俺は今、誰を愛しているのか、
だんだん分からなくなっていった。
〈岩本side〉
目 “もしもし、どした?”
岩 “ごめん、残業長引いて終電逃した。
タクシー代持ってないし、
どっか泊まってそのまま会社行くわ。”
目 “そっか。分かった。”
岩 “ごめんな。おやすみ。”
目 “はーい、おやすみ。”
電話を切った後、
俺は罪悪感で押しつぶされた。
隣にはふっかが居て、
俺たちは2人、
狭いネカフェの部屋で、
肩を寄せあっていた。
深 “帰んなくてよかったの?”
岩 “1人に出来ないだろ。
だいぶ酔ってるし。
あんなこと言われてさ。”
深 “……ごめんね。”
岩 “…さっきの話、本当なのか?”
深 “え、?”
岩 “今でも、俺の事……。”
深 “そうだよ。
俺は照が好き。”
岩 “でも、俺……、”
深 “分かってるよ。目黒さんがいるって。
でも諦めきれないんだよ。
……照はさ、
俺の事、もう何とも思ってないの?”
ふっかから向けられる真っ直ぐな目。
俺はその問いかけに、
直ぐに答えることが出来なかった。
別れてからずっと、
俺はふっかの事を考えていた。
今までずっと。
もしかしたら俺は、
ふっかを忘れるために、
蓮と付き合ったのかもしれない。
俺は、最低な人間なのか。
俺は、誰のことが好きなのか。
もう何も分からなくなっていた。
岩 “そんなことはない。
でも、俺にはふっかを幸せにできない。
半年前もそうだっただろ。
もうふっかの事傷つけたくないんだよ。”
深 “それでもいい。
照がいなきゃダメなんだよ。”
岩 “でも俺には、蓮がいる。
ふっかとは付き合えない。”
自分にそう言い聞かせて、
俺は自分の気持ちを抑えようとした。
でも、
俺は本能を抑えきれなかった。
岩 “……だけど、
あの日からずっと、
ふっかを忘れた日はなかった。”
気づけば俺は、
ふっかにキスをしていた。
時間が止まったような感覚で、
このまま溶けていきそうだった。
ダメだと思えば思うほど、
気持ちは抑えきれなくなって、
俺たちの体は近づいていった。
息ができないくらいの
熱いキスを交わして、
俺たちは眠りについた。
目 “おはよ、照。”
岩 “お、はよ。”
目 “昨日寝れた?”
岩 “まぁ、な。
ネカフェだったから体痛いけど。”
目 “そっか、笑
昨日、ずっと1人だった?”
岩 “え、そうだけど。”
目 “そう、だよね。”
俺は、蓮に真っ赤な嘘をついた。
こんなつらつらと嘘が並べられるのは、
良くない事をしていると、
自分で分かっているからだと思う。
俺は気づいていた。
蓮への思いが、
だんだん離れている事に。
コメント
1件
やばいもう最高です👍🥹 続き楽しみー👍