「りょー」
 そう一言だけ残して、鈴華は奥のキッチンにはいつまで行きました。この場所には、オルゴールの音色だけが静かに響き渡りました。
 暫くして、鈴華は此方に戻って来ました。
 「お待たせー。今日のオススメの、フルーツサンドウィッチとブルーマウンテンだよ〜。美味しく召し上がれ」
 そう言って、鈴華は椅子に腰掛けて本を読み始めました。最近愛華さんがよく読んでいる本を貸してもらったんだとか。
 優しい味のフルーツサンドウィッチを食べながら、ブルーマウンテンで口の中をスッキリさせる。なんとも幸福な時間でしょうか。
 そんな風にしていると、鈴華さんは居眠りをしていました。まだコンサートもやっている途中でしょうし、もう少しここにいましょうかね。
 もうとっくに食べ終わっり、カウンターには少しクリームの付いたお皿だけが残っていました。
 オルゴールの音に耳を澄ますと、今日コンサートに出ているアカノの曲です。私がこの前この方の歌声が好きだと言っていたのを覚えていたのでしょう。
 本当に、鈴華さんはこんな気遣いもできる良い方なのに、皆さんの前では、おてんば娘を演じていらっしゃるのか、不明ですね。
 アカノの曲は私と同じ機関の化身のドールである、欧華さんに教えていただいたものです。彼女と出会う前も、出会った後も、こんなふうな幸せで、穏やかな時間が流れるなんて、あの頃は思っていませんでしたね。
 オルゴールの音色をBGMに、私は自身の過去を振り返り始めました。
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