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耀聖(ようせい)
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耀聖(ようせい)
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【とある軍事会社】
研究所の所長から紹介されたグレイスは、周囲の目を気にしながら、軍事会社の敷居をまたぐ——。
「これは……現状を打破するためだ!」
何もかも行き詰まっているグレイスは、突破口を欲していた。
足掻くこと自体は悪いことではない。
だが――これは完全に悪手だった。
「こちらでお待ちください」
受付に案内され、小さな会議室に通される。
程なくすると、品の良いスーツを纏った初老の男が現れる。
「失礼するよ……」
「……」
柔らかい物腰とは裏腹に、獰猛な獣のような鈍く光る眼光を向けられる。
あまりの迫力に、グレイスは息を呑んだ——。
「グレイス君だね、話を聞かせてもらおうか――」
野太く枯れた声は、グレイスを怯ませるには十分だった。
裏社会を生き抜いてきた者だけが持つ、独特の雰囲気。
グレイスは、只者ではないと否応なしに理解させられた。
「……とある人物を始末してほしい」
「……悪いが、そのような依頼の場合、一見さんはお断りしている」
この世界は信用で成り立っている。
招待状があったとしても、若造のグレイスを簡単に信用するはずもない——。
目を細め、その奥には殺意すら滲んでいた。
「分かった。話題を変えよう。ディスティアの無人戦艦の情報が欲しい」
「そう、それがいい、そのオーダーだったら受けるよ」
最初にハードルの高いオーダーを出し、相手の反応を見ていたのだ。
初めての依頼としては、まずまずなのだろう。
眼光は鋭いままだが、少し前のめりになり話を聞く姿勢を見せた。
「ほしい情報は、人間の脳と戦艦を繋ぐ技術だけが欲しい」
「分かった、何か掴んだら連絡する。最初から言っておくが、情報料は最低三桁だぞ」
「ああ、問題ない」
これでひとまず話は済んだ。
まず間違いなく、反星団側に協力を求める事になるだろう。
何せ、アーレイが危険な技術を全てを封印した為だ。
「俺の勘だと、仕込みが必要になるはずだ」
「時間がかかるという事だな、承知した」
これで研究が進むかもしれない。
だが今ここで表情を崩す訳にはいかない。
緊張した面持ちを崩さずに、グレイスは立ち上がるのだった——。
※※※※※※
【クーン艦隊司令本部】
ここ数年、小競り合いはあったが、国家間の戦争は無く、司令本部内にもまったりとした空気が流れている。
「提督、この報告書を見てください。少々きな臭いですよ」
呼び止められたルドルフ。
その平和な日常に、ピリッとする情報がもたらされる――。
「んっ、どうした」
赤い髪の強面ルドルフは、暇なのか、腑抜けた顔をしたまま報告書に目を通した。
すると――。
<廃棄された自爆戦艦の、基幹ユニットが所在不明>
「うわぁ、こりゃヤバいな」
そして副官は、付近を航行した船のログを合わせて提示する。
「付近を航行した怪しい船籍を洗ったら、元コンドラト派が使っていた船と判明しました」
「アイツらも懲りないな、とりあえずアーレイに回せ」
そしてその情報は即座にアーレイの元に送られた……。
その五分後——。
<非武装化してあるサイレントアサシンを情報収集用に改修して、情報収集にあたれ>
「相変わらずの決断の速さですね……」
「……ああ」
早すぎる決断に、舌を巻く司令官達——。
自分たちが平和に慣れきっていたことを、改めて実感するのだった……。
※※※※※※
【数週間後・Fクラス教室】
冬休みが近づき、期末試験が始まる。
「はぁ〜もう期末テストかぁぁぁ」
猛勉強したサラは、自信ありげだ――。
「D判定以上が取れれば、来春はクラス替えだ。さぁ頑張ろう!」
夏休みに痛い目にあったサラのヤル気は本物だ。
「サラのやる気は凄いな、負けられないわ」
彼女が活躍した事で「努力すれば報われる」という雰囲気に、Fクラスは変わっていた。
全員では無いが以前に比べ、前を向いている——。
「それでは始め!」
教師も意気込みを感じたのか、溜息を吐くことはない。
頑張れと言わんばかり、号令を出していた——。
※※※※※※
【ウルフの自室】
特待生は皆と同じ寮生活だが、護衛、侍女などの多くの従者を帯同する関係で、セキュリテイーが高く、部屋も広い――。
「……テストが終わった……あの件を再開するか……」
期末テストが終わりを迎え、一安心しているウルフ——。
時間ができたことで懸案だったサラの調査を再開する。
そして、護衛の一人に指示を出した数日後——。
「やはり、サラは放課後、王族控室に出入りしていました」
「まぁ仲が良いから入れたんだろ」
お茶会の時、クーンの王族たちとの触れ合いを見て、親密な関係だと理解している。
当然、控室に招かれることもある。
なので、決定的な証拠にはならない——。
「いえ、実は——」
周りに聞かれたく無いのか、護衛の男はウルフに耳打ちをする——。
「控え室に入る際に、軍用ステルス装置を使っています」
「なんだと、やはり彼女は、平民ではないな……」
答え合わせは簡単だった——。
クーン国王は、アーレイワークス社の創業者だ。
その軍用装備をサラが使える立場となれば、ただの貴族ではない。
(となれば、王族に限りなく近い人物なのか……)
セシリア、ジェフに続き、ウルフはサラの秘密に辿り着こうとしていた……。
※※※※※※
【Fクラス・教室】
「さあ諸君、結果発表だ!」
期末試験の結果は、今回も掲示板に大々的に張り出される。
「ヤバいヤバい、晒されてしまう」
Aクラスなら、自信を持って待ち構えるだろうが、成績が振るわないFクラスは、完全に二手に分かれていた。
諦め顔をする者。
はたまた、希望に満ちた笑顔でその時を静かに待つ者。
そして、手元のタブレットを皆一様に凝視している——。
「ああ、もう、どうしよう〜」
ドギマギしながら、心配そうな顔をするのは——勿論サラだ。
見たい、けど見たくない、どっちつかずの彼女は、目を瞑り、発表の時を待っていた——。
「それでは、公表します」
「わっ!C……C判定だ!」
自分の名前を探すと、予想していたDではなく——Cグループにあった。
順位も100位と、Cグループ内でも上位に食い込んでいる。
来春のクラス替えは決定だ。
「く〜、努力が実った!」
予想を超えた結果に、サラはニタニタと王女らしからぬ笑顔を浮かべる。
そして——。
「ええ〜サラさん、いなくなっちゃうの!」
「マジで、Cって凄くない!」
自分の結果を見て落ち着いたクラスメイトたちは、今度はこのクラスで誰が一番なのかを探し始める。
結果、ダントツだったのはサラ。
祝福と惜しむ声、その両方が教室内を埋め尽くす。
「うん、みんなありがとう。クラスが変わっても友達だからね!」
入学直後はどんよりとした雰囲気だったFクラスも、サラの活躍で前を向く大切さを知った。
気が付けば、ほとんどのクラスメイトがサラの周りを埋め尽くしている。
「人を惹きつける力か……サラは向日葵のようだな」
担任の教師は、クラスメイトに囲まれ、屈託のない笑顔を見せるサラを眺めながら、静かに呟いた――。
コメント
1件
おお、これはまた深い回だったね。グレイスの“悪手”感がひしひし伝わってきて、あの初老の男の眼光の描写とかガチで怖かったわ。一方でサラがC判定まで上げたのは素直に嬉しいし、努力が報われる展開は気持ちいい。ウルフが軍用ステルス装置に気づいたところで「やっぱりそう来たか」ってなった。伏線がじわじわ回収されてきて、次が楽しみすぎる🔥