テラーノベル
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瓦礫の向こうに、崩れた観覧車の残骸。
夢の国の象徴だった城も、いまや歪んだ鋼の屑と化している。
沈黙の中、海を見下ろす防波堤にひとり立つ男――
黒いコート、眼鏡、手には折れた懐中時計。
神奈川:……派手にやられたな、千葉。これが“夢を現実にした”者の末路か。
風に靡くスカーフが、灰を巻き上げる。
彼の足元には、崩れたレールとピエロの仮面。
神奈川はそれを拾い、じっと見つめ――そして、フッと皮肉めいた笑みをこぼす。
神奈川 : あいつの“夢”は、割と嫌いじゃなかったけどな……まあ、現実にしようとした時点で負けだ。
ザリッ……ザリッ……
瓦礫を蹴りながら現れるのは、腕を組んだ泥まみれの男。
額には汗、制服は破れ、しかしその眼は真っすぐだ。
埼玉:……おい、てめぇ……さっきから、何ぬけぬけと抜かしてんだよ。
神奈川は視線だけを向け、答える。
神奈川:皮肉だよ。分かってるさ。俺たちが守れなかった隣人の骸に、線香代わりの言葉を手向けただけだ。
激昂。
埼玉:あいつがどんな気持ちで“夢”見たと思ってんだ!……“誰か喜ぶ”って……それしか知らねぇバカだったんだ、あいつは!!
拳を叩きつけるようにレールを蹴る。
神奈川は黙ってそれを見る。
埼玉:それをよ、現実の化け物が一瞬で潰して、俺らは見てるだけか……?……こんなん、認められるわけねぇだろ……!
神奈川、ふっと笑う。
神奈川:お前らしいな。実に、まっすぐで――重たい。夢は終わった。次は現実の番だ。愛知は動いた。次は東京だろう。そしたら関東戦線だ。そのとき、お前はどうする?
埼玉、うつむく。拳を強く握る。
埼玉:……俺は、“忘れない”だけだ。千葉が見せてくれたもんを、バカだって笑われても……ずっと、な。
神奈川は背を向けたまま、一言だけ。
神奈川:――それでいい。
鉄に夢は勝てなかった。
だが夢は、誰かの心に火を灯した。
その火が、いずれ燃え広がるのか、
それとも、現実の嵐に消えるのか――誰にもわからない。
コメント
1件
埼千葉てえてえ(((