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rd side――――――――――
「……待てっ!」
自分でも驚くくらい大きな声が出た。
前を歩いていたきょーさんの足がぴたりと止まった。
きょーさんはゆっくりと振り返った。
「……らっだぁ?」
少しだけ意外そうな顔。
「なんでここにいんの」
息を整える暇もなくその前まで駆け寄る。
「お前こそ、何してんだよ」
「いや、帰ってるだけだけど」
「一人で?」
「……別にいいだろ」
目は少しだけ逸らされていた。
「よくねえよ…!」
思ったより強い声が出る。
きょーさんが、少しだけ眉をひそめた。
「なんでだよ」
「なんでって……」
言葉が詰まってしまった。
理由なんて、“手紙に書いてあったから”なんて言えるわけない。
でもここで引いたらダメだと思ったんだ。
「お前さ」
「最近、変だろ」
「……は?」
「無理してんの、バレてないと思ってんの?」
空気が一瞬で変わった。
さっきまでの軽い感じがすっと消えた。
「別に」
短い返事。
「普通だし」
「普通なわけねえだろ」
即座に返す。
「さっきだって、先帰るとか言ってたじゃん」
「用事あるって言っただろ」
「嘘だろ」
俺の言った一言できょーさんの視線が揺れた。
「……なんでそう思うわけ」
「わかるからだよ」
「何が」
「お前のことくらい」
「…」
「なんで一人で帰ろうとしてんの」
「……別に」
「別にじゃねえだろ」
少しずつ距離を詰めようとして歩く。
「お前、最近ずっとそうじゃん」
「一歩引いて、なんも言わねえで」
「勝手に大丈夫なフリして」
「…」
きょーさんは何も言わない。
ずっと視線を下げたままだった。
「なあ」
「一人で抱えんなよ」
「……別に、抱えてねえよ」
やっと出てきた言葉は、弱くて少し震えていた。
「抱えてるだろ」
すぐに返す。
「顔見りゃ分かる」
「…」
しばらくの沈黙のあと。
きょーさんが呟いた。
「……さ」
「ん?」
「別にさ」
文が途切れながらきょーさんは言った。
「俺、いなくてもよくね?」
「……は?」
「お前らさ、楽しそうじゃん」
笑おうとしたのかもしれない。
でも、その声は全然笑えてなくて。
「レウとかコンタミとか、普通に盛り上がってるし」
「どりみーもいるし」
「……俺いなくても、変わんねえだろ」
「…」
「変わるわ」
気づいたら口にしていた。
きょーさんが少しだけ顔を上げる。
「変わるに決まってんだろ」
「……何が」
「全部だよ」
「お前がいないとか普通に嫌なんだけど」
「…」
「勝手に決めんなよ」
「いなくてもいいとか」
「そんなの…、、お前が決めることじゃねえだろ!!」
「……っ」
「……でも」
「迷惑かけるくらいなら」
「いない方がいいだろ」
「かけてねえよ」
「むしろ、かけろよ」
「……は?」
「頼れよ」
言葉を選ぶ余裕なんてなかった。
「勝手に一人で抱え込んで」
「勝手にいなくなろうとすんな」
「…」
「……なんで」
小さな声。
「なんで、そこまで言うんだよ」
「…」
一瞬迷ったけれど…すぐに答えた。
「嫌だからだよ」
「お前がいなくなるの」
「普通に、嫌だ」
そしてきょーさんの表情が崩れはじめた。
「……っ」
言葉にならない息。
「……バカかよ」
小さく笑う。
でもその声は震えていた。
「……ほんと、バカ」
「悪かったな、バカで」
きょーさんの目元から涙がこぼれ始めた。
小さな頃からギャン泣きするタイプじゃなかったからな。
久しぶりに見た、泣いているところ。
きょーさんが、ぽつりと呟いた。
「……ちょっとだけ」
「ん?」
「……ちょっとだけ、きつかった」
「……そっか」
それ以上は何も聞かなかった。
俺はきょーさんを抱きしめていた。
「帰るぞ」
そう言って少し前を歩く。
後ろから足音がついてくる。
それだけで十分だった。
――――――――――
コメント
1件
マジで作品の内容とか設定が全部癖にぶっ刺さったのだが?