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突然の激闘の後、森の静寂が戻った。 褐色の少女は菌糸包帯に腕をくるまれたまま、じぃっと俺とリバを見ていた。
リバは改めて少女の前に立ち、ぴしっと名乗る。
「わたしはリバ・カーン!モルグ様と冒険の旅をしている剣士。そしてお前は誰だ?」
少女はふん、と鼻を鳴らす。
「オレの名はザラ。北の山岳から来た、族長の娘さ。この森に珍しいモンスターがいると聞いて、狩りに来たんだ」
リバが驚いた顔でモルグを見る。
「山岳の族長の娘!? どうりで強いはずです……!」
俺はザラの腕を指差しながら、ちょっと笑う。
「それにしても、倒した相手にすぐ懐く奴って珍しいなぁ。まさか俺も“食用”で狙われるとは思わなかった。」
「お前、本当にキノコなのか?――菌糸の剣とか、あんなん初めてだ。 よかったらもう一度見せてくれ!」
リバがぴしゃりと割って入る。
「それ以上、モルグ様に無体を強いるなら私が相手です!」
ザラは急に屈託のない笑顔になって頷く。
「気に入ったぞ!お前ら、弱いかと思ったら意外と面白い。 なあ、また一緒に狩りでもしないか?」
俺はちらっとリバを見て、小声で囁く。
「悪いやつではない……のか?」
リバは少し警戒しつつも、まんざらでもなさそうに言った。
「むしろ私たちに興味を持っただけでしょう。警戒は必要ですが……」
ザラがズカズカと俺とリバの間に割り込んでくる。
「それでどうだ?これから街に戻るなら、途中までついていっていいか? 異国の飯もうまいって話だしよ!」
リバがすかさず同意する前に、俺が一言。
「まあ……今晩は飯くらい奢るよ。討伐依頼は君のおかげで空振りだったしな」
ザラはぱっと顔を輝かせ、満面の笑み。
「決まりだな!お前ら、おもしれぇやつらだ」
そのまま三人で森を抜け、村への帰路につく。
途中ザラは子供みたいに野イチゴを摘み、木の枝で遊び、 リバに「無駄なことばかり」と呆れられながらも盛り上がる。
村に戻ると、リバが口を尖らせて俺にささやく。
「……正直、敵ではありませんが、少しだけ……やきもち、かも」
「へぇ、リバでもそういうことあるんだな」
リバは頬を膨らませ、でもすぐに笑った。
「仲間が増えるのは悪くありません。でも、モルグ様が“一番”でいてくだされば、それで充分です」
俺は頭をかきながら、少しだけ照れくさい気持ちになった。
その夜――
村の安酒場で三人並んでグラスを掲げた。
「じゃあ、ザラ。変わり者同士、よろしくな」 「へへっ、こちらこそ!」
みんなで冒険の話や夢を語り合う。
新しい仲間の予感が、あたたかく胸に広がった。