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僕へのいじめは小学生の頃から始まったけど、ひどかったのは中学のとき。特に三年生になってからが一番ひどかった。僕が自殺を図ったのも三年生のときだった。
いじめの首謀者というか、一番僕を痛めつけたのは小山田圭吾という男だった。三年間僕と同じクラスで部活は軽音楽部に所属していた。背が高い上に、道行く女の子たちが思わず振り返るくらい顔もよかった。僕は音楽の世界に疎いけど、小山田は雑誌で天才作曲家と持ち上げられて、まだ中学生なのに先生たちの何倍も稼いでるって噂になっていた。
陰キャで無口でしかも友達がいなかったせいか、僕はそんなすごいやつに目をつけられて、いじめの標的に選ばれた。いじめは最初は暴力から始まって、次に呼び出されてお金を取られるようになって、最後は性的いじめが定番になった。
毎日のように軽音の部室に連れ込まれて裸にさせられて、机を縦二つ横二つの計四つ並べた上に足を開いて座らされて人前でオナニーさせられた。男子ばかりじゃなく女子も普通に見に来てた。
罰ゲームに利用されることも多かった。ジャンケンで負けた人が僕を射精させなければいけないんだ。なかなか射精しないと僕が怒鳴られたり殴られたりした。結局一番損してるのはいつも僕だった。気の弱い女子が罰ゲームをしなければいけなくなって泣き出したときは、泣きやむまで僕は裸で放置された。
三年生になって勝呂唯と同じクラスになった。勝呂さんはクラスの中で背の順に並べば女子の中でも一番前になるくらい小さな体だったけど、誰よりも勇気のある人で、軽音の部室に何度も乗り込んで僕を救い出した。先生や生徒会の力も借りてなんとかして僕へのいじめを止めようとしてくれた。
僕はこの地獄から救われるかもしれないと希望を持った。そしていつしか彼女を好きになっていた。おまえ勝呂唯が好きなんだろと小山田に聞かれたとき否定できなかった。
七月頃、勝呂さんの体育着が机の上に敷いてあって、ここに射精しろって言われたときは嫌だと言ってさすがに泣いてしまったけど、結局彼らの言いなりになるしかなかった。それからすぐに誰かが勝呂さんを呼びに行った。現れた勝呂さんは机の上に座る裸の僕と汚された体育着を軽蔑の眼差しで一瞥して、体育着だけを引っつかんで、走って部室を出ていった。
その日から勝呂さんは僕を助けるのをやめた。もう僕の味方はいなくなった。僕は完全に一人ぼっちになった。ショックだったけど、勝呂さんと出会う前に戻っただけと考えれば、少しは気も軽くなった。
夏休み前、うだるような暑い日が続いていた。僕は毎日冷房のない部室の中で汗をかきながら誰かの前でオナニーをしていた。自分が機械のように思えて、嫌だという気持ちも薄れてきていた。
ある日、観客もみんないなくなり僕も帰ろうとすると、部室の隅にある掃除用具入れに入ってろって小山田に言われた。また新しいいじめかなと思いながらその通りにした。当時の僕は徹底的に自尊心を破壊されて、いじめっ子の言いなりになるしかない、卑屈な存在になり果てていた。
掃除用具入れには目の前に横長の隙間があいていて、さっきまで僕がショーをやらされていた、机を四つ並べた即席ステージ周辺だけはなんとか見ることができた。
しばらくすると一人の小柄な女子生徒が部室に入ってきて、小山田の姿を見つけて照れ笑いを浮かべた。彼女はさっきまで僕がオナニーをやらされていた四つ並べた机を背にして立ち、まず靴と靴下を脱いだ。そして、正面に立つ小山田に見せつけるように黙って服を脱ぎだした。小山田も黙ってその様子を眺めている。僕の方からは小山田の後ろ姿しか見えないけど、僕をいたぶるときのようにニヤニヤと嫌らしく笑っているに違いない。彼女は照れ笑いを浮かべたまま、半袖のセーラー服を脱ぎ、スカートを脱ぎ、最後に上下お揃いの薄いピンク色の下着を脱いでいった。
下着まで全部脱いで彼女は机の上に仰向けに寝転がった。僕のいる掃除用具入れは彼女から見て真横にあり、彼女の全身が僕の目に入った。小柄な女の子だったけど足を伸ばすと机からはみだすから、両方の膝を開いて折り曲げることでなんとか机の上に収まっていた。
彼女は二つのまだ豊かとはいえない胸の膨らみも、まだほとんど毛の生えてない白く艷やかな下腹部も、すべて惜しげもなく小山田の前にさらけ出していた。
小山田は目で見るだけでなく、自分のものであることを確認するかのように、彼女の胸や下腹部を、両手を使って気ままに弄んだ。
僕は自分の裸を見られてばかりで、同年代の女子の裸なんて見たことも、もちろん触ったこともなかった。僕ができないことをいとも簡単にやってのける小山田圭吾という男に改めて嫉妬するしかなかった。
僕はいつも小山田に、大智は死ぬまで童貞だろうなと馬鹿にされていた。
でもそれもかわいそうだから、そのうちおれがいらなくなった女を譲ってやってもいいぜ。何年間もおれの性奴隷だった女と結婚させてやるよ。ただし、大智と結婚したあとも、おれに自由に抱かせること。礼はそれだけでいい。生まれてくる子どもはおれの子どもかもしれないけど、大智は一生懸命働いておれの子どもとおれの性奴隷を養うんだ――
小山田の言うとおりの未来になるのかなって当時は本気で怯えていた。
机の上で彼女は小山田の指で下腹部を乱暴にまさぐられている。だんだん気持ちよくなってきたのか、時折あえぎ声が聞こえるようになった。彼女はそれをごまかすように小山田に話しかけた。
「今日も勝又君をまたいじめたの?」
「いじめたくないのに、いじめずにはいられないんだ。おれはどうしようもない悪党かもしれない」
「あんなすごい曲を書ける人が悪い人のわけがないよ。君は心がちょっと弱いだけなんだ。君が自分自身の暴力性をコントロールできないというなら、私が君の暴力を止めてあげる。勝又君が私の体育着に精液をかけて汚したことがあったけど、あれは君がやらせたんだよね? 私は君のためにセックスもさせてあげてるし、裸の写真を撮りたいと言えば撮らせてあげたし、君の言うことに一度も逆らわないで今までなんでもやってあげた。大好きな君を救うためだと思って君に尽くしてきたのに、なんで私までそんなひどい目に遭わされなくちゃいけないの? なんか君のことが分からなくなって、あれ以来勝又君がいじめられていても見て見ぬ振りするようになった。今まで助けてくれた私が助けてくれなくなって、彼がどれだけ傷ついてるかって思うと申し訳ない気分になるよ。でも最近分かったんだ。あの体育着の一件は自分を救ってほしいって君が私に送ったSOSだったんだよね? 私はいじめを止めるのをやめちゃいけなかったんだ。こう見えて、私は将来学校の教師になろうと思ってるんだ。私は小山田君も勝又君も見捨てないよ。これからはまた君が彼をいじめてたら止めるつもり。そうしてもいいよね?」
「ああ。もしまたおれが大智をいじめてるのを見かけたら、唯の気が済むまで止めたらいいさ。でもたぶんあいつもう学校に来ないと思うから、止めたくても止めれないだろうけどな」
「え? どういうこと?」
「いや、なんでもない」
小山田は制服のズボンと派手なトランクスを脱ぎ捨て、自分の性器を彼女の性器の入口にあてがった。
小山田は四つ並べた机にぴったりくっつくように立ち、彼女の折り曲げた膝下辺りを両方の手で支えている。彼女は並べた机の上に仰向けに寝て、開いた膝を窮屈そうに折り曲げている。
「唯の処女をもらってやったのは四月だったよな。そろそろ少しは気持ちよくなってきたか?」
「全然。いつだって痛いよ。でもそれでいいんだ。だって小山田君は誰かが苦しむのを見るのが楽しいと言ってたよね。だからいじめがやめられないんだって。だったら私とセックスして私が痛がるのを見て心を軽くすればいいよ。そうすればほかの人をいじめることも減らせるよね?」
「ああ。最近、大智をいじめるのに飽きてきた気がするのは唯のおかげかもしれないな。じゃあいつもみたいにお願いしたら挿れてやるけど」
「ああ、あれね。唯は小山田君の奴隷です。言われたことに絶対逆らいません。だから唯のためにセックスして下さい」
「仕方ねえな」
「ああっ、痛っ!」
彼女は電流が流れたようにのけぞった。小山田が腰を突き出すたびに、彼女は痛い、痛いと顔をしかめた。一方、小山田はニヤニヤ笑いながらリズミカルに腰を振っている。さっき二人が言っていた通りだった。勝呂さんが苦しむほど小山田は歓ぶ。
ただし痛がってはいても嫌がってるわけではない。勝呂さんは自分から裸になって、セックスして下さいと自分からせがんで、小山田のおそらく相当使い込まれた汚い男性器を、まだ十四歳で未成熟な彼女の女性器の中に受け入れている。痛いに決まってる。
二人の関係は昨日今日からの関係ではなくて今年の四月からだという。今年の四月、僕は勝呂さんと初めて同じクラスになった。それから小山田たちにいじめられてるところを何度も助けてもらって、僕は勝呂さんに淡い恋心を抱いた。でも実は小山田はその四月に既に勝呂さんの処女を散らし、それからもずっと彼女の未成熟な肉体をむさぼり続けてきた。
でも勝呂さん本人は有名なミュージシャンの小山田の恋人になれたと浮かれて自分を見失っている。小山田は勝呂さんを恋人だなんて絶対に思っていないのに。(恋人だと思ってれば学校の部室なんかでセックスしないし、大事な恋人が裸でセックスする姿を僕に見せるわけもない)
いじめを見て何度も止めに入るほど正義感が強く、教師たちやクラスメートの信頼も厚い、僕の憧れだったクラス委員長の華奢な肉体が、小山田の心に渦巻く残酷な悪意を凝縮したような禍々しい性器によって蹂躙されている。小山田は音楽のみならず権謀術数を駆使して人を絶望させる天才だった。そんな彼にとって、勝呂さんのような自己犠牲の精神に富んだ無垢な善人を騙して傷つけて隷従させることは、赤子の手をひねるようにたやすいことだったに違いない。
十分ほどして小山田は勝呂さんのお腹の辺りに精液を撒き散らした。
「そういえば大智の精液で汚された体育着はどうしたんだ?」
「気持ち悪いからとっくに捨てたよ」
「今までさんざんおれの精液で自分の体を汚されてきたのは平気で、たった一回あいつの精液で体育着を汚されるのはダメなのか? かわいそうに。大智は唯のことが好きなんだぜ」
「そんなこと言われても……。勝又君はいじめられてかわいそうだと思うだけで、私が好きなのは小山田君だけだから」
「同じ机の上で、唯はセックスすることで、大智はオナニーすることで、おれを歓ばしてる。おまえら似たもの同士だと思うけどな」
「全然違うよ!」
「さっき〈唯は小山田君の奴隷です。言われたことに絶対逆らいません〉って言ったばかりだよな。あれは嘘だったのか」
「そうだったね。嘘じゃないです。私と勝又君は似たもの同士です。これからも勝又君と二人で小山田君を歓ばせ続けます」
「それでいい。いつだっておれの言うことは絶対だ。おれが唯に大智とつきあえと言ったら大智とつきあって、大智とセックスしろと言ったらセックスするんだ。分かったな」
「約束します」
「じゃあご褒美だ」
「痛い!」
また二人のセックスが始まった。でも僕の目も耳ももう機能していなかった。僕の心は完全に壊れてしまっていたんだと思う。
僕は完膚なきままに叩きのめされていた。僕はオナニーか罰ゲームでしか射精したことがないのに、小山田は僕のあこがれの勝呂さんの性器を日常的に使用して、彼特有のどこにも愛の感じられない性欲とサディスティックな感情を十分に発散させた上で射精している。しかも勝呂さんにお願いされて仕方なくセックスしてやるんだと言わんばかりに――
僕のただ一つの希望だった勝呂さんが僕と同じように(いや彼女自ら小山田の奴隷だと認めているくらいだから僕よりひどく?)扱われているのを見て、僕はもう絶対に小山田には勝てないんだと思い知った。
そのあとどうやってうちまで帰ったかも覚えてない。
その日の夜、帰宅した僕は自分の部屋で首を吊った。もう少し発見が遅れたら後遺症が残ったらしい。でも僕は無傷で生き残った。精神的なダメージが強すぎて、三ヶ月くらい登校できなかったけど、その程度で済んで運がよかったと思うことにした。
勝呂さんはきっと小山田とセックスしてるのを僕に見られたことを知らないんだと思う。知ってたらうちに来られないと思うから。僕が自殺を図ったのは勝呂さんが僕を助けてくれなくなったことを悲観したからじゃない、当時の僕の唯一の希望だった勝呂さんまでもがいじめ加害者の小山田に奪われて、世界のすべてに絶望してしまったからだ。
小山田が自分と勝呂さんとのセックス(セックスというより一方的な虐待に近いけど)を僕に見せつけたのは、おれはおまえの好きな女を奴隷のように扱うことができるんだぜって自慢したかったわけじゃなくて、僕の生きる希望を根こそぎ奪って僕を生ける屍のようにして奴隷をもう一人増やそうとしたんじゃないかって、だいぶあとになってから気がついた。
でも僕が、生ける屍を通り越して完全な屍になろうと自殺を図ったことで、僕の両親がいじめを放置した学校に抗議したりと大騒ぎになったから、その計画は一旦ボツになったんだろうね。
僕はさっきの勝呂さんの話を聞いて、七年経った今も彼女はまだ小山田との関係を断ち切れてないって確信した。
「もし君があの頃のことを引きずって七年経った今も一人ぼっちで苦しんでいたんだとしたら、私は――」
って勝呂さんが言い出したのを詩音さんは覚えているかな? 彼女はきっと、僕が今不幸だとしたらそれは全部自分のせいだから、自分が僕の恋人になってでも僕が立ち直る手助けがしたいって提案するつもりだったんだと思うよ。もちろん、そう言わせたのはきっと小山田。有名ミュージシャンの小山田にとって勝呂さんは利用するだけ利用してあとはポイ捨てするだけの存在なんだと思う。自分が七年間遊び尽くした勝呂さんを僕に押しつけようとしたか、自分の奴隷である勝呂さんに夢中になった僕を見て馬鹿にしようと思ったか、そのどっちかだと思う。
詩音さんは僕の考えすぎだって笑うかもしれないけど、蛇みたいに嫌らしい、人の心なんてどっかに置いてきたようなやつなんだよ、小山田圭吾という男は。
もし小山田がまた僕に何かしてこようとしてるなら、きっと僕の婚約者である君を狙ってくるんじゃないかと心配してる。油断しないで注意してほしい。もし何か気づいたことがあれば、すぐに僕に知らせてほしい。
僕はもう七年前の僕じゃない。愛する人のために命を懸けて戦えるくらいには強くなってると僕は信じる。
クリスマスイブに私と過ごす男は斉藤大輔になった。大輔のたっての希望だと礼央に言われたけど、私のたっての希望は聞いてもらえないのかと正直不満だった。
大輔は二年後輩組で私が童貞をもらってあげた四人のうちの一人。紳士だとは思う。でも竜星や礼央と比べるとどうしても物足りない。でも、
「あの、もし姫が年に一度のクリスマスイブのデートの相手がおれなんかじゃ満足できないと言うなら、ほかのやつと代わってもいいですから」
なんて言われると、じゃあそうしてとはとても言えない。
デートは楽しかった。おいしいものを食べさせてくれて、夜の観覧車から見える花火は最高のサプライズだった。プレゼントももらった。おれの部屋に行ってから見てほしいと言われたから、思わず、
「今すぐ君の部屋に飛んでいきたいな」
とせがんでしまった。大輔の思うつぼだったんだろうけど。
大輔の部屋に来るのは三日ぶり。そのときのデートの相手は井原元気だった。大輔と同じく私が初体験の相手を務めた男。元気はお酒が好きなのはいいけど、飲みぐせが悪かった。
その日も私とのデートそっちのけで自分だけ酔っ払い、ときどき大声を上げていた。部屋に着いたあとも、二年後輩組のくせに避妊具を使わなかった上に、危険日なのに三回も中出しされた。行為中は妊娠したら結婚するって言ってたくせに、性欲処理して気が済んだら、
「妊娠したら結婚? なんでおれがおまえみたいなヤリ便所の面倒を死ぬまで見なくちゃいけねえんだ? そのときは言え。堕ろす金くらいなら恵んでやるから」
と暴言を吐かれた。そのことに文句を言うと逆ギレされてさらにひどいことを言われたから流星に連絡したら、流星、礼央、それに一年後輩組の五人の計七人で乗り込んできて、元気を手際よく連行していった。
流星は緊急用の経口避妊薬を私に飲ませて、そのあとのデートは礼央に引き継がれた。嫌な思い出が一転して幸せな思い出に変わった。だからあれはあれでよかったと思ってる。
大輔のプレゼントはお揃いのピアス。
「でも私、ピアスしたことないし、耳に穴もあけてないよ」
「だからだよ。姫の最初のピアスはぜひおれとお揃いにしてほしくてさ」
「うれしいこと言ってくれるね」
私は自分から大輔にキスをした。大輔の手が私の服を脱がしにかかる――
そのとき呼び鈴が鳴った。というか連打されている。
「おい開けろ!」
元気の声だった。たった一言聞いただけで相当酔っ払っているのが分かる。
「応援を呼ぶよ」
「でも玄関前で騒がれたら近所迷惑だよ」
「それもそうだね」
大輔はファミリーの誰かに電話して事情を話し、その足で玄関に向かってドアを開けた。元気が大輔のそばをすり抜けて、私に向かって突進してくる。大輔はラグビーみたいなタックルを背後からして元気を止めた。
クリスマスイブになぜこんなことに? まるで現実感のない映画を見てる気分だった。でもこれは映画なんかではなく、紛れもなく現実だった。
「おれはファミリーから追い出されたから、もう何言ったっていいんだ!」
大輔は元気に覆いかぶさって動きを止めているけど、口まではどうしようもなかった。
「おい、やめろ!」
「姫、姫ってチヤホヤされて楽しかったか? ファミリーの誰もあんたを一番の彼女だなんて思ってねえってのにさ。流星さんも礼央さんも今頃本命の彼女とデート中さ。あんたなんて誰だって、ヤリ部屋でヤラれるだけの女だとしか思ってねえよ。同じ大学の先輩にも交際を申し込まれてるんだろ? あんたにヤリ飽きたら、そいつにあんたを押しつけて終わりにするつもりなんだぜ。ファミリーの上の連中は」
「元気、やめろ! そんなこと言って誰が得するんだよ!」
「姫さんさあ、それからおれたち十二人全員高校生だぜ。あんたは十二人の高校生に性欲解消のおもちゃにされていたわけ。でも知ってるぜ。道徳的に間違ってるのはおれたちだけど、法的に間違ってるのはあんたの方だってことをさ」
「本当なの?」
と大輔に聞くと、
「すいませんでした」
と絶望的な反応が返ってきた。
「姫さん、ほかのやつはみんなあんたに感謝してるから、あんたが困るようなことはしないと思うけどさ、ファミリーをクビになったおれは違うぜ。これからはおれだけの女になれよ。そしたら黙ってておいてやる」
「元気! おまえだって詩音さんには世話になっただろ? そんな言い方失礼だ!」
「偽善者かよ。さんざんサセ子として利用しといて、今さら失礼とか笑わせんなっての!」
人間って本当に悲しいときは涙なんて出ないんだなって思った。姫、姫とチヤホヤされていい気になって、実際は〈サセ子〉で〈ヤリ部屋でヤラれるだけの女〉でしかなかった。
私は騙されていたのだけど、騙されてるのでは? と感じたことは今まで何度もあった。
それにしても十二人全員が高校生? 流星と礼央が三年生。一年後輩組の五人が二年生。二年生後輩組の五人が一年生か。社会人の集まりにしては年齢層が狭い範囲に集中してるから変だなとは思った。
彼らが移動に自家用車を使わなかったのも、まだ誰も普通免許を取れる年齢になってなかったからだった。三年生の流星と礼央の誕生日は一月。つまり現時点で全員十八歳未満。
十八歳未満の児童一人と性交しただけでも犯罪なのに、私の場合十二人? 発覚したらけっこうな大ニュースとして報道されるのではないだろうか?
「私、帰るね。もうあなたたちの顔も見たくない」
「これタクシー代に使って下さい」
大輔が一万円札を差し出した。そうだった。彼らはみんなお金持ちだった。今まで私とのデートに、合計するといくら使わせたのだろう? 見当もつかない。
でもこれはこれで金持ちの道楽と考えれば十分アリかもしれない。高校生十二人でうぶな女子大生一人をシェアして、かわりばんこにセックスを楽しむ。実際、彼らは楽しかっただろうなと思う。
彼らは原則として私に何か無理強いすることはなかった。愛と言葉とお金とセックスにつられて、私が自分から彼らの思い通りになる道を選択しただけだ。
結局、一番悪いのは私。だからこの後始末も私一人でしなければいけないのだろう。
大輔が渡してきた一万円札は受け取らなかった。ほかのメンバーが来る前に立ち去ることしか頭になかった。
「詩音さん、元気のことは心配しないで下さい。詩音さんが困るようなことは絶対にさせませんから」
当の元気は酔いが回ったのかぐうすかと大いびきをかいて眠っていた。いい気なものだ。いやもう何もかもどうでもいい。
「ありがとう」
私は一度も振り返ることなく部屋を出て、そのまま夜の闇を切り裂くように進んでいく。一年に一度の聖なる夜に、私は一人ぼっちになった。