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「ジャジャーン!!ユメ部へようこそ!!」
は…?
この急展開に理解が追いつかない。
「えっと…どちら様ですか…?てかここ何処??」
謎の少年(?)は不思議そうに首を傾げる。
それと同時にストレートな前髪がさらっと流れる。
「んー?あ、なんだ。新入部員じゃないのか。」
勝手に納得すると俺の前に立ちはだかり
「じゃあ此処を紹介するね!!」
「此処はユメ部の部室。僕は部長のハルだよ! ところで君も入部するよね?ね?そうしようそうしよう!」
と、意味不明な事を言いながらぐいぐいと俺を部屋へ押し込む。
この子結構、力強いな…。
顔をあげると部屋の中には不思議な空間が広がっていた。
壁にはアンティークな時計が掛けており、その下には本棚と机、椅子が並べられている。
窓の下には戸棚があって、中にはティーポットやティーカップ、紅茶の入った瓶がある。
机に白いテーブルクロス。
床には赤いカーペット。
机の上の花瓶には折られた桜の枝が挿してある。
けど枝には花びらは1枚もない。
おっと、流されるところだった。
「いや待て待て。子供のお遊びなら付き合わないからな。てかなんでこんなところに子供が…迷子?」
というのも、このハルという名の少年は小学生くらい…いや、ギリギリ中学生か?
とりあえずそのくらいに見える。
しかも白髪。
この学校、髪染めは校則違反だ。
「む、失礼な、僕はこう見えて君よりは年上だから。舐めないでよね。」
「…えっ?」
ハルはぷくーっと頬を膨らませて腕を組む。
…まじか。
「ま、いいよ。とりあえずこの入部届に名前書いてね。話しはそれから_」
「入部するとは言ってないんだが…?というかユメ部ってそんな部活あったっけ。」
先生から貰った部活一覧表のプリントには確かにユメ部なんて変な名前の部活はなかった筈だ。
それに無理矢理入部させようなんて怪しい事この上ない。
「ま、この部活は学校公認じゃないからね〜。そもそも今この部活入ってるの僕だけだし。」
「…そうですか。ではお邪魔しましたー。 」
くるりと回れ右をし、立ち去ろうと決める。
厄介事は願い下げだ。
俺は部屋から出る。
「ちょ、ちょっと待ってよ〜!!」
後ろから声と追いかけてくる足音が聞こえてきたが無視して扉を閉めた。
教室まで戻ろうと足を進めたが立ち止まる。
一応ハルが追って来ていないか確かめる為に 振り返ってみると。
確かにあったはずの扉が無くなっていた。
「優、ちょっと今日から授業始まるっていうのに遅刻とかしないでよねー?」
「分かってるって。まだ間に合うから大丈夫。」
バスに乗る。
街には沢山の桜が咲いている。
今日も花びらは枝とお別れを告げるのか。
昨日の事を思い出してみた。
うん。あれは夢だ。
最近俺は疲れているのかもしれない。
きっと、いや絶対そうだ。
だからまたあの変な奴に会うことは_
「夢であれよ…。」
放課後。
4時に学校が終わった。
まだ時間があったから、ほんのちょっと、少しだけ気になってしまった俺は、またあの扉がある場所に来てしまった。
どうせ無いだろうと心に言い聞かせながら歩いてきたのに…
「あるのかよ!」
「わぁー!!また来てくれると思ってたよ!」
「うわぁ!」
なんでどいつもこいつも後ろから話しかけて来るんだ…!!
「今度こそ入部しにきたんでしょ?大丈夫!いつでも歓迎するよ!」
「いや、そういうわけじゃ…痛い痛い」
いつの間にか腕を引っ張られている。
くっ…今ほど非力な俺を憎んだ事はない…。
「ほら、この椅子に座って、今紅茶を出すよ!」
もうなんでもいいや…。
ハルは丁度ポットに用意されていた紅茶をカップに注ぐ。
「あ、角砂糖いる?ストレートでもいい?」
「待て、なんで紅茶を丁度用意してあるんだよ。まるで_ 」
「まるで君が此処に来るのが分かってたみたいって?」
「…。」
ハルはふふっと口角を上げる。
「違うよ、元々僕が飲もうとしていただけさ。紅茶は僕の生きがいだからね!」
なんだ、俺の自意識過剰か…。
「でもね、今日の紅茶は特別にストロベリーティーにしてみたんだ。どう?」
ストロベリーティーか、飲んでみたいと前々から気になってはいたがこんな怪しいところで飲む羽目になるとは…。
それに紅茶を飲むのは初めてかもしれない。
いつもはハニーミルクか、いちごミルクばかりだからな…。
匂いを嗅ぐとストロベリーのほのかな香りがした。
少しならまあ、付き合ってやってもいいか。
液体を一口、口に含む。
「うっ…苦い…。」
甘いストロベリーの香りとは裏腹に紅茶は俺には苦かった。
「あー、ごめんごめん!まだ優くんには早かったかぁー。」
「おい、俺を子供扱いするな。」
あれ…?
そういえば俺、名前教えていたっけ。
「なあ、俺って、名前言ってたか?」
「えー?頭でも打った?昨日教えてくれただろう?」
そうだっけ、そうだったかもしれない。
紅茶の甘い香りを嗅ぐとそんな気もしてきた。
頭が空っぽになる。
「ねえ、それより入部考えてくれたかい?」
なんだかふわふわする。
瞼が重い。
「ん…。」
「ほんとう!?ならこの入部届書いてよ!」
分からないがとりあえず名前を書けばいいのか…?
「ふふ、ありがとう。これで君はユメ部の部員だね。宜しく、優くん。」