テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
14話目もよろしくお願いします!
更新がとんでもなく遅くなってしまって
すみません😭
今回とても長いのでゆっくり読んでください。
スタートヽ(*^ω^*)ノ
「嵐の体育祭」
楽しかった夏休みも、気付けば残り一週間。
キヨの部活が休みの日は、どちらかの家に集まってゲームをしたり、一緒にご飯を食べたり、時々 恋人になったことを実感するような甘く穏やかな時間を過ごしていた。
ゲームではしゃぎ終え、休憩をしていると
レトルトが ふと思い出したように口を開く。
「そういえばキヨくん、宿題終わったの?」
その瞬間だった。
キヨの表情がみるみる曇る。
『えと……一つもやってない。』
今にも消えてしまいそうな声。
「は?」
レトルトは思わず固まる。
「嘘やろ!?」
キヨは気まずそうに視線を逸らしたが、すぐレトルトの方を向いて両手を合わせ今にも泣きそうな目でレトルトを見つめた。
『お願い!! レトさん!! 助けて!!』
「いや……や!」
レトルトはその視線に負けないよう、きっぱりと言い切る。
「自分の宿題は自分でやりな!」
『うぅ…..お願い、レトさん……』
甘えるような声。
うるうるした瞳。
「うぅ……」
レトルトは思わずうめき声を漏らした。
(その顔は反則やって……。)
心の中でそう叫びながら必死に首を横に振るも
頬に手を添えられて、耳元で『 お願い』 と色めかしく囁くキヨ。
(こいつ、絶対わざとやってる)
頭ではわかっているのに、レトルトはゾクゾクと体を震わせてしまう。
そんなレトルトを見ながらキヨはニヤリと笑い、極め付けに耳をぺろっと舐め上げた。
「ひゃ….ぁ、っ/////」
突然の刺激に声を上げ、レトルトはとうとう観念した。
「わ、わかったってば!! 見せてあげるから!」
顔を真っ赤にして息を上げながら
レトルトは力無く宿題を見せたのだった。
夏休みが終わり、久しぶりの登校。
キヨは朝から上機嫌で、ルンルンとした足取りでレトルトと並んで歩いていた。
『いやー!宿題間に合ってよかった!レトさん、ありがとな!』
満面の笑みでレトルトを見る。
嬉しそうに笑うキヨの隣では、レトルトがどんよりとした表情でキヨを睨んでいた。
「……来年の夏休みは1日目から宿題やらせるからな。」
ぼそっと呟く。
夏休み最終日の夜遅くまで二人で机に向かい、ほとんどの宿題を片付けたのはレトルトだった。
おかげで寝たのは夜中。
レトルトは大きなあくびをしながら、眠そうに目をこすった。
そんな様子には気付かず、キヨは鼻歌まじりに教室へと向かっていった。
二学期の大イベントといえば、体育祭。
教室は種目決めや応援の話題で大盛り上がりだった。
運動神経抜群のキヨは、
徒競走
部活対抗リレー
借り物競走
そして、紅白対抗リレーのアンカー
次々と種目に選ばれ、クラスメイトからも
「さすがキヨ!」「頼んだぞ!」と期待の声が教室内に飛び交っていた。
『俺が走れば優勝間違いなし!』
キヨは得意げに胸を張り、そのまま勢いよく椅子の上へ立ち上がった。
『みんな見とけよ!全部一位取ってやるからな!』
するとすかさず先生が教卓を叩く。
「こら、キヨ! 椅子の上に立つな!」
『は〜い』
キヨは笑いながら飛び降りる。
その様子に教室中がどっと笑いに包まれた。
少し離れた席でその光景を見ていたレトルトも、思わず吹き出す。
「ほんま、調子乗りやなぁ。」
苦笑いしながらも、その目はどこか嬉しそうだった。
一体育祭当日一
澄み渡る青空の下、競技が次々と始まっていく。
キヨは宣言した通り出場する種目すべてで圧倒的な強さを見せた。
徒競走ではスタートから一気に抜け出し、ゴールテープを切った。
部活対抗リレーでも他の部活動生が誰1人追いつくことが出来ないほどの差をつけた。
「うおぉぉぉぉ!!」
「キヨーーー!!」
クラスメイトの歓声が上がる中、テントから見守っていたレトルトも思わず立ち上がる。
「キヨくーん!!がんばれー!」
夢中で大きく手を振り、声が枯れるほど応援する。
汗を光らせながら笑顔で走るキヨは、誰よりも輝いて見えた。
その姿に、レトルトは胸がいっぱいになる。
(やっぱり……キヨくん、かっこええ。)
誇らしさと嬉しさが入り混じり、自然と笑みがこぼれていた。
午前の競技を終え、キヨたちのクラスはぶっちぎりの点数で首位に立っていた。
「このままいけば優勝間違いなしじゃん!」
とクラスメイトたちは大盛り上がりでキヨを讃えていた。
昼休憩を挟み、午後最初の競技の 借り物競走が始まる。
パンッ!
ピストルの合図と同時に、選手たちが一斉に走り出した。
キヨも勢いよく駆け出し、お題の紙を開き読み始めた。
しかし、その瞬間、
(……は?)
一瞬にしてキヨの表情が曇った。
紙には大きくこう書かれていた。
“部活のマネージャーをお姫様抱っこしてゴールすること”
『マジかよ……』
キヨは思わず顔をしかめ 反射的にレトルトがいるテントの方へ視線を向けた。
『……あれ?』
レトルトの姿が見当たらない。
『よし!レトさんいない!さっさと終わらす!』
そう呟くと、急いでサッカー部のマネージャーの元へ駆け寄る。
『悪い!ちょっと協力して!』
お題の紙を見せるとマネージャーは嬉しそうに頷いた。
「キヨさんにお姫様抱っこしてもらえるとか嬉しすぎますー!!!」
騒ぐマネージャーを無視してキヨはそのままひょいっと抱き上げると、一気にゴールへ向かって走り出した。
学校中で人気者のキヨがお姫様抱っこをしているのだ。
どのクラスからも声援が飛び交い 近くのテントからは、
「きゃーーー!!」
と黄色い歓声が上がる。
抱えられているマネージャーも顔を真っ赤に染め、
「キヨさん、かっこいい……!」
と目を輝かせながら、思わずキヨの首へぎゅっとしがみついた。
『ちょ、あんまひっつくなって!」 』
キヨは慌てて身を離そうとする。
しかし、落とすわけにもいかず、ぎこちない体勢のまま走り続けた。
(やべぇ……。 レトさんに見つかる前にゴールしねぇと……!)
キヨはゴールだけを見据え、一気に駆け抜けようとしたその 時だった。
ふと前方に目をやると、 レトルトの姿が見えた。
ちょうどモブと向かい合って話している。
どうやらモブの借り物のお題に、レトルトが選ばれたらしい。
その瞬間、 キヨの足がぴたりと止まった。
レトルトも何かを感じたように顔を上げる。
そして、二人の視線がまっすぐ重なった。
キヨの首に手を回すマネージャーをお姫様抱っこしているキヨ。
その姿を見たレトルトの表情は、みるみる曇っていった。
さっきまで笑っていた顔が消え、視線を落とす。
その変化にキヨもすぐ気付いた。
(違う、レトさん!これは借り物競走のお題で……!)
理由を説明しようとレトルトの方へ駆け寄ろうとした、その時だった。
レトルトはモブの方を見ると、小さく頷き、その手をそっと掴んだ。
「モブくん、行こ。」
「あ、うん!」
二人はそのままゴールへ向かって走り出す。
『……え?』
キヨの足が止まる。
(レトさん……? なんでモブと手繋いでんの?)
頭が真っ白になる。
さっきまでレトルトに誤解されたくないと思っていたはずなのに、今度は自分が胸の奥から湧き上がる感情を抑えられなかった。
(は? 無理なんだけど。)
メラメラと嫉妬が燃え上がり、 その場に立ち尽くすキヨ。
すると腕の中のマネージャーが慌てて声を上げた。
「キヨさん! 早くゴールしなきゃ!負けちゃいますよ!」
その声で我に返る。
『……っ。』
キヨは何も言わず前を向くと、ゴールへ向かって一気に駆け出した。
キヨはゴールすると、そっとマネージャーを地面に降ろした。
『ありがと!』
足早に礼だけを言うと、そのままレトルトを探し始める。
後ろではマネージャーが嬉しそうに何か話しかけていた。
「キヨさん、あの――」
しかし、その声はキヨの耳にはまったく入っていなかった。
(どこだ、レトさん。 なんでモブと手なんか繋いでんだよ。)
キョロキョロと辺りを見回すと ちょうどゴールしたばかりなのか、レトルトとモブが顔を見合わせて笑っていた。
その光景を見た瞬間、キヨは眉間に皺を寄せ
無言のまま二人の前まで歩いて行く。
『……なんで手繋いでんの?』
ぶっきらぼうにそう言った。
その言い方に、レトルトも少しムッとした表情になる。
何も言わず、モブが持っていた借り物競走のお題の紙をキヨへ差し出した。
キヨは黙って紙を見る。
そこには、
“仲の良い友達と手を繋いでゴールすること”
と書かれていた。
レトルトは腕を組み、小さく鼻を鳴らす。
「おれら、友達やもん。な?」
そう言ってモブの方を見て笑う。
「うん!」
モブも笑顔で頷いた。
そのやり取りを見てキヨはレトルトとモブを交互に見つめ、 胸の中で更に膨れ上がっていく嫉妬の熱に唇を噛んだ。
気付けばキヨはレトルトの腕を掴み、強引に自分の方へ引き寄せていた。
『俺のレトさんに触るな!』
その勢いに、モブはびくりと肩を震わせる。
「ご、ごめん……。」
小さく謝ると、そのまま自分のクラスのテントへと走って行ってしまった。
キヨは荒く息をつく。
胸の鼓動が速い。
自分でも抑えられないほど感情が高ぶっていた。
ゆっくりと振り返り そこにいたレトルトは、怒っているような悲しんでいるような、それでいて少し困ったような――
複雑な表情を浮かべていた。
その表情を見たキヨは、少しだけ視線を落とす。
『……レトさん。』
短く呼ぶと、レトルトの手首をそっと掴み直した。
『一緒に来て。』
それだけ言って、校舎裏へ向かって歩き出す。
レトルトは何も言わず、その背中についていった。
一校舎裏一
騒がしい校庭とは対照的に、校舎裏はしんと静まり返っていた。
遠くから歓声やピストルの音が聞こえてくる。
『レトさん、なんでモブと手繋いでんの?』
キヨは怒りを隠そうともせず、レトルトを見つめた。
『あんなの断ればよかったじゃん!』
感情のままに言葉をぶつける。
『嫌だって言えば、レトさん以外の友達を連れて行っただろ?』
その強い口調に、レトルトは黙ったまま俯いていた。
しかし――。
「……キヨくんだって。」
小さく漏れた声。
「キヨくんだって!」
勢いよく顔を上げたレトルトは、キヨを真っすぐ睨みつけた。
「可愛いって言ってたマネージャーのこと、お姫様抱っこしてたやろ!!」
「周りにキャーキャー言われて……!」
「みんなに見られながら楽しそうにしてたくせに!」
今まで溜め込んでいた気持ちが、一気に溢れ出す。
その剣幕に、キヨは思わず目を見開いた。
レトルトがこんなふうに感情をぶつけてくるのは、初めてだった。
「自分はよくて、俺はダメなの?」
レトルトは顔を真っ赤にしながら、キヨを睨みつける。
「おかしいやろ!」
キヨも負けじと言い返した。
『でも、俺は終わったらすぐ下ろしたし!』
『でもレトさんは、終わってもモブと手繋いでた!』
その言葉に、レトルトの肩が震える。
悔しさと嫉妬と、いろんな感情が胸の中でぐちゃぐちゃになっていた。
「うっさい!」
レトルトは思わず叫ぶ。
「俺は、お姫様抱っこなんてしてもらったことない!」
「みんなの前でデレデレして! 二度と俺に触らないで!」
勢いのまま吐き出した言葉。
言った瞬間、自分でも言い過ぎたと分かった。
それでも止まらなかった。
涙が滲み、視界がぼやける。
レトルトはキヨから目を逸らすと、そのまま踵を返して走り出そうとした。
その時、キヨがレトルトの手首を咄嗟に掴んだ。
『レトさん、待って!』
「触らないで!」
レトルトは勢いよくキヨの腕を振り払おうと
したがキヨも離すまいと力が入り、二人の間に張り詰めた空気が流れた。
レトルトは潤んだ瞳でキヨを睨み、 キヨはその瞳を苦しそうな表情のまま受け止めた。
「いたっ……。」
レトルトはキヨに距離を詰められ背中が校舎の壁に当たり、小さく声を漏らした。
顔を上げると、目の前にはキヨがいた。
今まで見たことのない表情。
怒り。
嫉妬。
悲しみ。
そして、どうしようもないほどの焦り。
様々な感情が入り混じり、息を切らしながらレトルトを見つめている。
『……「触らないで」ってなんだよ』
掠れた声だった。
『レトさんに触っていいのは俺だけなんだよ!!』
息を荒くするキヨ。
肩が上下し、呼吸は乱れていた。
まるで我を忘れてしまったかのように、レトルトだけを見つめる。
『……レトさんは、俺のだ。』
震える声。
怒りなのか、嫉妬なのか、それとも不安なのか。
整理できない感情が胸の中で渦を巻いていた。
キヨはレトルトとの距離を詰め あと少しで額が触れそうなほど近い距離まで近付いていた。
『…他のやつに笑いかけんなよ』
掠れた声でそう呟く。
その必死な表情に、レトルトは思わず息をのんだ。
今まで見たことのないほど、キヨの瞳は揺れていた。
その時だった。
校内放送が静かな校舎裏に響き渡る。
《紅白対抗リレーに出場する生徒は、校庭に集合してください。》
その放送を聞いた瞬間、キヨはハッと我に返った。
荒かった呼吸が少しずつ落ち着いていく。
目の前には、少し息を乱したレトルト。
張り詰めていた空気だけが、二人の間に残っていた。
レトルトは静かに目を伏せ、小さく息を吐く。
「……出るんやろ? 行きなよ。」
『……うん。』
キヨは小さく頷く。
何か言いたそうにレトルトを見つめたが、言葉は出てこなかった。
校庭へ向かって走り出すキヨの 背中を、レトルトは何も言わず見送るのだった。
レトルトはテントへ戻る気になれなかった。
クラスの盛り上がる声を背に、 誰もいない教室へ向かった。
静かな空気の中、窓際の自分の席へ腰を下ろした。
ここからいつもキヨがサッカーをしているグラウンドを見ていた。
レトルトはそっと窓の外へ目を向ける。
「……何してるんやろ、俺。」
ぽつりと呟いた。
まだキヨに片思いをしていた頃、ここから見るキヨの姿が好きだった。
サッカーボールを追いかけ 仲間と笑い合う姿。
たまに目を合わせて手を振り合う瞬間がたまらなく好きだった。
誰かと楽しそうに話しているのを見れば、胸が少し苦しくなった。
「叶わへんって思ってたんやけどなぁ……。」
苦笑いがこぼれる。
あの頃の自分からすれば、恋人になれただけでも奇跡だった。
それなのに今は、些細なことで喧嘩をしてしまっている。
窓の外では、ちょうど紅白対抗リレーが始まろうとしていた。
グラウンドに並ぶ選手たちの姿を、レトルトは静かに見つめた。
パンッ!
乾いたピストルの音が校庭に響き渡る。
紅白対抗リレーが始まった。
レトルトは窓際の席に頬杖をつき、静かにその様子を見つめていた。
「頑張れ……キヨくん。」
誰にも聞こえないほど小さく呟いた。
次々とバトンが繋がれていく中、 キヨのチームは思うように順位が上がらない。
そして――。
アンカーのキヨへとバトンが渡った。
その時の順位は、後ろから二番目。
誰が見ても絶望的な位置だった。
「キヨくん……。」
レトルトは思わず窓枠をぎゅっと握る。
だが、その瞬間だった。
キヨが一気に地面を蹴る。
「うおっ!」
校庭からどよめきが起こる。
まるで風を切るような速さ。
一人、また一人と前の走者を抜いていく。
コーナーで三人を一気に抜き去ると、会場の歓声はさらに大きくなった。
「キヨーー!!」
「いけーーー!!」
クラスメイトたちは総立ちになり、必死に声を張り上げる。
残るは一位の選手ただ一人。
ゴールまで残りわずか。
誰もが息を呑んだ。
最後の直線。
キヨはもう一度スピードを上げる。
一歩。
また一歩。
少しずつ差を縮める。
そして、ゴールテープまであと数メートル。
「抜けぇぇぇぇ!!」
大歓声の中、キヨは最後の一歩でトップに躍り出る。
勢いそのまま、胸でゴールテープを切った。
「うおおおおぉぉぉぉ!!」
校庭中が歓声に包まれる。
後ろから二番目という絶望的な順位を、たった一人でひっくり返した。
まさに圧巻の走りだった。
教室の窓からその姿を見ていたレトルトも、気付けば立ち上がっていた。
「……やっぱり、キヨくんかっこいい!!」
その顔には自然と笑みがこぼれていた。
キヨの大逆転劇に、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。
「キヨーーー!!!」
「すげぇぇぇぇ!!」
「マジかよ!!」
どのクラスからも驚きの声が上がる。
クラスメイトたちは我先にとキヨの元へ駆け寄り、その体を囲んだ。
「やっぱお前すげぇよ!」
「最高だー!」
何人もの生徒がキヨの肩を叩き、笑顔で健闘を称え合う。
先生までもが思わず笑いながら拍手を送っていた。
その大活躍もあり、キヨのクラスはそのまま総合優勝。
優勝旗が掲げられると、クラス中から大きな歓声が上がる。
「優勝だーーー!!」
「やったぁぁぁ!!」
みんなで肩を組み、飛び跳ねながら喜び合う。
笑い声と歓声が秋空いっぱいに響き渡り体育祭は幕を閉じた。
そして、閉会式も終わり、生徒たちは少しずつ帰り支度を始める。
そんな賑やかな校庭とは反対に、レトルトの心は晴れないままだった。
さっきの喧嘩が頭から離れない。
どう謝ればいいのか。
それとも、自分から話しかけるべきなのか。
答えは出ないまま、レトルトは一人、静かに校門へ向かって歩き始めた。
その時だった。
『レトさん!待って!』
後ろから聞き慣れた声が響く。
レトルトは足を止め、ゆっくりと振り返ると
そこには息を切らしたキヨが立っていた。
気まずそうな 申し訳なさそうな顔で、 それでも逃したくないという必死さがその表情から伝わってきた。
少しの沈黙のあと、キヨは意を決したように口を開く。
『……レトさん、 話したい。屋上行こう。』
レトルトはキヨの顔をじっと見つめ、 その真剣な眼差しを見て、小さく息を吐いて 静かに頷いた。
二人は並んで校舎へ向かう。
いつも昼休みに笑い合っていた、あの屋上へ。
茜色に染まった空の下、屋上には心地よい風が吹いていた。
フェンスの向こうでは、体育祭の後片付けをする生徒たちの姿が小さく見える。
二人は並んで立ちながらも、しばらく何も話せずにいた。
何を言えばいいのか。
どこから話せばいいのか。
その沈黙を破ったのは、キヨだった。
『……レトさん、さっきはごめん。』
レトルトはゆっくりと顔を上げる。
キヨは少し俯いたまま、苦笑いを浮かべた。
『俺さ…… レトさんがモブと手繋いでるの見た瞬間、頭ん中ぐちゃぐちゃになってさ。』
『借り物競走だって分かってたはずなのに、全然冷静になれなくて。』
キヨは自分の拳をぎゅっと握る。
『レトさん取られる気がして、嫉妬してた。』
少し間を置いて、レトルトの方を見る。
「酷い言い方して、レトさんの事傷付けて
本当にごめん。」
キヨはまっすぐレトルトを見つめた。
キヨの謝罪を聞いたレトルトは、小さく息を吐いて ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……俺も、ごめん。」
静かな声だった。
「俺も、嫉妬してた。」
「キヨくんがマネージャーをお姫様抱っこしてるの見た時、胸がギュッて苦しくなって。」
「あの子、キヨくんのこと好きやから嬉しいんやろうなぁって思ったら、モヤモヤして。」
苦笑いを浮かべながら空を見上げる。
「恋人になれたのにさ。 なんか、片思いしてた頃の気持ちに戻っちゃった。」
「もう恋人なのに…分かってるのに、まだそんなことで不安になってる自分がおって……。 ごめんね、キヨくん。」
そう言ってキヨを見つめた。
『俺たち……嫉妬しすぎだな』
キヨの一言に、レトルトは吹き出した。
「ほんまやな」
『俺たち、めんどくさいな。』
「ほんとにな。」
二人は声を上げて笑う。
夕焼け色に染まる屋上が2人の笑い声に包まれていく。
キヨがフェンスにもたれながら、
『借り物競走のお題さ、” 好きな人を連れてこい”だったらよかったのになぁ』
レトルトはクスッと笑い、キヨの方へ一歩近付いて、
「もしそうやったら……。」
少し首を傾げて悪戯っぽく笑う。
「俺のこと、お姫様抱っこしてくれる?」
その言葉を聞いたキヨは、目を丸くした。
『当たり前だろ!』
次の瞬間だった。
「わっ!」
レトルトの体がふわりと宙に浮く。
キヨは軽々とレトルトを抱き上げ、満面の笑みを浮かべた。
『レトさんの事お姫様抱っこして、みんなに自慢しながら走るわ』
レトルトは嬉しそうに、そして照れ隠しのように笑う。
「恥ずかしいわ!キヨくん大胆すぎや!」
『レトさん、大好きだよ』
キヨはレトルトを抱きかかえたまま、照れくさそうに笑った。
その笑顔につられるように、レトルトもふっと笑う。
そっとキヨの首へ腕を回し、優しく抱き寄せた。
「……俺も、キヨくん大好き。」
少し照れながら、それでも真っすぐ想いを伝える。
「でもさ、これからは俺以外にこんなことしたら、許さへんからな。」
レトルトは少しだけ頬を膨らませた。
『絶対しない!!』
キヨは即答した。
キヨの表情から笑みが消え、ふっと真剣な眼差しになる。
夕日に照らされた瞳は、何かを決意したようにまっすぐレトルトを見つめていた。
『……なぁ、レトさん。』
少しだけ間を置いて、静かに口を開く。
『今日さ、俺ん家に泊まりに来ない?』
キヨは何かを決意したような、真っ直ぐな瞳でレトルトを見つめていた。
レトルトはその真剣な表情を見つめ返し、
「……うん。」
そう言って、静かに頷いた。
続く
コメント
4件
続きキタァァァァァァァ!!! 体育祭……嫌な単語だ、 キヨレト可愛い尊い癒し🥺︎ 喧嘩するほど仲がいいって言うやん‼️つまり二人はめっっちゃ仲良くてめっっちゃ相性のいい最高のカップルって事なんすよね👍 ……え、家に泊まり…? おっとぉ?いやまだ分かんないもんね、うちの心が汚れてるだけかもしれないもんね……。 まあ仲良しこよしのお泊まり会もどっちにしろ尊いからいいんですけどね‼️
**美月ゆめかだよ〜🌸** 14話読了!体育祭を舞台にした嫉妬とすれ違いの展開、めっちゃエモかった…😭💕 キヨくんの「俺のレトさんに触るな!」からの叫び、初めて見せる嫉妬の顔にドキドキしたよ! そして屋上での仲直りシーン…「好きな人を連れてこいだったらなぁ」からのお姫様抱っこ、天才か!? 最後の「泊まりに来ない?」の真剣な目、次回が気になりすぎる!!2人の距離がまた一歩近づいた感じがして、胸いっぱいになったよ〜⋆♡ 更新待ってた甲斐があった!長さも全然気にならなかった!ありがとう!!
#top4
せきこみごはん
2,341
魑魅魍魎
3,624
#kyrt
魑魅魍魎
1,301