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……田原さん、正直でいい人だった。今から何人も会うなら彼ともう一度会った方がいいのでは?だけど、2回目会うとやっぱり違うと思った時に今より気まずい。
こんな一瞬で結婚相手、一生の人を決められないよ。難しいな、婚活って。
田原さんが話やすかったとはいえ、初対面の男性と会うのは疲れる。気を張っていたのかお腹が空いてきた。何食べよう。帰り道にある飲食店に目をやる。うーん……どれも気分じゃないなぁ。
行きつけのスーパーに寄って何か買うことにした。ちょっとしたものでも作るか。サラダは総菜で、ペンネでいいか。あと、何か甘いものも買おう。一人勝手に選んで食事にするのも悪くないと思う。ずっと今の年でいられるなら。周りも変わらなければ。気軽に会える誰かがいれば。
現実だよなぁ。これが。
「美味しいな、これ。スーパーのスイーツも侮れない」
コーヒーも美味しい。
でもさ、この前さ、広睦くんが笑顔で買ってきてくれたアイスコーヒーの方が何倍も美味しかった。
ああ、そう言えばさっき田原さんと飲んだコーヒーだって、広睦くんが買ってくれたコーヒーと同じものなのに。どうしよう。田原さんとの2回目は私に委ねられていて、彼じゃなくてもほかの誰かと会うくらいの事はしなきゃならない。
時は止まってくれないし、周りも時は流れているのだから。
スマホを持っては置いて、置いてはまた持った。ああ、どうしよう。結局スマホを置くと何もしないことを決めた。今日は何もしない。一先ず今日は何もしなかったわけじゃないんだから。
そう自分に言い聞かせた。
「タイパ悪いな、私……。仕事なら出来ない奴だよ」
答えの出ないことを一人でしなきゃならないというのは苦しい。
ふと思い立って友達に連絡してみることにした。
大学時代からの友人、昌代、仁香、希美のグループトークにメッセージを送った。
『今日初めてマチアプの人と会ったよ。なんだかもやもやしてしまって話聞いて欲しい』
素直に心境を送るとすぐに既読がついた。
『会おうよ』
仁香が返事をくれて、昌代、仁香と翌日すぐ会社帰りに会うことになった。希美は夜は出られないということだった。
「すぐに集まれちゃうのが独身のいいとこだよね」
昌代がお店に着くなりそう言った。
「そうだよー、メッセージ来て翌日には集まれるって、ちょっと笑っちゃったもん。お店の予約ありがと、昌代」
「いーよ。平日だし直ぐ取れたよ、ちょっとお酒も飲みたいし、色々食べたいでしょ」
昌代は創作料理の店を予約してくれていた。席に仕切りもあってゆっくり話せそうだ。
私がマチアプで出会った田原さんの事、その後の心境、そんなのを取りとめもなく聞いてもらった。
「婚活で受ける洗礼と、婚活が長くなると陥りやすい荒みとね。わかるよー、どっちも、最初は期待しちゃうし気を使うからがっかりしても言葉を選ぶけど、そのうち流れ作業の目視みたいになって、そのうちいいなと思う人全滅して手の内なくなって、30歳も年上の人から声かかって落ち込んだり、もう何してんだろうってなるのよ」
「へえー」
仁香が説明すると昌代は苦笑いした。
「婚活は色々精神も時間も削がれるし、いつまで続くかわからないでしょ。ゴールがあるかないかさえわからないから、辛いんだよ。ね、だから戦友見つけるんでしょ、春美。この戦友もライバルになったり誰かがいち抜けしたものなら嫉妬の嵐で大変よ」
「はあ、聞いただけで疲れちゃう。ね、結婚ってそうまでしなきゃ出来ない事なのかな」
「それね、思うよね」
仁香も私も大きなため息を吐いた。
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瑠璃🍫✨💭ྀི
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「結婚て中学とか高校みたいに、その年になればみんなが普通に行くものだと思っていて、そこに自分だけ行けないジレンマが苦しいんだよね。そこで、私はいいやって思えたらいいんだけど。焦れば焦るほど執着になって余計上手くいかないことはわかってるんだけど、未来のために今足掻くしかないんだよねぇ」
「ほんと、そうだね。私はまだ二人が独身でいることにホッとしてる。そういう自分も嫌だよ」
「はは、わかるよ、春美。一緒、一緒。私はさ、ちょっとしんどさのピーク越えて、この前会った時より楽かも。諦めたより開き直った感じ。なるようにしかならないし。なんだかさ、一生の相手を選んでいるのに、流れ作業みたいに相手を見繕って軽視してるのが矛盾してるなって思って。一番本気で関係を気づかないといけない相手のはずなのに、こんなんでいいのかなって」
仁香が経験済みの感情を吐露する。
「確かにね。けど、この人って相手に出会えたらそこからはじっくり、ねえ? 」
「そうだね。ゆっくりも出来ないけど、荒まないようには頑張るよ」
確かに仁香は前回会った時ほど張り詰めた感じはなくなっていた。辛かったんだろうな、仁香も。
「ところで、春美。あの年下の子はどうなったの」
不意に聞かれ、ビクっと飛び上がってしまい、二人が微妙な顔で顔を見合わせた。
「ああ、まあね。沼だもんね」
「沼だねぇ」
「……実は付き合うことになったの」
「「えええええ」」
二人の声に半個室とはいえ、咎める。
「静かに、聞いて。向こうが納得する手段として。私に相手が出来るまでって」
「ほお」
「詳しく」
二人は声のトーンを下げ、私に顔を近づけた。二人の顔に促されるまま、事の詳細を話した。割り切って付き合っている――と。
コメント
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みぃだよ🤍🥀 今回、春美の心の揺れがすごく伝わってきた。スーパーのスイーツ食べながら「広睦くんが買ってきてくれたアイスコーヒーの方が何倍も美味しかった」って思うとこ、切なかったな。まだ彼のこと引きずってるのに、自分に「今日は何もしない」って言い聞かせる姿がリアルで。 でも最後、友達に打ち明けて「付き合うことになった」って言った瞬間の「えええ」には笑った。沼って言葉がぴったりすぎる。次が気になる🌙