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#ローファンタジー
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27-1◆脆いシステム、そして神の視点◆
翌朝、俺が教室のドアを開けた瞬間、またまた空気が変わったことに気づいた。
昨日まで俺に向けられていた視線。 そこには「畏怖」と「好奇心」が混じっていた。
だが今日のそれは違う。
もっと純粋な「恐怖」と そして、得体のしれない者への「敬意」のようなものだ。
俺が自分の席に着くと 視界の隅でシステムメッセージがポップアップした。
ミラー:「おい奏。お前のステータスを見ろ。また変動があったぞ」
奏:「分かっている」 俺は思考で応えながら、自分のステータス画面を開く。
【あなたの教室内序列(カーストレベル)が変動しました】
【Lv. 49(Elysion下位と同等レベル) Lv. 53(Elysion中の下クラス)】
ミラー:「当然の結果だ。レベルアップ要因を表示してやる」
【レベルアップ要因分析】
・主要因A:【轟木一派】との接触。及びその際の堂々とした態度による評価。
脅威レベル『A+』の存在と対等に渡り合ったという事実
『謎の大物』という立場を確立(+10pt)
・主要因B:【轟木一派】との懇意な関係性への”憶測”。
教室内での不可侵性が確立(+8pt)
ミラー:「『謎の大物』か。面白い評価だな。お前は、ただ恐怖に震えていただけなのに」
奏:「うるさい。結果が全てだ」
ミラー:「その通りだ。そしてその『結果』は『真実』とは無関係に作られる。お前は、そのことに気づいたんじゃないのか?」
ミラーのその言葉。 それは、俺がこの数日間で漠然と感じていたことの核心を突いていた。
俺は教室全体を見渡す。
俺を見て怯える生徒たち。 俺に興味津々の生徒たち。
完全に一目、置かれている。二学期が始まった当初の俺では、考えられない状況だ。
ミラー:「クラスのみんなが、見ているのは本当の奏ではないよな」
奏:「ああ。みんなの頭の中で、勝手に作り上げた「轟木一派と繋がりがあるらしい謎の男」という虚構の俺を見ているんだ」
ミラー:「そうだな。この教室リーグって実は???アレなんでは?」
奏:「絶対的な強者(天宮)とそれに連なる者たち(Elysion)が作り上げた盤石のシステムに見える」
ミラー:「だがその実態は、たった一つの事件や、根も葉もない噂だけで簡単に変動する」
奏:「なんて脆くて、そして滑稽な世界なんだろうな」
ミラー:「本当におもしろいよな」
俺の口元に、冷たい笑みが浮かぶ。 俺はそのシステムの脆さをこの身をもって知った。
そしてその脆さこそが俺の最強の武器になる。
俺は次のゲームの始まりを静かに待っていた。
27-2◆王の帰還、そして観測者の新しい野望◆
一限目の授業が終了した。 一限目と二限目の間の十分休憩。
教室の中心、Elysionの周辺は、いつになく華やいだ空気に包まれていた。
参謀役の斎藤律が、退屈そうにスマホをいじりながら親友の柴田隼人に話しかける。
「おい隼人。先週の合コンでLINE交換した女子高の一年、あれどうだった?」
「ああ。まあまあだな。だが天宮が来てなかったからな。天宮がもし来てたら、全員そっちになびくだろ」
「お前がモテるといっても、所詮は天宮の次、そして1位と2位には圧倒的な開きがある」
柴田は、つまらなそうに答える。
彼らの会話には「どうせ俺たちは王の引き立て役だ」という自嘲と、そして「王の帰還」への確かな期待が混じっていた。
その会話に女王の側近、結城莉奈が微笑みながら加わる。
「あら二人とも。天宮くんは、昼前に登校するんだってね。2日ぶりね」
その言葉に柴田と斎藤の顔が輝く。
そして久条亜里沙が、その場の全員に聞こえるように静かに告げた。
「今日の昼食は祥雲庵。天宮くんにも来てもらうわ。特別にいつもより豪華なケータリングを頼んであるの」
「あなたたちも、いらっしゃい。天宮くんも、その方が喜ぶでしょうから」
王の帰還を祝う祝祭。 Elysionの結束は完璧に見えた。
俺はその光景を眺めながら、脳内のウィンドウを開く。
奏:「見てみろ!ミラー。王の帰還で配下たちはお祭り騒ぎだ」
ミラー:「お前はこのまま、彼らの茶番を眺めているだけで、満足か?」
ミラーのその問い。 俺は自分のスカウターに表示されたステータスを見る。
【Lv. 53(Elysion中の下クラス)音無 奏】
そして、談笑する亜里沙たちを見る。
(まだだ。まだ足りない)
(こんな中間層下のレベルで燻っている場合じゃない)
奏:「どうせなら、俺は頂点まで昇り詰める」
ミラー:「ほう?」
奏:「そして、この教室にはびこるくだらない選民意識。その全てを俺がぶっ潰す」
その俺の宣言にミラーは、心底楽しそうな返信を送ってきた。
ミラー:「はっ。面白い。それこそがお前が描くべき最高の脚本だ。手伝ってやるぜ相棒!」
チャイムが鳴り響く。二時間目の授業が始まる.。
その日の全ての授業は、再来週に迫った中間試験のことが、各担当教師から告げられていた。
教室には目に見えないプレッシャーが満ちていた。
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