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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第109話 〚配置〛
― 担任視点 ―
放課後の校門は、
いつも通りだった。
生徒が出ていく。
笑い声。
部活の呼び声。
変わらない光景。
――の、はずだった。
視線の端に、
引っかかるものがある。
人数が、
多い。
いや、
多いだけじゃない。
散り方が不自然だ。
校門の前。
澪と海翔が、
並んで歩いている。
距離は自然。
会話は少なめ。
でも、
歩調が合っている。
(ここまでは、普通)
問題は、
その周囲だった。
少し後ろ。
少し横。
少し離れた位置。
怜央。
湊。
えま。
しおり。
みさと。
りあ。
さらに、
見慣れない男子が三人。
――神崎。
――田中。
――佐藤。
全員、
澪と海翔を
見ている。
でも――
誰も近づかない。
(……これは)
私は、
足を止めた。
偶然にしては、
配置が良すぎる。
近すぎない。
遠すぎない。
声をかけられる距離。
でも、
邪魔にならない距離。
一人が動けば、
他も動ける。
誰かが近づけば、
誰かが止められる。
そういう――
布陣。
そして、
もう一つ。
校門の影。
そこに、
一人。
西園寺恒一。
立っている。
動かない。
視線は、
澪の背中。
でも、
一歩も踏み出せない。
(……なるほど)
胸の奥で、
点と点が繋がる。
これは、
教師が作った安全ではない。
私が指示した覚えも、
ない。
――生徒同士だ。
生徒同士で、
守っている。
それも、
「囲う」のではなく、
「逃げ道を残す」形で。
過剰じゃない。
でも、
隙もない。
私は、
何も言わなかった。
声をかければ、
この配置は崩れる。
崩す理由が、
見当たらない。
澪と海翔が、
校門を出る。
少し遅れて、
他の生徒たちも
それぞれ帰路につく。
解散は、
驚くほど自然だった。
最後に残ったのは、
静かな校門と、
立ち尽くす西園寺だけ。
(……偶然じゃない)
私は、
はっきり確信した。
これは、
意図された安全。
そして――
もう一つ確信する。
この配置が必要な理由が、
まだ終わっていない。
私は、
校門を見つめたまま、
深く息を吐いた。