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「もぉ〜、若井いるならあげるよ」
そう言ってプリンを渡そうとする涼ちゃんを手で大丈夫、と制する。
「いいの、ひとくちもらったから」
「僕ってそんなおいしそうに食べてるかなぁ?いるなら言ってね、譲るから」
そう言いながら涼ちゃんは残りのプリンをもぐもぐとおいしそうに食べている。
おいしそうっていうのもあるけど、食べてる姿がとっても可愛い。
「好きな人のをひとくちちょーだい、なんて陽キャのすることは違いますねぇ」
元貴がすれ違いざまにニヤニヤと笑いながらそう呟いてくる。
「そっ、そんなんじゃないしっ」
バレてはいけないと慌てて否定する。
「ふーん?じゃあ俺も涼ちゃんにひとくちもらおうかなぁ♡」
「だめ!だめだめ、絶対だめ!」
あぁ、言っちゃった。
元貴は俺の顔をみて手を叩きながら高笑いしている。
「ん?元貴もプリンいる?」
「あ、ほしいなぁ〜♡」
「はい、新しいのどーぞ」
元貴がおや、という顔をして涼ちゃんを見る。
「俺も、その涼ちゃんが食べてるやつひとくちでいいよ」
「えっ、あ、新しいの食べたほうがいいよっ、とってもおいしかったよ···」
涼ちゃんが元貴にあげずに残りを食べてしまって、俺はちょっとほっとする。
元貴は涼ちゃんを見つめるとイタズラを思いついた子供のような顔で、なにか囁いている。
と、みるみる涼ちゃんの顔が赤くなる。
「〜っ、もとき、なに言うの!」
珍しく大きな声を出すと立ち上がる。
元貴は相変わらず楽しそうに涼ちゃんを眺めている。
「別に俺が若井に“ひとくち”あげてもいいんだよ?」
涼ちゃんは立ち上がったまま俺を見るとこういった。
「僕は若井にならっ、全部あげてもいいんだから!元貴はだめっ 」
そう言い捨てると部屋をすごい勢いで行った。
「···なにいったの?」
元貴はくっくっ、と肩を揺らして笑っている。
「えー、若井はほんとは涼ちゃん自身をひとくち食べたいんだよって言ってあげた♡」
涼ちゃんをひとくち?
そりゃ食べたいよ、いやいや、そうじゃなくって。
「なんてこと言ってんの?信じられない!あ”〜なんでそんなことっ」
「い〜じゃん、ほんとのことなんだからぁ。 良かったね、全部あげてもいいんだって」
ん?
確かに。
僕は俺になら全部あげてもいいって···それってどういうこと?!
顔が赤くなるのがわかる。
「俺ちょっと涼ちゃん探してくるっ!」
急いで俺は涼ちゃんを探しに部屋を出ていった。
部屋には元貴が1人残されている。
「あの2人本当分かりやす過ぎ···からかいがいがあるなぁ···」
プリンを食べながら2人の赤くなった顔を思い出してまたおもしろくなる。
まぁ恋には奥手な2人のことだからなかなか進展はないはずだ。
「まだまだ楽しめそうだねぇ」
元貴はどんな顔して2人が帰ってくるかなぁと想像してまた笑みが溢れた。