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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。今回も引き続きカジノ『オータムリゾート』からお送りします。

リースリットさんが用意した果実のジュースは大変美味しいものでしたが、今一甘味が足りないように感じました。おそらく農園で栽培している果物と比べて一般に流通しているものは甘味が足りないのでしょう。

「お義姉様は甘いものがお好きですか?」

「おう、好きだぞ。ジュースなら毎日食べられるし、砂糖を使ったお菓子も大好きだ。砂糖はバカみたいに高いから、あんまり食べられねぇけどな」

ふむ、甘党ですか。

「では、我が組織が生産している果物や野菜を格安で提供しましょうか?」

「おっ、噂の『暁』の奴か!美味いのか?」

「残念ながら今は実物がありません。後日うちの果物を使ったジュースをお届けしますので、その時に判断していただければと」

「そいつは楽しみだ。けど、良いのか?『ターラン商会』に卸してるんだろう?」

流石にその程度の情報は把握されていましたか。

「『ターラン商会』に卸しても余りある在庫がありましてね、特に果物は自分達で消費しているんです」

保存が利かない果物等は余り取引されません。これについても早急の課題でありますが、それ故に果物に関しては『暁』で消費しているのが実情です。

ですが『オータムリゾート』相手なら独自に販路を築けるかもしれません。

「なら、実物を見て決めるぜ。他に何か無いか?ん?」

「あとはこちらをご覧ください」

私は『暁』で密かに生産している真っ白な紙を取り出してリースリットさんに見せました。

「こいつは……何年か前からこっそり流れてる紙じゃねぇか!」

やはり興味を示しましたね。

「お察しの通り、うちが生産しています。秘密ですよ?羊皮紙ギルドに知られたら面倒なので」

「そりゃ黙ってるが………これ、嵩張らなくて使い勝手が良いんだよな。経理の連中も喜んでたぜ」

大規模なカジノ経営ですからね、紙は幾ら有っても困らない筈。

それに、羊皮紙は結構高いんですよね。

「密かに市場には流していましたが、生産体制も整い始めたのでそろそろ本格的な取引相手を探していたんです」

この二年で専用の小屋を農園に造って、専用の職人を育てました。それでもまだ『帝国の未来』に使われている紙には劣ります。試行錯誤の毎日です。

それでも売り物になるレベルにはなりましたし、密かに流している分も好評です。

「で、シャーリィはうちと取引をしたいんだな?」

「その通りです。値段は羊皮紙の十分の一以下でご提供できます。どうですか?お義姉様」

「おう、良いぜ。良いものには金を惜しむ気は無いからよ。で?二つ用意したんだ。何が欲しい?金か?」

「お金は取引で稼ぎます。私が欲しいのは『オータムリゾート』との盟約関係です。我が『暁』はまだまだ小さな組織ですからね、後ろ楯は多い方がいい」

「守って欲しいってか?」

「飾らない言い方をするなら、独り立ちできるまで支えて欲しい、ですね」

「別に構わねぇけど、うちは武闘派って訳じゃねぇぞ?動かせる兵隊だってそんなに多くねぇし」

「ですが、今回の件で『オータムリゾート』には一人で二十人を殲滅できる実力者が居ると周知されました。そんなあなた方が後ろ楯となれば、今回のような攻撃などを躊躇させることが出来ます。抑止力と言いましょうか」

弱小ゆえに侮られた結果が今回の攻撃を誘発しました。もちろん今後は身辺の警備により一層気を配りますが、ね。

「んー、確かにこれ以上舐められねぇように新聞に晒したけど……まあいいや、いい取引が出来るならこっちも歓迎だ」

「ありがとうございます、お義姉様。先ずはお義姉様を満足させられる果物をお持ちしますね」

「なら三日後にまた来いよ。顔パスにしといてやる」

「分かりました、ではまた三日後に」

「まあ待てよ、折角だからもう少し話そうぜ。シスターのこととかさ」

「良いですよ」

個人的な親睦を深めることは悪いことではない筈。私はしばらくお義姉様と語り合うのでした。

うん、内容の大半は愚痴でこれをシスターに知られたら殺されそうなので、二人の秘密にしました。

~三日後~

「おい、バカみたいに美味いじゃねぇか!!なんだよこれ!?今まで私が飲んできたのはただの水なのか!?」

取り敢えず用意した柑橘系を使ったジュースはお義姉様に大好評でした。

「幾らでも買い取ってやるぞ!どんどん持ってこいよ!」

「もちろんです。お義姉様が望む果物をお義姉様が望むだけお持ちしましょう」

『ターラン商会』経由の販売に比べれば規模も小さく利益も決して高くはありませんが、宣伝にはなるし収入源が増えることは単純に喜ばしいことです。

「それと、その紙もたくさん買い取るぜ。幾ら有っても足りねぇからな」

「羊皮紙ギルドに目をつけられないよう充分に気を付けてくださいよ?」

「分かってるよ。あいつらうるせぇからなぁ」

帝室まで動かす羊皮紙ギルドは将来的には潰さなきゃいけません。技術の進歩や社会の発展を否定する存在は、東方の言葉を使うなら百害あって一利なしです。

そして翌日、『暁』が『オータムリゾート』と盟約を結びその庇護下に加わったことが帝国日報を通じて大々的に報道されました。公表しておくことで、抑止力になりますからね。

「あっさり決まったな?もう少し難しくなるかと思ってたんだが」

帰り道にルイがぼやきます。

「シスターの繋がりが大きかったと思います。境遇も同じなら親しみを感じるのは簡単ですし、こちらはお義姉様が望むものを用意できました。備えていて良かったです」

「だな。次は何をするんだ?シャーリィ」

「突拍子もないことですが、何れは大きな枠組みを造ろうと思っています」

『オータムリゾート』、『ターラン商会』、『海狼の牙』、『暁』による四者連合。もし実現すればシェルドハーフェンでも上位の規模となるのは間違い有りません。

「新しい枠組みねぇ」

「まだ構想の段階ですよ。実現させるためにも、今は地盤を整えなければいけません」

その為には町の建設を確実に進める必要がありますからね。

それから数日、私は本拠地に籠って町作りに励んでいました。

道の普請が終わり、次は石造りの家屋と下水道の建設を行います。

「進捗はどうですか?ドルマンさん」

「悪くはねぇが、まだしばらく時間は掛かるぞ」

ドルマンさんが声をかけてくれて十数人のドワーフが建設に加わってくれました。町の建設はドルマンさんと工兵部隊を指揮するマクベスさんにお任せします。

「町を造るならば、強固な城壁を用意すべきでしょう。此度の件で我々は更に目立ちました。これから狙われることも増えるかと」

マクベスさんの言う通り、農園と町を守る設備も早急に用意しなければなりません。同時進行だと時間が掛かりますが、仕方ありませんね。

「『ターラン商会』から追加の人員が二百名送られてくる手筈になっています。可能なら居住区を優先してください」

「畏まりました」

「あいよ。俺も兵器開発があるんだ。片手間になるし、基本はマクベスに任せるしかねぇな」

「しかしながら、私は軍人です。町作りにしても限界があります」

「その辺りはご安心を。総指揮については、セレスティンに任せるつもりですから」

「それならば安心ですな」

セレスティンにはオールラウンドに活躍してもらいましたが、この辺りで町作りを初めとした内政全般の指揮を任せてみようと思っています。

実際、討伐などでお父様不在の間伯爵領の内政を取り仕切っていたのはセレスティンですからね。

「ご期待以上の成果を挙げてご覧に入れます、お嬢様」

「頼りにしています、セレスティン」

恭しく一礼するセレスティンに私は期待を込めて言葉を贈ります。

さあ、ドンパチの次は内政のお時間です。

シャーリィ=アーキハクト十六歳秋の日、彼女は間もなく十七歳になろうとしていた。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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