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――翌日。
いつものように、無言のまま佇む男がいる。
今日も今日とて、何事もなかったかのような顔で通り過ぎようとするのだが……ふとした瞬間に足を止める。
今更ながら、目の前にいる人物が自分にとってどういう存在であるかを自覚する。
あの日を境に、彼と私は奇妙な関係を築くことになる。
お互いに相手の素性を知らないままに、一緒にいることを選んだのだ。
「ねえ」
話しかけても、返事はなかった。ただ黙ってこちらを見つめてくるだけだ。
「もしも私がいなくなったら、あなたはどう思う?」……やっぱり、何も言わない。相変わらず、表情すら変えようとしない。
しばらく経ってからようやく口を開く。
けれど、やはり、声を出すことはしなかった。
そのまま、私を残して何処かに消えてしまった。
一体、なんのために話してくれたのかわからない。
きっと、彼なりの考えがあったに違いないと思うけど……。
それでも、私の疑問は晴れることはなかった。
どうしてなのかは自分でもよく分からない。
でも、時々考えてしまうことがある。
このままではいけないんじゃないか?……ってね。
でも、それは多分、間違いなんだ。
なぜならば、君は既に知っているはずだよ。
今の君は、とても幸せそうだ。
これ以上を望む必要はないんだよ。
だって、君の前にはたくさんの選択肢があるじゃないか。
その中のどれを選んでも構わないし、選ばなくても良い。
君の人生は、これからもっと素晴らしいものになるよ! きっと今より幸せになれて、素敵な恋も出来るはずだ。
大丈夫、私が保証するさ! だから安心してくれ。私は君の味方だよ。
君は今まで頑張りすぎてきたんだ。少し休んでもいいんだよ。