「君なんて大嫌いだよ。」
僕はミファーにそう告げた。ミファーの事が”好き”というこの気持ちをこの世から消してしまえば、僕も君も少しは楽になれるだろ?
「そっか…。分かった。そうなんだね…」
酷く傷ついたように見えた。でも、それを押し殺すようにミファーは苦しそうに微笑んだ。
「貴方の気持ち…しっかり受け止めたから。」
ミファーは向こうへ行ってしまった。僕たち、これからどうなるんだろうね。
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あの日から、ミファーの様子が変だ。僕の事を避けているし、僕と目を合わせてくれないし、無理して笑っているように見える。
「 僕の行動は間違っていたのかい?やっぱりあの日、ミファーを傷つけてしまったのかい?教えてくれよ。」
僕は始まりの台地にある大きい女神像に話しかけるように言った。ここはもう、随分と使われてないし人だって来ない。僕は英傑になってから何かに悩んだりしたらここに来るようにしているんだ。
ミファーの幸せを願ってこそ言った言葉なのだけれど…それが彼女の心に大きな傷をつけてしまったようだ。自分が可笑しすぎて全く笑えない。
「ねぇ、本当に神様がいるならさミファーを笑顔にしておくれよ。」
僕は今まで思ってきた事の中から一つ選び、空を見上げて願った。
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「ミファー」
久しぶりに呼んだ彼女の名前。この4文字で僕の心が温まる。それは、姫やウルボザ、ダルケルそしてアイツも同じだろう。
「(僕、嫌いって言ったのにまだ未練あるんだな)」
なんともバカバカしくて自分にも聞こえないほどの鼻で笑った。
「な、なぁに?リーバルさん」
「ミファー、辛い??」
「えっ?」
「そんな事ないよ」
ミファーは微笑んだ。でも目が笑ってない。全くこのお姫様はすぐ無理をする…。
「……はぁ。」
「君って本当、嘘が下手だよねぇ。」
「う、嘘じゃn」
「じゃあ、なんで僕を避けようとするの?なんで僕と目を合わせないの?なんで無理して笑うの?」
ミファーの言葉を遮って少し強めの口調で聞いた。
言ってほしいんだ。ちゃんと、ちゃんと。自分の意見を言ってほしいんだ。君が苦しんでいるモノを悩んでいるモノを。僕は分かってるけど、彼女の口から聞きたいんだ。
「そ、それは……」
「ほら、今だって目を合わせてくれない。何?君。悩んでる事なら聞くよって言ってるんだけど。」
「えっと…リ………ん…が…」
「何?ちゃんと目を合わせて言ってくれない??全然聞こえないんだけど。」
「えっと…だから…リーバル…んが…私……嫌………」
「ねぇ。さっきから言ってるよね。ちゃんと目合わせて言ってくれない?って言ってるんだよ。君には耳ないわけ?君が何かを言っても僕に聞こえなかったら意味ないし、言ってないのと同じになるよ。ハッキリ言って時間の無駄。」
「あぅ…。ご、ごめんなさい…。」
「(しまった。泣かせてしまった…!)」
「ごめんなさい……!ごめんなさい……!」
「ええっと……。えっと…。ミファー、僕が100悪いから許してくれ…!僕の耳が遠かっただけだよ。ミファーは悪くない。ごめんね。」
言葉よりも先に体が動いてしまった。いつの間にか僕はミファーを抱きしめていた。
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「ふぅ…。」
「(や、やっと…泣き止んだ〜…)」
体の力が一気に抜ける。抱きしめていたミファーを落としそうになった。
ヒトを今まで泣かせたことがなかったから正直泣き止ませるのが大変だったけど、なんとか泣き止んでくれたようだ。
「その…。ミファーさっきはごめんね。強く言い過ぎた。」
「私の方こそごめんなさい。声が小さかったよね…。」
互いに謝ってから暫くしてミファーが口を開いた。
「その…。リーバルさんが私の事を嫌いって言った日ね。とても悲しかったの。」
「私ねリーバルさんの事、素直に尊敬してたの。」
「僕の事…??」
「うん!」
「リーバルさんは自分の意見をハッキリ言えて、自分にも他人にも厳しくて、酷い言い方をする時があるけどそれはリーバルさんなりの優しさで…。周りをよく見れて誰かがしんどい時はいち早く気づけて…。負けず嫌いで物凄い努力家で…私ねリーバルさんの良い所、沢山知ってるよ。」
「沢山知ってるからこそ、尊敬してるし大好きだよ!」
「リーバルさんがよく話しかけてくれて、沢山話を聞いてくれて。笑い合って……わざわざゾーラの里に来て、シドのお世話をしてくれて…。
だからね、嫌いって言われた時、ガシャン!!って何かが壊れる音がしたの。」
「しかも、その後からリンクと姫様も仲良くなって…私の入れる隙間がなくなって…ここ数日、人に合わせて生きてきた。」
「ミファー……。」
「今までごめんね。ミファー。ミファーが僕にそんな気持ちを抱いてくれているなんて嬉しいよ。その…僕も本当の事言うよ。」
「僕、ミファー、君の事好きなんだ。子供のように無邪気に笑っている君とか前を向いて一生懸命取り組む君が愛おしくて大好きなんだ。」
「だけど、君はアイツの事が好きだし、僕との距離が近くなって変なデマ流されるのも嫌だろうし、そもそも僕に好かれるのは迷惑かなって思って諦めるために嫌いって言ったんだよ。」
「そうなんだね。貴方が私の事を好いてくれている気持ち…!本当に嬉しいよ。数多くいる女性から私の事、好きになってくれてありがとう。」
「私もリーバルさんの事大好きだよ。ウルボザさんもダルケルさんも好き。リンクも姫様も!皆々大好き!」
「……。付き合ってほしい」
「えっ?」
「なーんて…」
「……。考えとくね。」
「え?? 」
「えっと…だから考えとくから!答えがでたら言うからそれまで待っててくれる?」
「もちろんさ。その時は迎えに行くよ。」
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焼け野原になった城下町で姫とアイツを見ていた。
「(倒してくれたんだな。厄災ガノンを。やっぱり君にはいつまでたっても勝てないな。)」
「リーバルさん」
聞き覚えのあるとても懐かしい声。振り返るとそこには僕が好きだったヒトが立っていた。
「ミファー!?ミファー!」
会いたかった。会いたかったんだ。ずっと、ずっと!
僕たちが死んだ時から”後悔”だけが頭をよぎっていた。護りたかったんだ。助けたかったんだ。助けたら、アイツの前に突き出して告白させたかった。また。彼女の太陽よりも眩しい笑顔が見たかったんだ。
「わっ…!!ちょっとリーバルさん
急に飛びついたら危ないよ〜笑」
「だって…!だって…!!」
「ほらほら〜泣かないよ!泣いたらリーバルさんのカッコイイ顔が台無しになっちゃうよ?」
ミファーはそう言いながら僕の涙を拭った。
「リーバルさん、百年前の話なんだけど、リーバルさんの告白の返事…今でもいいかな?」
「全然いいよ」
「リーバルさん、返事遅くなってごめんなさい。私、貴方の事が好き。」
「っ……!?!?」
「だから付き合おう。」
「だけどね…。もう私達は死んでしまった。もうそろそろで成仏してしまう…。だから!約束してほしいの!」
「何を?」
「来世でまた、出会う事ができたら!付き合って下さい!
例え、どんなに違う形で出会ったとしても追いかけたいし、追いかけられたいの。」
「絶対だからね。ミファー。」
「うん。絶対に」
体が透け始めた。成仏するんだ…。
「じゃあ、またね。リーバルさん。」
「あぁ。またね。僕の人生、君がいたから楽しかったよ。最後にまた君に出会えてよかった。」
「私も。リーバルさんと出会えて良かった。この世界に生まれて良かった。」
「ふふっ」
「ハハッ」
「ふふふっ/ハハハッ」
もうお別れの時間なのに可笑しくて笑ってしまう。ずっと独りで生きていた僕に温かい光が差し込むんだ。それはミファーの笑顔でどんどん温かくなっていって…。楽しくて最高な人生。
「「じゃあ」」
「「来世でね」」
僕たちは互いに抱きしめ合った。
そして初めてキスをした。柔らかい感触でゾワゾワしたけど、気持ちよくて…頭の中がフワフワした。
今日の空は快晴。そういえば、君と初めて会った時も女神像に祈った時も快晴だったな。
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各自の村の近くに置いてある神獣は主が居なくなり動かなくなってしまった。そしてまた百年後にガノンと戦うべく主と共に深い深い眠りについた。
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