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(疲れた)
面接の帰り道。
電灯が頭上を照らす中、陽はうなだれていた。
歩行者に変なやつだと思われても仕方がない。
(…いや、だってあの感情が全く読めない強すぎる笑顔と十分ちょい話すとか…もはや精神疲労させるの狙ってるでしょ…)
陽が疲弊するのも当然だ。
ハルヒは一般人にしては顔面が良すぎる。
そして何故か目をつぶっているのがさらに神秘的な雰囲気を出しているし、それでいて隙のない笑顔でどうにも上手くつかめない。
「…合格…出来るかなぁ…」
陽のつぶやきは夜の暗闇に白い息となって解けていく。
そしてハッと己の頬を叩く。
(弱気になっちゃだめだ!しっかりしろ!)
よし、と自分に気合を入れ直し、人気のない路上をひとり歩いていると。
『ヒュンッ_』
突然耳元で風切り音が聞こえた。
驚き周りを見るが誰もいない。
(…気のせいかな…?)
虫でも通ったのかもしれない、と気にせずまた歩き出す。
(…ご飯、何にしよう)
近頃、ずっとコンビニのおにぎりだけだと築き、食生活を見直さなければ、と苦笑いする。
そして。
『ヒュンッ…』
次は先程よりも大きい音で風切り音が聞こえた。
流石に二回目となると陽も気になってくる。
周りを見渡すが誰もいない…__ことはなく、巨大なスライムがいた。
陽は目を見開きスライム__魔物との距離を取る。
「こんなとこになんで…」
それもそうだ。
こんな都市部では普段、めったに魔物は見かけない。なぜなら、都市圏はearthの情報部隊が置かれているため、警備が厚いのだ。
ましてや、こんな弱い個体では指先も入れない。
「うおっ⁉」
陽が思考している間に、スライムは陽のことを敵と認識したようで攻撃を開始してくる。
間一髪でスレスレに避けた陽。
(能力使いたいけど…)
一般市民が政府の保護なしに能力を使った場合、罰金などの刑罰がくだされることになる。
陽はまだ、earthに所属していないため、対象になってしまうのだ。
なので残るせんたきうはただ一つ。
「逃げるが勝ち‼‼‼‼‼」
陽はグリンと方向転換し、全力で走る。
頬に冷たい風が容赦なく指してくるが、樹にしていられない。
(命優先!命大事!)
つまるところ、手も足も出ない理由だ。
全力疾走する陽だが、虚しくもスライムの伸びてきた触手に足を捕まれ逃げることが不可能となってしまった。
「ひっ」
迫りくる針のように尖った触手に目をつぶった瞬間。
『ぎゃああああああああああ』
先に悲鳴を上げたのはスライムの方だった。
(⁉)
陽は目を見開き、倒れたスライムを凝視する。
煙が晴れ、人影が目の前に現れた。
そこには黒いフードを被った青年がナイフ片手に佇んでいた。
恐らく助けてくれたのはこの青年だど確信した陽はお礼を言おうと立ち上がった。
「ありが…__」
「チッ」
礼を述べようとした瞬間、青年から何やら物騒な音が聞こえた。
固まる陽に青年は無言でナイフを振った。
『ヒュンッ_』
そしてボソリとつぶやく。
「お前のせいで手間取った」
そしてそのまま固まる陽に振り返りもせずに、その青年は闇に消えていった。
残された陽はポツリと呟く。
「助けてくれたんだよ…ね?」