―数日前―
朝日が上って,今日も大嫌いな一日がはじまった。朝から口喧嘩をしている両親を尻目に見ながら,朝ごはんを用意してもそもそと食べていた。朝から口論を聞くのにはもう慣れてはいたが,時々キツくなる。ヒステリックな母親の声。それに被せるように聞こえる父親の怒りが混ざった声。どちらも大嫌いな音だった。
「いってきまーす…」
今日も返事は無く,慣れたことだと受け流して学校に向かった。
「萩花ちゃんおはよぉ」
甘ったるいような,どこかうざったらしく聞こえてしまう声色。高校に入って席が近かったため仲良くなった子だった。はじめは友達が出来て嬉しかったが,最近はなんだかその子のことが苦手になってきていた。でも,そんなこと言うと彼女が傷つく。私は本音を隠して今日も「おはよう」と返す。
基本的に私は1人で生活している。学校の休み時間も,家に帰っても。すぐに自分の部屋に引きこもって日々を過ごしている。特に誰かと話をしないため,コミュ力は0だがそんなに気にしていない。話したい子とは話せているし,誰かとめちゃくちゃ話したいのかと聞かれたら別にそこまでではないと答えるだろう。それぐらいだった。
1人だから,誰かから相談を受けることもない。誰かに優しい言葉をかけることもない。だから,今まで感じてきた『偽善者』という自分を騙すことが出来ていた。だが,誰ともあまり話さないということの辛いことは自分の悩みを周りに相談できないところだ。辛い。キツい。もうやだ。そう思ってもどうにもすることができない。だから私は一人でいる。自分の感情を出さないように。溢れ出しそうな気持ちをこらえるために。
そう決意しながら,今日も一日を終える。ネットの書き込みを見ながら,世界にはこんなに辛い子がいるんだから,死にたいとか思っちゃダメだ。そう思いながら今日も息をするように死にたいと思い,そう思う自分を嫌いになる。こんな毎日。逃げ出してしまいたい…そっか,こんなに辛い思いをする環境なんかいたらダメだ。
そう思ってからの行動は早かった。今まで貯めてきた貯金を全部財布に突っ込み,最低限の荷物をカバンに入れた。置き手紙を書いて,机の上に置き,ふと思いついて小型カメラを部屋全体が見れるように固定して,スマホで見れるようにした。そして家の中が寝静まったのを確認して,こっそりと家を出た。
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