放置してたね、」
「……ふっ…うぅ゛…、ぁ゛~っ、(泣」
欲しかった温かさ、嬉しい筈なのに涙は溢れてくる、もう止まんないのかって思っちゃうくらいに、
でもいつもの涙よりは怖くない、
「大丈夫だよ、1人にさせて、しんどい思いさせて、ごめん、ごめんね、」
俺の頭に手を置き、片手は俺の腰に回し、
もう離れられないよう、ぎゅっと抱きしめられた、
「今度さ、事務所を絡めた大きな企画を、俺のチャンネルでやろうと思ってたんだ、」
「へ…ぇ…、」
「でも、強く当たっちゃって、自分の心も虐めて、彼女こんなにして、」
「ほんとだめだよなぁ…、ごめんね、」
涙声と言うには相応しすぎる声が耳元で静かに響く、
あっきぃの向こうに見える洗面所の明かりが、またぼやけてきた気がした、
俺は声を絞り出す、
「ごめん、人肌恋しい俺もダメだ、色々考えさせちゃったよね、ほんと、ごめん、」
「いいのヾ、ほら、涙拭って、」
「ん…、ありがと、」
あっきぃは目の前で微笑み、俺の頭を撫でてくれた、
「…へへ、笑」
「なあに、好きなの、?」
「ん~、あっきぃの方が好き、」
「なにそれ、笑」
多分、ビールのアルコールが回ってきたんだろう、度数にあまり目を通してなかったけど、強めだったとは思う、
「まじ、ごめんね、」
「はぁ…、いつまで謝ってんの、あっきぃは悪くない、」
「そうかなぁ…、」
俺は床に落としたバスタオルとパジャマを拾うあっきぃを上から眺めていた、
「…、」
まだ口は苦い、
「あっきぃ、」
「、?」
「ん、(接吻」
お口直しにはなった気がする、
ℯ𝓃𝒹
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…自分の癖、
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