テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
103
ほいっぷ🍰☕️
384
ポテサラ
266
2,805
コメント
14件
こっちのほうが幸せだったんだろうなぁ… こっちであってほしかったけど元エンドもバットエンドってほどでもなさそうだったし…ムズカシイ こっちのエンドでは平和に一生暮らしてくれ
このエピソードは第10話のアナザーストーリーという形になっています。
第9話までの展開の後の分岐ルートというイメージで読んでいただければ幸いです(人 •͈ᴗ•͈)
途中までは第10話と同じですのでご理解ください(人*´∀`)。*゚+
ではどうぞ〜↓
風が吹いていた。
瓦礫の街の隙間を。
崩れた建物の頭上を。
散らばったガラスの先を。
静かに。
ゆっくりと。
吹き抜けていく。
誰も、動かなかった。
回収部隊も。
堕天使たちも。
あの男も。
ただ。
瓦礫の中心を見ていた。
そこには。
二人がいた。
金色の彼。
そして。
青鬼の少年。
「渡せ」
男が言う。
最後の命令だった。
静かで、感情のない声。
金色の彼は答えない。
ただ。
腕の中の少年を抱き締める。
その時だった。
がしゃり。
瓦礫が鳴る。
誰かが動いた。
部隊の一人だった。
若い堕天使。
恐怖で顔が引き攣っている。
「危険です!」
叫ぶ。
震える声で。
「また暴走したら…!」
誰も、答えられなかった。
男も止めない。
ただ。
その男は静かに見下ろしていた。
若い堕天使が一歩踏み出す。
「だから――」
剣へ手を掛ける。
きょーさんが顔を上げた。
「おい」
低い声。
「何する気や」
「退いてください」
「嫌や」
即答する。
「青鬼を渡してください」
「嫌や言うとるやろ」
きょーさんは、らっだぁを抱え直す。
翼が傷付いている。
身体も限界に近い。
それでも。
離す気はなかった。
若い堕天使が剣を抜く。
銀色の刃が、夕暮れの光を反射した。
「危険なんです!」
叫ぶ。
「それ以上、青鬼が力を使ったら――」
その瞬間だった。
らっだぁが。
目を開いた。
青い瞳。
そこに。
剣が映った。
きょーさんが。
自分の前にいる。
傷だらけの翼。
疲れ切った顔。
それでも。
自分を守ろうとしている。
らっだぁの瞳が、大きく揺れた。
怖い。
また。
何かが壊れる。
また。
誰かが傷付く。
嫌だ。
嫌だ。
嫌だ。
でも。
それ以上に。
嫌だった。
きょーさんが傷付くのが。
「……」
らっだぁは。
小さく息を吸った。
そして。
初めて。
自分から。
青鬼の、その力を使った。
青い光が。
一瞬だけ、二人を包んだ。
「っ!?」
若い堕天使が目を見開く。
勢いのままに、剣が振り下ろされる。
けれど。
届かなかった。
刃が青い光へ触れた瞬間。
音もなく。
剣にかけていた力が抜ける。
からん。
剣が地面へ落ちた。
誰も、動かなかった。
らっだぁ自身も、驚いていた。
今までとは違う。
いつもなら。
力が勝手に溢れていた。
怖くなる。
苦しくなる。
止められなくなる。
けれど。
今は違う。
ちゃんと。
自分で選んだ。
大切なものを守る。
そのために。
力を使った。
「……らっだぁ?」
きょーさんが呼ぶ。
らっだぁは顔を上げる。
そして。
自分の周りに広がる青い光を見た。
街。
崩れた建物。
割れた窓。
壊れた道路。
逃げ惑う人々。
傷付いた者たち。
全部。
青い光の中にあった。
らっだぁは。
しばらく黙っていた。
そして。
小さく呟く。
「……戻したい」
きょーさんが目を見開く。
「⋯え、?」
らっだぁは。
もう一度。
今度は少しだけ強く。
「戻したい」
青い光が揺れる。
空気が震える。
そして。
世界が、動き始めた。
崩れた建物が。
ゆっくりと戻っていく。
瓦礫が浮かぶ。
壊れた壁が繋がる。
砕けた窓が、元の場所へ戻る。
道路に走っていた亀裂が消えていく。
倒れていた柱が起き上がる。
まるで。
世界の時間だけが、巻き戻っていくようだった。
誰も。
声を出せなかった。
ただ。
目の前の奇跡を見ている。
青い光が街を包んでいく。
それは。
恐ろしいほどの力だった。
けれど。
今までとは違う。
壊さない。
傷付けない。
ただ。
元へ戻していく。
そして。
光が人々へ触れる。
傷付いていた者たちが。
ゆっくりと顔を上げる。
痛みが消えていく。
傷が癒えていく。
震えていた身体が。
少しずつ落ち着いていく。
ふと、誰かが呟いた。
「……治った」
別の誰かが。
「傷が……」
さらに。
「建物まで……」
ざわめきが広がる。
恐怖ではない。
今度は。
驚きだった。
その中心に。
青い光の中に。
青鬼がいる。
伝説の。
青鬼が。
あれほど恐れられていた存在が。
今。
街を救っている。
男は。
何も言わなかった。
ただ。
青い光の中心を見ていた。
長い間。
何百年も。
青鬼というものを探し求めてきた。
その力を。
恐れ。
利用し。
価値として扱ってきた。
けれど。
知らなかった。
こんな使い方があるなんて。
いや。
正確には。
知ろうとしなかった。
男の口から。
小さく言葉が漏れる。
「……伝説通り、か」
隣にいた部下が振り返る。
「え?」
男は。
青鬼を見たまま、静かに続けた。
「青鬼は恐ろしい」
一拍、呼吸を置く。
「だが」
青い光が。
最後の建物を包む。
崩壊した街が。
完全に元へ戻る。
「それ以上に、見事だ」
青い光が。
少しずつ弱くなっていく。
らっだぁの身体が揺れる。
「らっだぁ!」
きょーさんが慌てて支える。
「大丈夫か?」
その声に。
「……疲れた」
小さな声。
きょーさんが固まる。
それから。
思わず笑った。
「そら疲れるわ」
らっだぁは目を細める。
「……頑張ったよ」
「おう」
「……褒めて」
きょーさんが黙る。
数秒後。
「……は?」
らっだぁが、少しだけ頬を膨らませる。
「褒めて」
「調子乗んな」
「……」
「……」
じっときょーさんを見つめる。
きょーさんは。
ため息を吐いた。
そして。
青い髪へ手を置く。
くしゃり。
「偉い偉い」
らっだぁが。
少しだけ笑う。
「……もっと」
「お前なぁ」
きょーさんも笑った。
その光景を。
周囲の者たちは。
呆然と見ていた。
伝説の青鬼。
何百年も恐れられた存在。
それが。
今は。
金色の堕天使に頭を撫でられている。
あまりにも。
平和だった。
男が。
ゆっくりと近付いてくる。
きょーさんが顔を上げる。
らっだぁを抱えたまま。
警戒するように翼を広げる。
男は。
二人の前で止まった。
しばらく。
何も言わなかった。
やがて。
「お前は命令に背いたな」
きょーさんは答える。
「……はい」
「私に逆らった」
「はい」
「その青鬼を渡さなかった」
「……⋯はい」
男は目を細める。
「分かっているのか」
きょーさんは。
らっだぁを見る。
疲れ切っている。
けれど。
ちゃんと生きている。
呼吸している。
自分の腕の中にいる。
それだけで。
答えは決まっていた。
「分かっとる」
男は。
静かに問う。
「それでもか」
きょーさんは。
少し笑った。
「それでもや」
長い沈黙。
男は目を閉じた。
そして。
「……そうか」
それだけ。
男が背を向ける。
「好きにしろ」
「……え?」
「もう私の手には負えん」
男は歩き出す。
「それに」
一度だけ。
振り返る。
「それほどまでに、その青鬼に選ばれたのなら」
らっだぁを見る。
「その力が、どこまで行くのか見てみたい」
そして。
「二度と私のもとに戻ってくるな」
きょーさんは。
しばらく黙っていた。
やがて。
小さく笑う。
「……言われんでも」
✦
それから。
二人は街を離れた。
大きな荷物は無かった。
長く暮らした部屋も。
もう必要ない。
きょーさんが鞄を持つ。
らっだぁは隣を歩く。
しばらく。
二人とも黙っていた。
やがて。
らっだぁが紙を取り出す。
そして、何か書こうとして、
やめた。
もう、それは必要ない。
自分の声で、伝えられるのだから。
「⋯どこ行くの?」
「さあな」
「決めてないの?」
「決めてへん」
「ざこ」
「うるさいわ」
らっだぁが笑う。
声はまだ。
少し小さい。
けれど。
ちゃんと。
笑っている。
きょーさんも笑う。
「きょーさん」
「なんや?」
「⋯⋯大好きだよ」
「⋯おう」
「ありがとう」
「⋯こちらこそ」
二人は歩く。
どこへ行くかも。
分からない。
何が待っているかも。
分からない。
でも。
一人じゃない。
それだけは、確かに分かっていた。
✦
数ヶ月後。
春が終わり。
夏が来た。
新しい街。
小さな家。
窓から風が入ってくる。
キッチンから物音がする。
かちゃっ。
かたん、からん。
金色の彼は、まだ眠そうな顔で。
ゆっくりとベッドから起き上がる。
「……なんやねん」
あの日と。
同じだった。
違うのは。
キッチンにいるのが。
もう見慣れた姿だということ。
「らっだぁ」
振り向く。
「朝から何しとん」
らっだぁが振り返る。
ふにゃっと笑って、手に持ったフライパンを掲げた。
「朝ごはん」
「また作っとるんか」
「成功した」
「食べる前から言うなや」
「今回は成功」
「前も聞いたわそれ」
らっだぁが、少し笑う。
きょーさんも笑う。
机へ向かう。
皿が置かれる。
一口。
「……美味い」
らっだぁの顔が、ぱっと明るくなる。
「⋯毎回思うけど、そんな嬉しいんか」
こくこく。
「分かりやすいなぁ」
らっだぁは、何か言いたげに口を開いて。
そして、しばらく迷ったあと。
「⋯きょーさん」
「ん?」
「今日、どこか行く?」
「行きたいとこあるんか?」
らっだぁは。
少し考える。
窓の外を見る。
夏の空。
青い空。
青鬼の瞳と。
よく似た色。
「海」
「海?」
こくり。
「ええけど」
らっだぁの目が輝く。
「そんな行きたかったんか」
こくこくこく。
「ほな、食べたら行くで」
らっだぁは頷く。
そして。
きょーさんを見る。
「……きょーさん」
きょーさんの手が止まる。
もう。
何度も聞いている声。
それでも。
まだ。
少しだけ。
嬉しい。
「なんや」
「海、楽しみ」
「……そうか」
笑う。
らっだぁも笑う。
二人は笑う。
今日も、変わらぬ平和の中で。
昼。
海岸で。
らっだぁは、波打ち際に立っていた。
裸足。
海水が足元を濡らす。
「冷たいやろ」
こくり。
「初めてか?」
首を傾げる。
「海」
少し考えて。
頷く。
「そらそうか」
水面を見る。
太陽が反射して、きらきらと青く煌めいている。
「綺麗やな」
きょーさんが言う。
らっだぁも。
「うん」
短く答える。
二人で。
しばらく海を眺める。
静かだった。
でも。
寂しくない。
昔なら。
沈黙が怖かった。
声が無いことが。
言葉が無いことが。
でも。
今は違う。
言葉なんてなくても。
隣にいるだけで。
分かることがある。
らっだぁが、ふと口を開く。
「きょーさん」
「ん?」
「ありがとう」
「何がや」
「全部」
きょーさんは。
少しだけ黙る。
そして。
らっだぁの頭をくしゃっと撫でる。
「……こっちこそや」
「なんで?」
「⋯お前がおってくれたから」
らっだぁが。
目を細める。
「……そっか」
「おう」
海風が吹く。
青い髪が揺れる。
金色の翼が揺れる。
二人は。
そのまま。
海を見ていた。
✦
夕方。
帰宅する。
扉を開く。
きょーさんが言う。
「ただいま」
少しだけ間があって。
らっだぁが笑いながら。
「おかえり」
その声が。
部屋に響く。
きょーさんが。
一瞬だけ立ち止まる。
「……お前もな」
「なにが?」
「いや」
笑う。
「なんでもない」
らっだぁが首を傾げる。
そして。
「きょーさん」
「ん?」
「おかえり」
「……おう」
「返事は?」
きょーさんは。
少しだけ目を伏せる。
それから。
「ただいま」
と。
まっすぐに、らっだぁを見て。
答えた。
部屋には。
二人の声がある。
ご飯もある。
笑い声もある。
くだらない会話もある。
「ざこ」
「うるせぇ」
「ざこ」
「二回も言うなや」
「ざこ」
「三回ならええんとちゃうねん」
笑う。
窓の外では。
夏の風が吹いていた。
あの日と違って。
何かの終わりを告げる風ではない。
これから始まる。
長い日々を。
そっと知らせるような。
穏やかな風だった。
そして。
青鬼は。
もう。
誰かに追われてはいなかった。
恐れられるだけの存在でも。
利用されるだけの存在でも。
なかった。
自分の意思で力を使い。
誰かを守り。
誰かを救い。
自分の帰る場所を。
自分で選んだ。
その隣には。
金色の堕天使がいる。
何百年も。
誰かの命令に従ってきた彼が。
初めて。
自分の意思で選んだ場所。
そこには。
青鬼がいる。
らっだぁがいる。
そして。
二人の。
普通の日常がある。
「らっだぁ」
「ん?」
「明日、何する?」
少し考えて。
らっだぁは笑った。
「……暇」
「知っとる」
「暇」
「二回言うな」
「暇〜」
「三回言うな」
笑い声が響く。
窓から風が入る。
紙が一枚。
机の上で揺れる。
そこには。
少し癖のある字で。
たった一言。
『おかえり』
と。
書かれていた。
今度は。
誰もいなくならない。
その言葉を。
何度でも。
返せるから。
「ただいま」
「おかえり」
二人の声が。
静かな部屋に。
いつまでも響いていた。
『貴方の一番になれなくて』−Another End。
幸せハッピーエンドでした(*´ω`*)
意外と別エンド書くの楽しかったです( ꈍᴗꈍ)
リクエストありがとうございました🫶💕
こんなエンドが見たい!などのリクエストがあれば書きますので🙌✨
よければコメントなどお願いします(人*´∀`)。*゚+