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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。私はシスターの紹介により『オータムリゾート』の支配人と会うべく馬車で六番街へと向かいました。護衛はルイ、御者としてセレスティンを連れてきています。

「なんだこれ?本当に同じ町なのかよ!?」

ルイが驚くのも無理はありません。最近ようやく帝国に広まり始めたばかりの電気を使った明るい電灯?やら、帝国では極めて珍しい自動車が何台も走っています。

何だが、自分達が時代に取り残されているような錯覚さえ覚えますね。

「お嬢様、『オータムリゾート』はこと資金力に関してはシェルドハーフェンに存在するあらゆる組織を、遥かに上回ると聞き及びます。それらの莫大な資金を投じて一気に近代化を成しているのでしょうな」

「資金力はシェルドハーフェンで一番ですか。この繁栄を見れば嫌でもそれを実感させられますね」

「ああ、呑み込まれそうな感じがするぜ。大丈夫なのか?」

ルイが、心配そうに私を見てきます。

「確かにこれまでで最大規模の勢力と交渉することになりますが、ここで臆しては先に進めません」

今回痛感したのは、我が『暁』の地力の無さです。もしクリューゲ一派に焦りがなく、エルダス・ファミリーが本腰を入れていたら私達は簡単に踏み潰されていたでしょう。

残念ながらまだまだ私達は弱小勢力、後ろ楯が必要なんです。

「交渉なんて出来るのか?金は材料にならないしなぁ」

「その為の品は用意しています。必ず興味を示してくれる筈です」

そう、お金ではない取引材料を今回用意しました。これで少しは興味を示してくれる筈。

「お嬢様、見えて参りましたぞ。カジノ『オータムリゾート』でございます」

「うぉっ!?」

「華やかですね」

『オータムリゾート』の本拠地である巨大なカジノが見えてきました。電灯を惜しみ無く使い、絵や文字さえ光ってますね。『ターラン商会』本店とはまた違った意味でチカチカします。夜だと更に華やかなのでしょうね。

シスターによれば正面からではなく裏口から入るのだとか。上手くいくか分かりませんが。

「では、ここからは歩いていきましょう。セレスティン、留守をお任せします」

「ご無事で、お嬢様」

「はい。ルイ、行きますよ」

「おう」

私はルイを連れて、カジノ『オータムリゾート』の裏口へと回ります。そこには見るからに強そうなガードマンが数人居ました。

「止まりなさい、なにか用があるならば正面からどうぞ」

「ごきげんよう、私は『暁』代表を務めますシャーリィと申します。今日はカジノを利用するのではなくて、リースリット支配人とお会いしたく参りました。お取り次ぎをお願いします」

ここは礼儀正しく優雅に一礼しておきます。何事も最初の印象が大事です。

「確認をとります、そのままお待ちを」

「武器の携行は規則によって禁じられています。此方でお預かりします」

「俺は護衛なんだけど?」

「規則ですので」

「ルイ」

「……わかったよ」

ルイは槍を、私は拳銃とナイフを手渡します。身体も成長してきたし、そろそろ剣に持ち変えようかな。

それに、丸腰ではありませんよ。だって私達は、魔石を持っています。いざとなればこれで活路を開きます。

そうして待っていると、中に入ったガードマンが戻ってきました。

「確認がとれました。ボスがお会いになります、此方へ」

「ありがとうございます」

裏口から質素な通路を通って豪勢な扉の前まで案内されました。

「ボス、お連れしました」 

「おう、入りな」

「失礼します」

扉が開かれて中に入ると、如何にも高そうな高級品の家具で彩られたお部屋に、彼女は居ました。

机に腰かけた暖かみを感じるピンクの髪に青い瞳、気の強そうなキリリとした美人さん。上半身はほとんど裸で、胸には布を適当に巻き付けただけの豪快な姿。ううむ、主張を隠そうともしないお胸は素晴らしいのですが、何故私の回りは巨乳ばかりなのか。ジェラシー。

「よぉ、ここの支配人をやってるリースリットだ。お前がシャーリィか?」

「はい、『暁』代表のシャーリィです。こちらはルイス。お会いできて光栄です」

「おう、堅苦しいのは無しだ。まあ座れよ、話そうぜ」

机の前に置かれた椅子を指しながらそう言うリースリットさん。ただ豪快すぎて脚を開いているからパンツ見えてますよ。

「ありがとうございます。ただ、下着が見えてますよ……?」

「あははっ!こんなの減るもんじゃねぇよ、座れ座れ」

うーん、豪快ですね。シスターから前もって聞いていた通りです。エレノアさんと話が合いそう。

「では、失礼します」

私が椅子に座り、ルイは後ろに立ちます。コラッ!パンツを直視しない!

「へぇ、確かにシスターの言う通り、本当に無表情だ」

「感情表現が下手な自覚はあります、どうかお気になさらず」

「何をしても変わらねぇか試してみたくなるが、止めとくか。聞きたいんだけどよ、シスターに拾われたって話だったな?」

「はい、九歳の頃に」

「私もガキの頃シスターに拾われた口でな。幾つだ?」

「十六歳になりました」

「私は二十五。なら私が姉だな」

「そうでしたか、では今からお義姉様と呼ばせていただきます」

「おっ、案外ノリが良いな。よしよし、なら今から私達は姉妹だ。シャーリィは私の妹だな」

なんとまあ、あっさり姉妹関係が出来てしまいました。せっかくシスター繋がりの共通点があるんです、プラスになるなら何でも利用します。

「では改めて。此度はご助力に感謝します、お義姉様」

「別に良いよ、降り掛かった火の粉を消しただけだからな」

「新聞を読みましたよ。『オータムリゾート』には相当な実力者が居るみたいですね。二十人を一人で殲滅したとか」

「シスターの真似事をしてな、秘蔵っ子が居るんだ。今は出掛けてるが、次は会わせてやるよ」

「それは楽しみです」

純粋に興味深いですし。

「そっちも上手くやったみたいだな?」

「お義姉様の策に乗っかっただけですよ。エルダス・ファミリーとはどうですか?」

「ケツの毛までむしり取ってやったぜ。あいつら、貧乏まっ逆さまだ。しかも、商売を『ターラン商会』に奪われ出してるって話だ。これお前だろ、シャーリィ」

「いつもお世話になっていますから、お裾分けをしただけです。純粋な善意ですよ?」

「ははははっ!善意と来たか。そりゃ文句は言えねぇなぁ?」

「その通りです」

豪快に笑うお義姉様、なんだか微笑ましい。

「難しい話は無しだ。おい、ジュース持ってこい!」

「はっ」

「ジュース?」

「果実を絞った甘いやつだ。私酒飲めなくてなぁ」

おや、意外な事実。ギャップですね。

「どんな奴が来るか楽しみだったんだが、案外ノリが良くて良かったぜ。ここらで乾杯しようじゃねぇか」

「分かりました、ここで乾杯しましょう。私達のより良い未来のために」

「おう、更なる金儲けと賭けのために!」

ううむ、なんだか分かりませんが気に入られた?いや、シスター繋がりでハードルが低かったのかもしれません。個人としては友好を結べました。次は組織のための交渉をしないと。

上機嫌なリースリットを見ながら、次なる交渉のために備えるシャーリィであった。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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